カクヨムの方でも連載にあわせて掲載していく予定ですが、こちらで先行的に情報を流していきます!
マリオン・シン・ブラック
本作「反逆のオラトリオ」の主人公。登場時は15、6歳(士官学校は「ハイスクール」だと思えば丁度よいです)
士官学校歌姫養成科四期生である。
身長は165cmと、意外と長身。ヤーグベルテの女性の平均身長が160cm少々なので、とはいえそこまで大きくはない。
性格的には内向的で人付き合いは苦手。陰キャを自称してもいる。趣味らしい趣味も持っていなかったが、それは以下の環境要因による。
4歳の時に、アーシュオンの超兵器・インスマウスによる爆撃で、家族どころか故郷が滅んでおり、天涯孤独に。それ以来、抑圧の強い施設での生活を余儀なくされていた。性格もそれによって決まったと言って良い。無趣味なのも施設では強い所有制限や時間規律があったため。
おとなしい性格ではあるが、その内にはアーシュオンに対する強い復讐心もある。しかしそれ以上に、大ファンである歌姫、レベッカやヴェーラと共に戦える日を夢見ている。そのため、VRシミュレーションゲーム「アルス・パウリナ」で歌姫の才能あり(S級)とみなされて以後、軍士官学校への進学を目指した。周りの大人も軍からの補助金を目当てにそれを全力でサポートした。
能力者である歌姫としての才能はアルマと並び、歴代トップ。始原の歌姫であるD級歌姫に迫るのではとさえ言われている。
また、音感に極めて優れていて、ドアの擦過音のHz数を言い当てられたりもする。
後に搭乗する艦船は、ヤーグベルテの新艦種である制海掃討駆逐艦・アキレウスである。
レオノール・ヴェガ
愛称はレオナ。VRシミュレーションゲーム「アルス・パウリナ」のプレイヤーネームも「レオナ」で登録されていた。
身長は178cmと、歌姫の中ではダントツに高い。ちなみにヴェーラやレベッカは175cmあるが、それより高く、彼女より長身の登場人物は185cmの「空の女帝」カティ・メラルティンのみ。
マリオンと同期の四期生である。
実家はガーレン音楽大学を始め数々の企業を経営する大富豪。超お金持ちである。レオナ自身それは自覚しているが、礼儀正しく実直な性格であるゆえに嫌味がなく、多くの人に好かれている。アルマからは度々「金持ちムーヴ」と揶揄されるが、それもどこ吹く風である。
対人関係の構築が上手く、一部の例外を除けば誰とでも簡単に打ち解けることができる。度胸も座っていて、かつ理性的と、隙のない人物。ただし、マリオンのこととなるとかなり盲目的になったりする。
マリオンのことは顔を合わせる前、ゲームで戦線を共に張っていた頃から気になっており、出会った瞬間からスキスキオーラ全開である。マリオンを「お姫様」と呼び、自身を「マリオンの騎士」と称してはばからない。
音大の家系で幼少期から英才教育を施されていたために、音楽のスキルに秀でていて、特にその美声を活かした歌は、数いる歌姫の中でも群を抜いて上手い。
戦闘においては、重巡洋艦・ケフェウスを操る。対空戦闘および集団戦闘に無類の強さを発揮する。なお、歌姫としてはV級歌姫であり、マリオンとは一つクラスが下である。
アルマ・アントネスク
ストロベリーピンクの地毛に、青と黒のメッシュを入れていることから、「三色頭」と呼ばれている。身長は163cmとだいたいヤーグベルテの平均身長程度。
歌姫養成科の四期生である。マリオン、アルマ、レオナの三名が、四期生の中でもとりわけ有力な歌姫ということになっている。マリオンと同様にS級である。
運動神経に優れ、特にリズム感に於いては比肩するものがいない。「アルス・ノヴァ」というリズムゲームが登場するが、それもほとんど初見でPERFECTクリアを連発する。
彼女もマリオンと同じく、4歳のときに故郷を滅ぼされ、天涯孤独の身となっており、それからは十一年間施設にて過ごした。施設も毎年のように変えられており、その待遇も酷かった様子。そのあたりは本編を参照されたし。
その時の経験により、彼女は見た目よりもずっと精神的には大人である。普段は快活だが、ふとした拍子に影の一面を見せたりもする。また、その人生経験の豊富さから吐き出される言葉もまた、重たいものが多い。
アルマもまたマリオンの本命の座を狙うが……。
卒業後に与えられる艦は、マリオンと同じく、制海掃討駆逐艦・パトロクロス。アキレウス級の二番艦であり、性能や武装はほとんど同じものとなっている。
レネ・グリーグ
通称「レニー」。歌姫養成科第三期生で、マリオンたちの1つ先輩にあたる。
マリオン、アルマとの3人部屋で暮らすことになる。彼女は史上初のS級歌姫で、かなりの待遇で迎えられている。
身長は160cm。明褐色の髪と茶褐色の瞳の持ち主で、明るい場所では輝いて見えるほどで、ファンやメディアからは「金の美姫」と呼称されている。本人がどう思っているかはともかく。
学生時代から戦闘補助の任務を行うのが慣例化しているのだが、その中でもレニーの情報処理能力は軍を抜いており、軍、とりわけ直属の組織参謀部第六課からは極めて頼りにされている。一昔前の表現を使うなら「歩くコンピュータ」である。
そして彼女もまた、五歳のときに故郷を滅ぼされた戦災孤児であり、施設で育てられてきた。良い思い出はなさそうである。物腰は柔らかく、思慮深い性格ではあるが、その奥には強い復讐心と、「後輩を戦地に送り出さない」という強い決意と責任感がある。穏やかに笑っているが、その心の中は常に張り詰めているようなタイプの人物である。
彼女が与えられる艦船は、戦艦・ヒュペルノル。最新の500m級巨大戦艦である。
ヴィカ・ハートナー
歌姫養成科五期生、つまり、マリオンの1つ後輩にあたる。また、レオナの再従妹。そして大富豪であるハートナー家の一人娘である。ハートナー家の事業は本作作中では語られないが、軍需産業が主である。
身長は155cmと少し小柄。赤銅色の髪と緑の瞳が印象的な少女である。
ヴィカは「アルス・パウリナ」を通じて、レオナに惚れる。そして偶然にも身内だと(遠いが)判明してから、ますます意識するようになり、その勢いのまま士官学校に入る。
だが、レオナはマリオンと完全にくっついており、それが面白くないヴィカはどうにかしてレオナを手に入れようと目論んだりする。鼻持ちならない言い分の多いワガママ少女で、温和な人格者であるレオナをして怒らせるほど。アルマに至っては完全無視するほど嫌うこととなる。ターゲット認定されているマリオンはというと、おろおろしている。
そんな彼女も最終的には艦隊の「目」として、偵察用ドローンを自由自在に操るようになる。艦隊にとって欠かせない人材となっていく。
エディタ・レスコ
歌姫養成科第一期生。同期の4人のV級歌姫を合わせて、入学年度にあわせて「92年カルテット」と呼ばれる。その中で最も能力が高く、「アルス・パウリナ」でも優秀な指揮能力を発揮していたことから、カルテットのリーダーとして活躍する。
戦場では常に冷静な判断を下すことができ、その指揮官としての素養から、レベッカらには非常に信頼されている。ただ少し頑迷な所がある。それが迷いのない指揮につながっているとも言える。また、言うべきことは誰に対しても言うタイプ。忖度とは遠いタイプなので、不器用な性分であると言える。
何をするにしても「完璧」を目指す人物であり、事実「完璧」である。それを堅苦しいと感じる人もいて賛否両論ではある。マリオンたちにとっては憧れの先輩ではあるが、やはりその「見えない壁」の高さを感じるシーンは多いようだ。
エディタの恋人であるトリーネ・ヴィーケネスは逆に壁のない人物で、エディタと後輩たちの仲介役となっていることでいい感じの関係性を維持できている。
エディタは南部の出身で、幼少期は(田舎ゆえに)娯楽のあまりない社会で、読書とサッカーと筋トレに明け暮れていた模様。意外とスポーティな性分である。また、それゆえに無限とも言える体力を有していて、どんなに厳しい訓練を指揮していても疲労を見せることはない。
メディアやファンからはその美しさから、「妖精」と呼称されている。銀髪に地球色の目、などとも言われる。なお身長は172cmと、結構高め。無論、筋トレによって引き締まった身体で非常に魅力的と評されている。
防空重巡洋艦・アルデバランを操り、事実上、全艦隊の指揮を執る。
トリーネ・ヴィーケネス
エディタと同期の一期生。92年カルテットの一人。
V級歌姫であり、エディタに勝るとも劣らない能力の持ち主である。また、後輩たちの指導役としても活躍しており、ハンナたち二期生、レニーたち三期生、マリオンたち四期生から等しく好かれている。
エディタが対人関係に於いて不器用であるのに対し、トリーネはいわば「コミュ強」であり、各方面への仲介者として活躍する。カルテットの中では表向き前に出るのは妖精とも渾名されるエディタだが、カルテットのみならず、歌姫たちの事実上のまとめ役はトリーネである。
下級の歌姫であるC級歌姫たちからの支持も厚く、また、国民からの人気も高く、一期生の中ではエディタと勢力図を二分するほどである。
また、エディタとは相思相愛であり、婚約している間柄である。
(※この世界では同性同士の結婚はさほど珍しいことではない)
なお、身長は163cm。重巡洋艦レグルスを操る。
ハンナ・ヨーツセン
マリオンたちの2つ上(歌姫養成科二期生)。通称、ハンナ先輩。
156cmと少し小柄だが、スタイルは抜群。恐ろしく内気な性格だが、「アルス・パウリナ」の話になると途端に饒舌かつ早口になる。自他ともに認める「アルス・パウリナおたく」であり、事実誰よりもゲームについて理解している。
また、ジュニアハイ時代の「アルス・パウリナ」での戦いぶりは凄まじいものがあり、特に攻勢に出ると手が付けられないレベル。
その一方でプレイ中はほとんど発言することがなく、そのため人々(プレイを見ている人たち)は「沈黙の聖女」と渾名した。
歌姫としてはV級歌姫で、エディタたち一期生に続く戦力として期待されている。戦闘補助に於いてはレニーに並ぶほどの処理能力を有している。
歌姫としての能力はレニーに劣るが、「アルス・パウリナ」での戦闘に関しては誰よりもゲームを熟知していることもあって非常に手強い。その戦術眼はマリオンたちを手玉に取るほど。
重巡洋艦アルネプを与えられる。アルネプは攻撃・防御・機動力を鼎立させようとした実験艦である。
パトリシア・ルクレルク
レニーと同期(三期生)のV級歌姫。通称パティ先輩。
身長は登場人物中一番低く、152cm。しかし常に空腹である。マリオンからは「腹ペコキャラ」認定される。が、別に大食いというわけではなく、常に食べていたい性分というだけ。ただし食べ物にはいの一番に飛びつく。しばしば食べ物を奢ってくれるブルクハルト技術中佐にはかなりなついているとか。
常にロラとセットで行動しており、ボケのパティとツッコミのロラというように周囲には認知されている。ボケ担当ではあるが基本的に常識人であり、また、意見するべき時には意見できる胆力もある。と、同時に誰とでも仲良くできる立ち回りのうまさも備えている。
重巡洋艦・ポルックスを操る。
ロラ・ロレンソ
褐色の肌が印象的な姐御肌のV級歌姫、通称ロラ先輩。レニー、パティと同じく三期生で、マリオンの1つ上。
身長は163cmと平均並だが、その気風の良さから周囲にはもう少し大きく見えているようだ。気持ちいいくらいのツッコミ能力の持ち主で、ボケ担当のパトリシアと名コンビを結成している。
怖い印象を受ける者も多いが、実際は面倒見の良い姐御である。
ハンナやパティ、レニーと共に学生による戦線支援の技術を確立した立役者でもある。どちらかというと技術屋寄りの性分である。
重巡洋艦・カストルを操る。
マリア・カワセ
歌姫を管轄する部署・参謀部第六課に所属する大佐。
「暗黒の瞳」と称されるほどの昏い目を持つ。全体に黒い。その正体は謎に包まれており、軍のAIたちですらその正体に辿り着けない。しかし、彼女は政府の方にもパイプを持ち、大統領とのホットラインも持っているため、誰も彼女を追い落とすことができない。
歌姫たちと、第六課統括のアレキサンドラ・ハーディ中佐の仲介役として登場するが、やがてある事件を経て、歌姫に関することの全てをその手中に収めることになる。
また、ヴェーラ、レベッカとは親友を超えた間柄であり、特にレベッカとは肉体関係もあるという噂もある。
彼女の本当の能力は未知数だが、政治的手腕、軍事的手腕は比肩するものがない。時として非情な手段も辞さないが、それでもなおマリオンたちにはひたすらに頼りにされるスーパーエリートである。
カティ・メラルティン
「空の女帝」とも呼ばれる、人類史上最強の戦闘機乗り。大佐である。
最強の航空部隊である四風飛行隊、その中の1部隊エウロス飛行隊の隊長である。最強の中の最強にして、その中でも更に狂った練度を誇る「エンプレス隊」を率いる。ありとあらゆる状況を逆転勝利に導く、名実ともにヤーグベルテの守護神である。
「空の女帝」の人気は凄まじく、ヴェーラやレベッカという歌姫をも凌ぐとさえ言われている。「エウロス、現着した!」というカティの決め台詞には誰もが痺れる。
士官学校在籍当時に大規模な襲撃事件にあったが、その際に駐機されていた旧式戦闘機に搭乗して襲撃者を撃退した、というエピソードが伝説と化している。その後も二十歳そこそこで、当時のエウロス飛行隊隊長カレヴィ・シベリウスによってスカウトされ、順調に頭角を現して今に至る。
実はこの人、「セイレネス・ロンド」シリーズ全体における主人公だったりもする。本作では出番は少なめだが、それでも重要なポジションである。
ヴェーラ、レベッカとは士官学校時代から共に学んだ仲であり、大親友であるとそれぞれが認識していて、また、ヴェーラもレベッカも心の拠り所にしている。カティは良いお姉さんポジションである。
身長185cmという超高身長キャラである。本作では出てこないが近接戦闘のエキスパートでもある。カティはかつて恋人と死別しており、その後十数年間、浮いた話は一つも出てきていない。一途な女性なのである。
カティ専用試作戦闘機「エキドナ」を駆る。大型の真紅の戦闘機であり、その威容に味方は鼓舞され、敵は畏怖する。
イザベラ・ネーミア
突如歴史の表舞台に登場する仮面のD級歌姫、イザベラ・ネーミア少将。その正体、起源など全て謎。マリア・カワセ大佐の強烈な後押しがあって実現した人事とも言える。
文字通りの「最強」のD級歌姫である。
威圧的な言動が目立つが、実はそれはメディア向けの姿勢で、メディアがいない場所では気さくなお姉さんだったりもする。また、アルコール飲料が好きで、いくらでも飲む。が、目に見えて酔うことはないほど酒に強い。
マリアに対して全幅の信頼を置き、レベッカとの距離も非常に近い。レベッカをいじって遊んでいるフシもあるが、レベッカはそれを心から喜んでいるので問題はない。
戦艦・セイレーンEM-AZを操り、世界を震撼させる。
レベッカ・アーメリング
第二艦隊司令官、中将である。愛称は「ベッキー」だが、そう呼んで良い人間は非常に限られている。ヴェーラと共に現れた始原の歌姫であり、D級歌姫。いきなり最強である。
生真面目にして厳格であり、自分にも部下にも仲間にも厳しい性格。そのため、「鬼も哭く司令官」などと呼ばれ恐れられているところもある。彼女を真に理解できる人間は、彼女の口下手さもあいまってなかなかに少ない。ヴェーラやカティ、そしてマリアくらいしかいないかもしれない。
艦隊指揮官としても一流であるが、やはりその訓練の厳しさは非常に不評だったりする。
彼女自身は正真正銘のレズビアンであり、ヴェーラを心から愛していたが、色々紆余曲折あった末、今はマリアと肉体関係を結んでいる――という噂がある。
かつてはヴェーラとのデュオを組み、ステージでは圧倒的なパフォーマンスを見せつけていた。代表曲もたくさんある。ヴェーラと人気を二分しており、主人公マリオンは「どちらかというとレベッカ派」とのこと。
身長は175cmと、この世界の基準に於いてもかなり長身である。
なお、アルコールには非常に弱く、一口二口レベルで泥酔するほど。飲むと大変なことになるらしい。
戦艦・ウラニアを操り、歌姫の威力を世界に見せつけた。
ヴェーラ・グリエール
レベッカとともに、十数年に渡って「ヤーグベルテの守護神」「双璧」を担ったD級歌姫。始原にして至高の歌姫であり、そのセイレネス適性はレベッカと同じ。しかし、2096年に焼身自殺を図り、亡き人となってしまう。そこで空いた席に座るのがイザベラである。
セイレネス適性自体はレベッカと同等であるが、攻撃型に特化しており、攻めのヴェーラ、守りのレベッカ、というように戦闘では分業体制を敷いていた。そのため、ヴェーラの戦艦・セイレーンEM-AZの見せる攻撃力は圧倒的で、国民の認知としては、ヴェーラのほうがレベッカよりも国防貢献度は高い、とみなされていた。(実際にはどっちが、ということはない)
ヴェーラはかつて撃墜した敵国(アーシュオン)の飛行士/ヴァルター・フォイエルバッハと交流を持っており、彼に片思いをする。しかし、飛行士の家族を、アーシュオン本土空襲によって「自分が殺した」のだという事実を知る。それでもなお、ヴェーラはその飛行士を愛した(実らなかったが)。罪悪感と贖罪の気持ちを抱えたまま、しかし、軍は捕虜交換としてヴァルターを本国に送り返す。ヴァルターはヤーグベルテのセイレネス技術向上に協力してしまっていたがために、裏切り者として処断され、処刑されてしまうのだった。ヴェーラの心にはそのことが深く突き刺さっており、自分の無力さ、軍への疑念、政府への不信などが募っていく。その果てが、焼身自殺という行為だった。
レベッカはもちろん、カティとも親友である。士官学校襲撃事件の後、この三人は、(当時の)参謀部第六課統括、エディット・ルフェーブル大佐によって身元を引き受けられている。
当然ながらステージパフォーマンスにも秀でており、広報活動では巨額の金を動かしていた。また、「ナイト・フライト・イクシオン」を始めとしたヒット曲や、最後の歌となった「セルフィッシュ・スタンド」を持ち歌として持っている。いずれもヤーグベルテ国内だけで数億ダウンロードという記録を樹立している(※ヤーグベルテの人口は約10億)。
戦艦・セイレーンEM-AZの最強の火砲、雷霆は、彼女は一度しか使っていないが、ある意味ヴェーラの代名詞となっている。名実ともに最強の歌姫である。
ブルクハルト技術中佐
「ヤーグベルテ最高の天才」と呼ばれる技術士官。
セイレネス・システムの開発やメンテナンスを一手に引き受けている。セイレネス技術管理責任者である。士官学校卒業してほとんどすぐに歌姫計画に参画し、中尉時代で国家の基幹事業とも言えるセイレネス・システムを担当し、今に至る。十代にして「天才」としての頭角を表していたためである。
ヴェーラ、レベッカが士官学校時代にすでに教官として活躍しており、それゆえにヴェーラたちからは「教官」と呼ばれている。マリオンたちの世代になっても「教官」をやっているため、歌姫たちは誰もが彼を「ブルクハルト教官」と呼ぶ。
2084年に起きた士官学校襲撃事件に於いても、彼はセイレネス・シミュレータの整備を続け、結果としてヴェーラ、レベッカを救い、襲撃者を撃退するに至っている。(なお、対外的には撃退したのは戦闘機を操ったカティということになっており、セイレネスが地上の襲撃者を一掃したことは伏せられている) そのエピソードもあって、ヴェーラたちは彼を全面的に信頼しており、それは後の歌姫候補生たちにも受け継がれた。誰もが(それこそマリアですら)全幅の信頼を寄せる人物と言える。
ヴェーラやレベッカの生き方や考え方にも影響を与えたとさえ言えるかもしれない。彼自身、立場や生き方についての哲学を持っており、求められればそれを示すこともあるのだ。
研究にしか興味がないと自称するが、歌姫たちにランチを奢ったり、レベッカたちを気遣ったりと、繊細な気遣い能力を持っている。
なお、セイレネス・システムだけでなく、「アルス・パウリナ」や「アルス・ノヴァ」といったゲームや、参謀部のAI・アテナや、参謀部第六課のAI・アレス、ウーレアらについての知識も深く、時としてメンテナンスに関わっている。システムに関わる情報で、彼が知らないことはないのだ。
リグ・ダウェル艦長
マリオンの制海掃討駆逐艦・アキレウスの艦長。その前は、レベッカの戦艦・ウラニアの一等航海士である。階級は中佐。年齢は50歳(見た目は40代前半と言われる)
いかにも海の男と言った風体で、言動はウィットに富んでいる。レベッカが全面的に信頼していた人物の一人でもあり、その状況把握能力は高く評価されている。アキレウスについても知り尽くしており、未熟なマリオンを物理的・精神的に度々支えている。
ちなみにその外見とユーモアセンスから、非常にモテる。が、妻子があるということで、浮いた噂はない。誠実にして実直な人柄である。だが、一部ではレベッカに惚れていたのでは? という噂もあるにはある。
ジョンソン&タガート
「ジョンソンさんとタガートさん」でひとまとめにされる警護官。二人あわせて「伝説の警護官」とも呼ばれている。ヴェーラたちとは2084年からの付き合いとなっており、マリオン入学時でなんと12年の付き合いである。もはや警護官とかそういうものを超えた付き合いであり、ヴェーラもレベッカも、二人にはすっかり心を許している。
二人はもともと海兵隊の兵士だったが、2084年の士官学校襲撃事件の際に侵入者と交戦。ヴェーラたちを守ってセイレネス・シミュレータルームへと導いた。それが事件の解決に直接繋がっている。ふたりとも危機一髪だったところを、結果としてヴェーラ、レベッカに救われている。
2096年に起きたある重大事件の際に、タガートは左腕を失っているが、高性能義腕を装着しており、生活に不便はなさそうである。警護官の仕事がそのまま続けられているところからもそれは明らかだ。
二人はいわゆる巨漢に属する体格の持ち主で、腕の太さはそこらの女性の腰よりもある……らしい。剛腕で射撃スキルも高く、また、自動車類の運転能力もある。海兵隊上がりであるから、腕っぷしは当然強い。
ヴェーラたちが求めればいつでもどこでも参上し、求められていなくても影から護衛をし続ける真のプロフェッショナル。ヴェーラたちのみならず、参謀部第六課にも極めて深く信頼されており、長らく人員の交代を認めなかった。ヴェーラたちと出会った時は二十代半ばで軍曹と兵長だったが、マリオンたちと遭遇した時にはふたりともすでに四十代であったりする。
アレキサンドラ・ハーディ
参謀部第六課統括である。歌姫たちの管轄部署のトップであり、作戦においては全責任を負う立場である。
経歴は異色で、かつては陸軍所属のスナイパーである。そこを前統括エディット・ルフェーブルに見出され、参謀部に引き抜かれる。それ以来、エディットの右腕として辣腕をふるい、長らく参謀部第六課ナンバー2として君臨していた。
エディットが何者かによって殺害された後、繰り上がる形で統括になったハーディだが、マリアとの権力争いに破れ、傀儡とされてしまう。相手が悪かったとしか言いようがない。
だが、それでもその辣腕ぶりは健在で、歌姫のために献身的に活動を続けている。ヴェーラやレベッカに、ナンバー2時代から、強く肩入れしているところがある。普段、仕事に私情を持ち込まない彼女としては極めて珍しいことである。
スナイパー時代の経験から、恐ろしいほどの忍耐力と集中力を有している。作戦に於いても犠牲は二の次で最大戦果を得られるような作戦を提案することが多い。提案、というのは、エディット時代末期より、現場の作戦は現場で立てるべきであるという主張が通っており(歌姫たちに限る)、参謀部第六課に限って言えば、現場で立てる作戦の方針提案と、承認、そして最終的な責任を取るということが仕事であるということになっている。エディットがいかに優秀で理想的な上司であったかが現れている。また、ハーディもそれを手堅く引き継いでおり、二人の間の信頼関係が伺える。
ハーディは「スズメバチ」と渾名されるほど鋭いオーラを放っている。
また、彼女が心を許したのは唯一エディット・ルフェーブルだけである。
エディット・ルフェーブル
本作の時点ですでに故人となっているが、この人は本作「セイレネス・ロンド」全編に渡る最重要人物であるといえる。何しろ、この人がいなければ士官学校襲撃事件(2084年)で物語は終わっているのだ。それどころか2071年の(カティの故郷である)アイギス村襲撃事件の救出作戦にも関わっており、この時にカティと出会っていなければ、その後の物語はなかったかもしれない。
元陸軍所属であったが、2073年頃の戦闘で全身に大火傷を負い一度は除隊した。その際に両目も失明したが、再建術および高性能義眼の力で社会復帰を果たす。その後、参謀部に入るなり頭角を表し、こと撤退戦(当時ヤーグベルテは防衛戦が主で、必然的に撤退戦が多かった)の指揮おいて類まれなる才能をしめした。それにより「逃がし屋」との渾名がつけられ、軍、こと前線の兵士たちからは圧倒的な支持を得た。「現時刻をもって第六課が指揮を引き継いだ!」は彼女の決め台詞であり、それを聞いた兵士たちは絶望の淵にあろうとも生還することを諦めなかった。
そして歌姫計画の責任者の一人として任命されるが、その数年後に士官学校襲撃事件(2084年)が発生。それ以後、ヴェーラ、レベッカ、カティの身元引受人となる(当時カティは成人していたが、いろいろな手続の関係でそうなった) 士官学校襲撃事件で襲撃者を撃退したのはヴェーラたちだったが、その後始末やケアなどはエディットが一手に引き受けた。
その後、3人との同居生活が始まるが、その中でヴェーラたちは精神的に成長していくことになる。この触れ合いの数年間の中で、ヴェーラとは度々衝突し、時として絶交状態にもなるのだが、それは相手を思いあった結果であった。ヴェーラはエディットと激しく衝突しながらも、エディットのことを誰よりも頼りにしていた。
ちなみに酒豪である。酒量が増えたのは戦闘で負傷して陸軍を除隊してから。空軍に入り(そしてエウロスに入り)家を出たカティがエディットのために「おつまみ」を作るというのが定番で、それ故にカティは無数のおつまみレシピを体得することになり、「歩くおつまみレシピ」とさえ呼ばれるようになった。エディットのことをカティは「姉さん」と呼んでおり、悩みがあれば必ず相談していた。また、エディットもカティには安心して愚痴や不安を溢すことのできる間柄、盟友であった。
エディットは誰よりも精神的に「大人」であろうとした人物である。それゆえに誰からも頼りにされていたが、歌姫計画の多くの権力が集中しすぎてしまったがために、というより、ヴェーラとレベッカがあまりにもエディットに頼りすぎてしまったために、結果として軍を辞めると決意した直後、2091年1月に、41歳にして暗殺されてしまう。それによって支えを失ったと感じたヴェーラは深い傷を負い、5年後の2096年に大きな事件を引き起こすのである。
エリオット中佐
カティの腹心であり、先輩。エウロス飛行隊ナルキッソス隊の隊長である。彼はエウロス飛行隊の先代隊長、カレヴィ・シベリウス大佐の頃からの在籍で、戦闘機一筋二十数年の大ベテラン。「鬼神」と呼ばれるほどの戦闘のスペシャリスト。ジギタリス隊隊長マクラレン中佐ともほぼ同期であり、この双璧があるからこそ、カティは自由に振る舞える。
本来は将官になって、後進に道を譲っていてもおかしくない年齢とキャリアだが、未だカティを支えられる人材が育ってないこと、情勢がそれを許しているとは思えないことから一線級からの引退を踏みとどまっている。
エウロスどころか空軍きっての色男とも言われており、浮いた話も多いのだが、実はそのほとんどあるいは全てが嘘。噂が尾ひれをつけ、かつエリオット自身がそれを否定したこともないことから、ネットでは好き放題言われている。
エリオット自身はいつの間にか(確かに)カティに惹かれていて、保護者のような、あるいは、年の離れた兄のような立ち位置に収まっている。エリオット自身、恋人になりたいのかどうかは分かっていない。カティもまた鈍い性格であるし、かつての恋人(死別)以外は眼中にないことから、二人の関係性は一向に進まない。
彼は年端も行かない少女たちが「歌姫」として最前線に立ち、命をかけて大勢を殺すという構図に非常に強い疑念と懸念を持っており、現状を憂慮している。その思いはカティやマクラレン中佐と同じものである。エウロス内の結束は固い。
砕けた性格が魅力的なエリオットであるが、実は非常に硬派であり、現実主義者である。
ちなみにファーストネームは作中にでてこない。
クララ・リカ―リ
エディタと同じ、歌姫養成科第一期生、92年カルテットの一人。V級歌姫である。軽巡洋艦ウェズンを操る。一人称は「僕」だが、性自認は女性とのこと。身長は160cm。黒髪、黒褐色の瞳である。
本作ではほとんど出番がないが、彼女もまた「八都市空襲」の被災者。12歳で戦災孤児となって施設ですごす。その中で「アルス・パウリナ」を通じて歌姫として見出され、士官学校に入る。誰よりもアーシュオンに対する復讐心が強く、戦場では無慈悲とも言えるほどの苛烈な立ち回りを見せる。普段は大人しく理知的な少女という印象の彼女だが、一旦戦場に出るとバーサーカーもかくや、である。軽巡ウェズンの火力と機動力も合わさり、突破力が凄まじいのである。
同期のテレサとは特に仲が良く、また、運用上もセットで扱われることが多い。
テレサ・ファルナ
エディタたちと同期。歌姫養成科第一期生にして、92年カルテットの一人。彼女もV級歌姫。
実はレニーと同郷(セプテントリオ出身)で、八都市空襲の被災者ではあるが、その日たまたま家族旅行に出掛けていて難を逃れた。とはいえ、友人も親戚も家も何もかもを失ったことに変わりはなく、彼女もまた強い復讐心に突き動かされている。歌姫となるのを決意したのも「憎いアーシュオンを滅ぼすため」であると公言してはばからない。
物事ははっきり決め、決めた以上決して揺らがないという信念の持ち主である。また、思ったことは躊躇せずに伝え、また、そのような性格であるにも関わらず、相手を頭ごなしに否定することもない。非常に精神年齢の高い人物でもある。
クララとは似たもの同士のところがあり(復讐心も然り)、初対面から意気投合して、最後まで最高の親友であり続ける。
リチャード・クロフォード少将
ヤーグベルテの誇る「第七艦隊」の司令官。歌姫たちが出てくるまでは神出鬼没の最強艦隊だったが、歌姫が出現して以後も縦横無尽の活躍を見せる。クロフォードは「潜水艦キラー」とも呼ばれ、アーシュオンが多数擁する潜水艦艦隊を撃滅するのを得意としている。
凄まじい戦略・戦術眼を持ち、アーシュオン艦隊の出現位置を正確に割り出す。AI・アレスやアテナに頼り切ることなく、軍人としてのカンでそれをやってのける。(AIの裏をかくほど)
それと同時に、歌姫に頼り切りな現状と未来に強い憂慮を示しており、それをどうにかするためならば手段を選ばないところもある。上官を殴って降格、などということも頻繁に起こしていたが、それも「調整」なのではと言われるほど。
ヴェーラやレベッカからは「胡散臭い」と思われているが、それと同時に彼の人柄から「でも嫌いじゃない」というような評価をされている。ヴェーラたちが士官学校にいた頃に教練代表主任(事実上の校長)を務めており、その頃から交流がある。
本作では直接的な出番こそないが、第七艦隊を通じて彼の不穏な行動を見ることができるだろう。