舞台装置(ガジェット)@反逆のオラトリオ

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このページでは「反逆のオラトリオ」に関する様々な舞台装置(ガジェット)について補足していきますが、読まないからと言って本編が分からないなんてことはありません。あくまでプラスαの情報という感じです。

セイレネス・システム

ヤーグベルテの生み出した謎のシステム。扱えるのは「能力者」(あるいは「素質者」)と呼ばれる者だけ。この「能力者」のことを「歌姫セイレーン」と呼ぶ。そしてその「歌姫セイレーン」がシステムに同調することで発される「歌」のような「音」がある。逆説的に、それ故に能力者は「歌姫セイレーン」と呼ばれるようになった。ちなみに「セイレネス」は単数形で、これの複数形が「セイレネス」である。

歌姫セイレーンの「歌」は物理的な破壊力を有しているが、それは物体をエネルギーに変換する能力の発露である。各種攻撃モジュールは、そのエネルギー変換の方針を決めるためのものである。変換効率とシステムの消耗率、エネルギーの消耗量の兼ね合いで決められる。

基本的には艦船(戦艦・重巡・軽巡・駆逐艦・小型砲撃艦フリゲート小型雷撃艇コルベット)に搭載されて運用される。そのキャパシティの大きさによって、システムの大きさが指数関数的に巨大化するため、D級歌姫ディーヴァS級歌姫ソリストには戦艦(しかも650m級、500m級などという馬鹿げた大きさの)が与えられている。C級歌姫クワイア級は駆逐以下の艦船を割り当てられる。

また、戦闘補助を目的として、陸上(特に士官学校)にも同系列のシステムが配備されており、こちらでも実戦補助への参加が可能。偵察用ドローンスカウターなどの操縦や戦闘情報ログ処理はほぼ陸上で実施されている。なお、これをするのは士官学校の学生の仕事である。セイレネスは距離を(事実上)無視するシステムであり、その通信プロトコルはLCP(Logical Connection Protocol/論理通信)である。

もっと簡単に言うと、セイレネスというのは、物理実体(艦船)のもともとの能力を数十倍まで伸長するシステムと言える。また、セイレネスの障壁を張り巡らせていると、通常兵器をほとんど無効化することができる(亜音速魚雷SSTを除く) 最下級のC級歌姫クワイアでも駆逐艦規模の艦船でも通常兵器はほぼ無効化する。さすがに電磁誘導砲レールキャノンクラスになると一発で小破~中破するが、それでも一撃轟沈はほぼ起こらない。同様に対艦ミサイルもほとんど通用しない。こちらは命中前にエネルギー変換されて散らされてしまう事がほとんどのため。

セイレネスが発動アトラクトすると薄緑色オーロラグリーンの発光現象が観測される。これは全歌姫セイレーン共通であるが、力が高まるとその輝きが強くなる。夜の海で発動すると、昼間のごとく明るくなる、とも。

ちなみに「歌姫セイレーン」はおしなべてリアルに歌も上手い(マリオンは音感、アルマはリズム、レオノールは美声、など)が、セイレネスの能力と歌の巧さに相関関係はない。

なお、起源となったシステムはホメロス社によって提供されているが、その維持管理に関わっているのは、ヤーグベルテ最高の頭脳とも呼ばれる将校、ブルクハルト技術中佐である。関わりを持ったのは中尉時代で、それからずっとセイレネスに関わり続けている。

なお、本システムは莫大な建造費・維持費がかかるシステムであり、それ故に「歌姫セイレーンたちに稼がせよう」という動きが定常化した。

アルス・パウリナ(AP – Ars Paulina)

VRシミュレーションゲーム、通称「AP」である。歌姫セイレーンを発掘するために開発されたゲームで、開発者はセイレネス・システムと同様にブルクハルト技術中佐(開発時は中佐ではないが)である。敵国アーシュオンの艦隊を敵性勢力として、プレイヤーサイドがチームを組んで撃破していくという目的のタクティカルな面も持つ。

ジュニアハイ(中学)時代の3年間が主にプレイアブルな時期で、その時期に戦術や戦略、指揮といったことを実戦的に学ぶことができるシステムで、同時に「歌姫セイレーン」としての素質者も発見することのできるシステムである。ゲームプレイ時にVRヘルメットを被るが、その際に脳波等の情報を解析されることで能力者であることが判明する。

ゲーム自体は歌姫セイレーンの管轄部署、参謀部第六課のAI・アレス、および軍のAI・アテナのシステムと連結して作られており、そのため、限りなくリアルな戦場が再現されている。

また、このプレイ状況は常にAI・アレスによって実況されており、ヤーグベルテ全国民が見ることができる。その能力・スコアの高さがほぼそのまま人気に結びついている。そして士官学校に入る前にAPは卒業することになるが、APでの知名度がそのまま士官学校時代の「広報活動」につながるため、引き続き支持を受けるのが常である。

たとえばエディタはAPでの成績はもちろんのこと、その美貌で「妖精」と呼ばれるようになったし、APプレイ時には一言も喋らないが鬼のような攻勢を仕掛けることで有名だったハンナは「沈黙の聖女」、同じくAPプレイ時には他の追随を許さない働きを見せていたレニーもその容姿から「金の美姫」などと呼ばれるようになっている。

これで3年超の間プレイを続けてきた子たちは、そりゃ優秀だろうよというくらいの指揮能力や状況分析力を有する。それはマリオンたちも例外ではない。実戦経験とは違うが、机上戦闘では一流の提督もかくやという判断能力を持っている。

なお、「アルス・パウリナ」というのは、「レメゲトン(ソロモンの小鍵)」の一部であり、「善なる精霊のみ」を取り扱った書物である。パウロによって発見されたゆえに、Ars Paulinaと呼ばれているという説がある。

アルス・ノヴァ(AN – Ars Nova)

主にアルマがプレイしているリズムゲーム、略して「AN」。これもなんと、軍(主に参謀部第六課)が作成したモバイルゲームである。ゲームとしては現今のリズムゲーム(音ゲー)を三次元的に拡張したものであり、当然難易度も現今のものの数倍になる。

この世界の携帯端末モバイルと呼ばれる端末は見た感じは今のスマホと同じだが、立体投影ディスプレイを搭載しているのが基本となっており、本ゲームはその能力を余さず使っている。そのため、HARDやEXTRAといったゲームモードではほとんど激しいダンスをするような動きになる。

アルマはリズムの達人なので、バンバン初見EXCELLENTクリアなどをやっていくが、これは常人には不可能。施設にいた頃からリズムゲームに嵌っていた&天性の才能がある、ゆえにできることである。AN自体には特に学習効果はないのだが、ゲームを進行するにつれて、ヴェーラやレベッカ、あるいは一期生たちの特典映像が見られるようになっているため、DL数は凄まじいことになっているとか。それもまた、金食い虫のセイレネス・システムのための資金調達の一環である。

論理観測方程式(フォーミュラ)

物語後半から登場する新技術。論理変換方程式とも。エネルギーを方程式に変換し、それをLCP(論理通信プロトコル)を通じて解析することでA地点からB地点にエネルギーを転送することができるようになった。それにより、膨大な電力を食うセイレネス・システムのために、巨大なジェネレータを積み込まなければならない……という常識が崩れ去る。セイレネス・システム小型化計画こと「イリアス計画」の実績の一つである。

これにより、従来の戦艦の半分のサイズ(と言っても350mと、空母並かそれ以上の大きさだが)の戦闘艦・制海掃討駆逐艦バスターデストロイヤーに、マリオンたちのためのセイレネス・システムが搭載できるようになった。

一種のエネルギー革命である。

VRヘルメット/ESヘルメット

アルス・パウリナ(AP)筐体きょうたいにて装着するのがVR(Virtual Reality)ヘルメットで、艦船のコア連結室で装着するのがES(Extending Senses)ヘルメットである。

画像はESヘルメット。VRヘルメットは単に情報を集約して装着者の視覚や聴覚に働きかけるだけのものであるのに対し、ESヘルメットはその感覚自体を拡張する。視認範囲は大幅に拡大し、聴覚のみならず全感覚が敏感になる。第六感めいたものさえ使えるようになる。もちろん、そのES能力を発揮するためには、セイレネスの発動アトラクトが不可欠である。

VRヘルメットはどこにでもある代物だが(現今で言う「ゲーム機」があるところにはたいていあるくらいの普及率)、セイレネス・システム専用装備であるESヘルメットは全てが軍の管轄下に置かれているし、そもそも普通の家庭の電力では動かすことが出来ない。

超兵器(オーパーツ)

アーシュオンの誇る三大兵器群を総称して「超兵器オーパーツ」と呼称する。セイレネス登場以前は、ヤーグベルテにはこれらの兵器に対抗する手段がなく、亡国の憂き目にあっていた。三種全てに共通する特徴が「通常兵器が通用しない」ということである。後に「反応弾」が開発されて、ようやくかすり傷を付けられるようになるが、それまではセイレネス、特にヴェーラとレベッカの二人に頼り切りという状況が続いた。以下、各個の解説をする。

インスマウス

ISMTやインスマス、とも呼ばれるが、基本的には「インスマウス」という表記が(作中では)正しい。自律型変形球体爆弾などと書かれることが多い。無人兵器とされている。

インスマウスは基本的には超大型爆撃機(全長・全幅100mを超える)の姿をしているが、目標地点に近づくと球体に変形し、加速。マッハ7を超えるスピードで落着し、反応兵器(放射線のない核爆弾。EVANGELIONでいうところのN2兵器)として爆発する。

百万人規模の都市を一撃で消滅させるほどの威力を持ち、2084年の「八都市空襲」ではこれが8発同時にヤーグベルテを穿うがった。その時はヴェーラもレベッカも士官候補生であり、無力だった。また、この時にマリオンやアルマ、レニーらは被災し、身寄りをすべて失って施設に引き取られることになっている。

大きな禍根を残した兵器であり、同時にヤーグベルテの人々には極度の恐怖を刻み込んだ。未だに「八都市空襲」ということばが呪いのようにヤーグベルテの人々の心の中には残っている。

ヴェーラたちが戦場に現れた2088年以降も度々インスマウスがヤーグベルテを脅かしているが、都市部を狙ったそれらは全てヴェーラとレベッカによって迎撃されている。だが、艦隊の全てを守れているわけではないようである。

とにもかくにも、アーシュオンの誇る最強最大最悪の兵器、それがこのインスマウスである。

ナイアーラトテップ

通称クラゲ。タコではない。上から見ると「能面」のような基部を持ち、そこから無数の「触手」が生えているというフォルム。大きさは全長300~350m。触手の生えた航空母艦(くらいの大きさの艦)が水中から襲ってくるというイメージをすると近い。

分類的には強襲近接戦闘型潜水艦。E(初期)型以外は超兵器・ナイトゴーント搭載能力を有しており、ただでさえ手強いクラゲが更に手がつけられなくなっている。タイプとしては、E(初期)型、M(量産)型、I(改良)型の3パターンが確認されていて、このうちI型はクラゲの形をしたインスマウスである、とみなされている。なお、I型についてはその脅威度の高さから「クラーケン」という別名がついている。イカであるが、やっぱりクラゲとまとめて呼ばれる。

ナイアーラトテップはその高い隠蔽性(ステルス性能)を使い艦隊に接近し、その触手状の打撃兵器で艦船を「ぶったたいて沈める」攻撃を行ってくる。その攻撃は歌姫セイレーンたちにも脅威で、重巡級であっても一撃中破あるいは大破させられるほど。

しかし、セイレネスの能力が高ければその接近に気付くことができるため、クラゲに警戒している限りは接近される危険性はあまりない。が、アーシュオンもそうとしって戦術を立ててくる。乱戦に持ち込んだうえでクラゲに叩かせる、など。ただ問題は、このクラゲは完全には指揮下に入っておらず、思ったように動いてくれないことが多々あること。それは操縦者の問題なのだが。

また「クラーケン(=I型)」はそれまでのクラゲとは一線を画している。先述の通り、脅威度は段違いである。亜音速魚雷(SST)さえ凌ぐ超高速で索敵範囲外から水中を突進してきて、自爆するのだ。その威力はインスマウスのそれに匹敵する。ちなみにマッハ1というのは(条件にもよるが)空気中ではだいたい340m/sだが、水中では1500m/sになる。クラーケンはなんとこの水中マッハ1に迫る速度で接近してくる大型建造物である。質量も凄まじいため、反応兵器としての威力はインスマウスを超えるともいわれている。

ナイトゴーント

クラゲことナイアーラトテップ(M型)に搭載されている特殊航空兵器。無人機(UAV)と分類されているが真偽のほどは定かではない(鹵獲できていない)

異形の戦闘機である。フォルム的にはランスや剣というイメージらしく、鋭く尖った形をしている。NGX0(初期型)が長らく戦場を支配していたが、マリオンの時代になる前くらいにNGX1(新型、と呼称される)にリプレイスが進んでいる。また、NGX1は実戦に登場してきた際には「ケルベロス」と呼称されている。

これらも例外なく通常兵器が効かず、そのため超エース部隊である四風飛行隊ですら初期の頃はバンバン撃墜されていた。先のエウロス飛行隊隊長カレヴィ・シベリウス大佐すら、これら兵器によって撃墜されてしまっている(死因は別だが)

NGX1になると機動性はさらに高まり、もはや既存の迎撃兵器では至近弾を出すことすら難しくなる。航空戦力としても「空の女帝」カティ・メラルティン大佐の部隊の限られたメンバーだけが互角にができる程度となる。いずれにせよ、歌姫セイレーンの支援がなければ良くて引き分けである。

ケルベロス(NGX1)のデータについては学生時代のマリオンたちが集中解析しており、その結果が航空部隊にフィードバックされている。そのため、カティたち航空戦力は徐々にキルレシオで押し返していくことになる。

他の二種に比べると範囲攻撃的な装備を有するわけではないため脅威度は下がるが、戦場に4機もいれば通常艦隊は壊滅させられかねないほどの戦力であることは事実である。しかし、レベッカ級の歌姫セイレーンにかかれば一撃で空域を制圧されることもあり、力ある歌姫セイレーンからみれば撃墜スコアの源でもある。油断はできないが。

ケルベロスより更に強化された大型ナイトゴーント「ゲリュオン」なるものの存在も確認されている。

ヴァラスキャルヴ/ジョルジュ・ベルリオーズ

超AI・ジークフリートを開発し、シンギュラリティを引き起こした人物、ジョルジュ・ベルリオーズが率いる(とされる)軍産企業複合体コングロマリット「ヴァラスキャルヴ」。全世界の企業が関与しているとも言われ、それゆえにジョルジュ・ベルリオーズは「世界の王」とも言われる。

本作では直接的に姿を見せることはないが、歌姫計画セイレネス・シーケンスを始め、ありとあらゆる事象に関与しているとも。マリアの所属する企業「ホメロス社」もまた、ヴァラスキャルヴの一翼であるという噂もある。そしてマリアは直接ベルリオーズからの指示で動いている(のかもしれない)

また、世界のAIはローカルモデルを除いては、その全てが超AI・ジークフリートの手によるものである。それゆえ、世界中の政府も、軍も、「脱ジークフリート」のような動きをすることができず、結果として莫大な富がベルリオーズに転がり込んでいる、と、されている。

いずれにせよジークフリートのAdministrator権限を有するベルリオーズに歯向かうことはなんぴとにもできず、世界はベルリオーズの思惑通りに進んでいる。その一環、そして、最も重要なパーツが歌姫計画セイレネス・シーケンスである。これにより戦争を継続し、世界のセイレネス活性を高めていくことで論理層(いわば神の次元)につながるゲートを開放することができるようになる。セイレネスが発動し、その「歌」が世界を満たすことで、歌姫セイレーンの因子、通称「セラフの卵」が活性化し、力ある歌姫セイレーンが生まれやすくなる――というベルリオーズの仮説の実証実験という側面もある。

なぜベルリオーズがそのような、ある意味「世界の崩壊と再構築イノベーション」を求めているかについては本作では語らない。ヴェーラ編を見ていただければ。

ちなみに、ヤーグベルテには「ホメロス社」が肩入れしているが、アーシュオンには「アイスキュロス重工」が参画している。ホメロス社はセイレネス・システム他関連兵器を、アイスキュロス重工は超兵器オーパーツを納品、管理している。どちらもヴァラスキャルヴ傘下である。

MBHジェネレータ

MBHはMicro Black Holeの略。現時点でまだプロトタイプであり、搭載しているのはセイレーンEMイーエム-AZエイズィ、ウラニア、ヒュペルノルの戦艦三隻と、制海掃討駆逐艦バスターデストロイヤーのアキレウスとパトロクロスのみ。制海掃討駆逐艦バスターデストロイヤー搭載のMBHジェネレータはプロトタイプ・バージョン2と呼ばれるもので、戦艦搭載型と比べてかなりの小型化がされている(出力も少し下がっているが)

生成された2つの極小ブラックホールを使って発電を行う仕組み。ブラックホールを連星として、互いの周りをぐるぐると回らせるそのエネルギーを変換する。極小とはいえブラックホールなので、生み出されるエネルギーは核融合炉すら凌駕する。(ブラックホール生成自体に多量の電力を用いるので、実際に継続的に利用できる電力は融合炉よりは確かに良い、くらい)

なお、設備は非常に巨大で、たとえばセイレーンEMイーエム-AZエイズィは全長650mあるが、そのうち200m近くがこのMBHジェネレータで占められている。

同時代に論理観測方程式フォーミュラ技術が台頭してくるが、戦艦や制海掃討駆逐艦バスターデストロイヤーはそれを併用することでほとんど無限の継戦能力を獲得することに成功する。(実弾兵装が尽きても、いくつかの光学兵装を搭載しているからである)

なお、マイクロブラックホール自体は万が一艦船に大ダメージが及んだとしても不安定になって消滅するだけなので、外部に大きな影響は与えないと言われている。

ちなみに重巡洋艦・軽巡洋艦は核融合炉を搭載し、それ以下の艦船は充電式+ガスタービン+ディーゼル(などの)形式である。これら小型艦については現代装備とそうは変わらない。

四風飛行隊

ヤーグベルテの誇る最精鋭航空戦闘部隊がこの「四風飛行隊」。ちなみに「しふう」飛行隊と読む。「ノトス」「エウロス」「ゼピュロス」「ボレアス」の四部隊が存在しており、ヤーグベルテの広大な国土を守っている。どの部隊も空軍のエースパイロットを引き抜いて構成されているため恐ろしい戦力となるのだが、中でも「空の女帝」率いる「エウロス」飛行隊は「狂った練度」と評され、名実ともに最強である。それぞれの保有戦闘機(支援戦闘機込)は100機程度+その他の航空戦力+航空母艦+地上基地で構成されており、単体で一つの軍隊を形成している。

空軍ゆえに参謀部第三課がトップに立つが、彼ら四風飛行隊は独立戦力であり、各隊長に指揮権を移譲されている。そのため、緊急事態発生時には参謀部の指示を待たずに行動することができ、核兵器以外の兵装の使用も自由に行える。

四風飛行隊は国民からの信頼も厚く、人気もある。なお、空軍もカティの影響によるものか、女性パイロットが非常に増えてきている。

エウロス飛行隊

名実ともに世界最強の航空戦力部隊。アーシュオンの超兵器オーパーツ・ナイトゴーントと互角にやりあう戦闘力を有する。隊長はカティ・メラルティン大佐。なお、前隊長は「暗黒空域」カレヴィ・シベリウス大佐で、当時最強と謳われていたパイロット。現副隊長は史上最年少でエウロス入りしたカルロス・パウエル中佐である。

エウロス飛行隊は主に以下の三部隊、各24機で構成されている。主力戦闘機はF108P(パエトーンプラス)。

エンプレス隊

「空の女帝」直率部隊。カティが一番機・エンプレス1を務める部隊。エンプレス隊はほとんどが女性で構成されているが、副隊長のパウエル中佐(エンプレス2)を含め、数名の男性パイロットが存在する。

カティは別に性別で選抜したわけではないが、たまたま訓練についてこられたのが女性だったという話である。カティの「エキドナ」以外、全機が暗黒色に塗装されており、その出現インパクトはすさまじいものがある。半数、たったの12機でも艦隊戦を制するほどの異能力者の集まりである。個人技も集団戦もどちらも比肩する者がない。それぞれが物語の主人公になれるほどの強さと個性を誇る。

「狂った練度の連中の中の更に狂った練度の奴ら」というような表現をされることが間々ある。

また、カティが隊長に就任してからは、エンプレス隊自体に死者が出たことはない。(エンプレス隊自体がカティ時代に作られているので、事実0である)

ナルキッソス隊

エリオット中佐の率いる精鋭部隊。かつてはパースリー隊という部隊も存在したが、それを吸収合併して24機編成になっている。トリッキーな戦術を駆使する集団で、個人技というよりはチームプレイで敵を圧倒する。とはいえ、個人技も空軍トップクラスであり、実際の戦闘データを学習したシミュレータ上では、歌姫セイレーンたちをも簡単にさばけてしまうほど。

ジギタリス隊

マクラレン中佐の率いる精鋭部隊。こちらはセージ隊を吸収合併して誕生した24機編成部隊。マクラレン中佐の性格のように、持久戦に優れている。防衛力が非常に高く、守勢に回ったときの粘り強さはエンプレス隊をも凌ぐと言われる。本作では活躍の場がないが。

エキドナ(大型戦闘機・女帝専用機)

大型戦闘機である。現在の主力戦闘機F108P(パエトーンプラス)に比較して全長・全幅ともに1.5倍程もある。大型になれば機動性は下がるものだが、エキドナは最新のアビオニクスで構成されており、そのため近接格闘戦ドッグファイト能力は既存戦闘機よりも優れている。とはいえ、女帝の実力がなければただの的であることには間違いがないが。

色は真紅で、これは敵への威圧効果と、味方への鼓舞効果が期待されている。事実、敵の通常航空戦力はエキドナを見たら確実に逃げる(というように指示されているからだ)。また戦闘は中継されるものだが、その際の「演出」としても有効に利用されている。

またエキドナは論理観測方程式フォーミュラに対応しており、自前のジェネレータ+フォーミュラの力で無限の継戦能力(パイロットは疲労するので実際は無限ではないが)を持つに至った。それを活かして機首には(この時点ではまだ試作型である)パルスレーザー砲が取り付けられたりしている。なお、装甲自体にも自己修復能力があり、直撃弾でもなければ数分~数時間で塞がるようになっている。

名実ともに最強の戦闘機だが、建造費・維持費もまた最強クラスであり、また、操れる乗り手が二人とないため、事実上ワンオフ機である。

また、実験機としての側面も持っており各種新兵装を搭載して出張ってくることが多い。

歌姫専用戦闘艦(セイレネス・ドラグニア)

実際の所「セイレネス・ドラグニア」と呼ばれるようになるのは本作の少し後から。セイレネスを搭載した艦、その全てを指す。

戦艦

事実上1940年代を最後に歴史から姿を消した「戦艦」(公式には1990年代に1度出撃が確認されている)であるが、2088年に再び歴史の表舞台に返り咲いた。航空母艦以外の艦船は小型化高性能化していく傾向があったが、そこにきて650m級の戦艦が2隻も登場し、一気に海戦の主役となった。ヤーグベルテ以外には建造の技術を持たず、また使いこなせないことから、建造された戦艦は下記の3隻のみである。

セイレーンEM-AZ、ウラニア

ヴェーラ(とイザベラ)専用戦艦セイレーンEMイーエム-AZエイズィ、レベッカ専用戦艦ウラニアは、同型の650m級戦艦である。艦中部~後部にある翼状のスタビライザを含めると、全幅も500m超ある。ちなみに一般的な航空母艦が300~350mであるから、その巨大さ/視覚的インパクトは推して知るべし。

MBHジェネレータを搭載し、特殊砲撃のための変形機構も有している。圧倒的な威容を誇るその戦艦たちは、航空機搭載能力こそ持たないが、無数のドローンを放出する事ができる。それによりビーム砲を拡散させる、立体攻撃を行う、超長距離偵察を行う、などが出来、たったの一隻で全てを完結することができる。

装甲は自己再生プログラムを組み込まれており、多少の損傷ならばものともしない。最も、その損傷を与えられる戦力は極限られているのだが。

装備は460mm口径可変砲(主砲)24門、電磁投射砲レールキャノン18門、長射程粒子ビーム砲PPC10門、203mm速射砲たくさん。垂直発射式ミサイルもたくさん。30mm機関砲めちゃくちゃたくさん。そしてセイレーンEMイーエム-AZエイズィ雷霆ケラウノス、ウラニアはアダマスの鎌ハルパーを艦首に搭載している。

口径可変砲というのは実験兵装で、エネルギー弾と実弾を切り替えて運用できる砲。実弾は460mm(いわゆる46cm砲!)の徹甲弾や榴散弾を使うのが主。エネルギー弾はその名の通りMBHジェネレータで供給されるあまりあるエネルギーをそのまま打ち出すもの。エネルギー弾を撃つ時は口径200mm程度に縮小し、砲身長を180%増しにされて放たれる。あくまで実験兵装なのでその効果の程はよくわかっていない。が、取り付けたものを外すのもまた莫大な予算がかかり、このままの兵装でも一定以上の戦果をあげていることから存置されている。が、レニーの戦艦ヒュペルノルでは口径可変砲はオミットされていることから、評価としては結構辛かったと思われる。

火器はハリネズミのごとく搭載しているが、その殆どはセイレネスによってエネルギー変換されて使われるため、弾頭が直接敵艦船に突き刺さることはあまりない。そしてこれだけの火器が搭載されていることで、セイレネスで使えるエネルギーは甚大なものとなっている。他の艦船には出来ない芸当である。とにかく無茶苦茶に強い。規格外の戦闘ユニットである。

ヒュペルノル

S級ソリスト歌姫セイレーン、レネ・グリーグ専用の戦艦、ヒュペルノル。2097年就役。ヤーグベルテの三隻目の戦艦である。

オパール色の装甲を持つ極めて美しい艦で、大きさは500m級。小型化計画の発展途上にあり、セイレーンEMイーエム-AZエイズィより150mも小型化に成功している。戦艦としての性能としては、搭載火器そのものが減っているが、それ以外は互角。機動性はセイレーンEMイーエム-AZエイズィらをしのいでおり、レニーの能力の高さを活かした単艦での遊撃部隊としても機能する。

セイレーンEMイーエム-AZエイズィらとの違いの一つに、対潜装備の多さがある。アーシュオンの超兵器オーパーツ・ナイアーラトテップを見据えた装備となっている。極めて強力なユニットである。

重巡洋艦

アルデバラン、レグルス

アルデバラン級一番艦と二番艦レグルスである。同型の重巡洋艦であるが、装備が全然違う。アルデバランは対空戦闘に特化した艤装を施されており、レグルスは対艦戦闘に特化した固定兵装が多数装備されている。アルデバランが空を制し、レグルスが先鋒として突っ込む、というのが想定された基本戦術である。初の歌姫セイレーン専用重巡というだけあって、あれこれ盛りだくさんに詰め込まれており、攻防共に優れている。

アルデバランはエディタ、レグルスはトリーネが操っている。

アルネプ

アルネプ級は性能実験艦であるから、二番艦が存在しない。軽巡の機動性と重巡の攻防性能を両立させようとして建造された艦。結果として、艦としての性能は非常に中途半端なものになってしまったが、搭乗者であるハンナの攻撃特化の性質が、アルネプを攻撃特化艦に変えている。その前方集中火力は凄まじく、また、ハンナの優れた戦術眼もあいまって、通常艦隊なら十数分で蹂躙することもできる性能を有する。ただ対艦戦闘特化だけあって、対空戦闘はとても苦手。それゆえに、エディタのアルデバラン、あるいは、レオナのケフェウスとの相性がよい。

カストル、ポルックス

ロラのカストル、パトリシアのポルックスである。ふたご座の星の名を冠する二隻であり、同型(カストルが一番艦)。どちらかというと軽巡に近く、機動性に優れている。その分装甲が脆い。攻撃力に関しては対空も対艦もこなせるが、言い換えれば器用貧乏な性質である。その分情報分析に優れており、部下(C級歌姫クワイア)を率いた集団戦に優れている。

ケフェウス

満を持して搭乗した、四期生/レオノール・ヴェガ(レオナ)専用重巡洋艦。ケフェウス級一番艦。それまでの重巡洋艦・軽巡洋艦のノウハウを結集して作られた。武装はアルデバランを引き継いでおり、対空性能に非常に優れている。また、無数のドローンを運用することができ、対空戦のみならず、対艦戦闘にも十分な威力を発揮する。攻撃、防御、機動性の三拍子を揃えた、準戦艦といっても良いレベルの大型艦。

また、多対多の集団戦にも有用な情報集約・分析能力を持ち、C級歌姫クワイアを多数従えての戦闘に非常に強い。それはレオナの戦術能力もあってのことではあるが。

ケフェウスとアルデバランの二隻体制による対空砲火は夜を昼に変えるほどのものである。

軽巡洋艦

ウェズン、クー・シー

同時に作られた艦ではあるが、どちらも実験艦であり、同型艦ではない。コンセプトは共通しており、強襲からの一撃必殺である。そのため、防御性能はほとんど捨てられている。実際の戦闘でもウェズンを操るクララの班、クー・シーを操るテレサの班が両翼から敵陣に突っ込んでいくことが多い。防御は捨てたと言っても、そこはセイレネス搭載艦である。通常兵器ではほとんどダメージを受けない。機動性は常識を外れており、戦闘航行(最大)速度は時速二百キロにも迫る。まさに暴走艦たちである。

制海掃討駆逐艦(バスターデストロイヤー)

2098年に搭乗した新艦種。駆逐艦とはなんぞやとなるほどの、四百メートルにもなる巨艦である。コンセプト自体はその数年前から存在していた(2096年には軍用のAP内で確認されている) だが、セイレネス小型化計画である「イリアス計画」がギリギリとなったため、マリオンたちが卒業するその日ギリギリまで就役が遅れた。論理観測方程式(フォーミュラ)を搭載した初の艦船である。

アキレウス、パトロクロス

アキレウス級一番艦と二番艦。色はそれぞれ黒と青である。それぞれの搭乗者であるマリオンとアルマのパーソナルカラーは、マリアの独断で決められた。

先に記載した通り「論理観測方程式(フォーミュラ)」によってもエネルギーを得ることのできる新世代のセイレネス搭載艦。地上からの電力供給を受けられるため、ほとんど無限に動き回ることができる。

イメージとしては小さなセイレーンEMイーエム-AZエイズィであり、武装類もスケールダウンこそしているが類似。艦首搭載ビーム砲も健在。口径は小さくなっているが、出力はセイレーンEMイーエム-AZエイズィとほとんど互角であるため、その威力も互角である。広域展開している敵艦隊の半数以上を一撃で消し飛ばす事が可能。密集していれば一撃で全滅である。

また、セイレネス・システムにより提案されるモジュールも非常に多く、マリオンたちはそれらを瞬時の判断で選択していかなくてはならない。その分攻防のバリエーションは多く、単艦で一個艦隊を超える戦力となる。装甲の自動修復能力はもちろん搭載されている上に、エネルギーも供給され続けるため、中の歌姫セイレーン(マリオンやアルマ)がバテない限り無限に戦い続けられることもまた、特筆すべき事項だろう。

偵察用ドローン(スカウター)

この世界には数多くのドローンが存在する。セイレネスを用いてある程度定型に操ることもできれば、陸上からの支援で自由自在に動かすこともできる。代表的なものが攻撃用ドローンガンナービーム反射用ドローンリフレクター偵察用ドローンスカウターである。

特にレーダーが役立たず(敵味方の隠蔽能力が高くなりすぎたため)となってしまっているため、頼れるのが「目視」のみとなっている。目視も衛星写真とかではAIによって容易に情報を書き換えられてしまう危険性が高く、そのため、書き換えられるよりも早く情報を届けられる手段が必要となった。論理回線(LCP)と常に接続し、改竄される前に自軍のAIに画像情報を届けられる手段として研究開発されたのが「偵察用ドローンスカウター」という手段である。

九六式彩雲

マリオンの操縦により、一躍脚光を浴びた偵察用ドローンスカウター。景雲、暁雲、瑞雲、東海といった偵察用ドローンスカウターもそれぞれに活躍の場があるが、彩雲はその中でもダントツに足が速い。その分、コンピュータ制御でしか操れないと思われていたが、それはつまり撃墜されやすいということでもある(敵方のAIによって容易に機動を予測されるため) 

そのため、ダメ元で射出するだけの使い捨てドローンであり(敵陣を一直線に縦断できれば十分と考えられていた)、それゆえにマリオンが戦闘補助の練習用に使うことになった(落ちてもいいや、くらいの気持ちで)。だが、マリオンは非常にスジがよく、この超高機動ドローンを簡単に操ってしまう。その技術はドローンとはいえ、あの「空の女帝」を唸らせるほど。

マリオンは音感だけじゃなくて、動体視力やら運動神経も実はすごかったのである。マリオンは後輩たちにその技術を伝授していたりする。

それにより、この「九六式彩雲」は産廃同然の使い捨てドローンから一躍主戦力にと格上げされたのである。

ちなみに九六式というのは2096年に実戦投入されたことからついた名前である。マリオンとの出会いは必然だったとも言える。

携帯端末(モバイル)

今で言う「スマートフォン」である。外観的には現今の板状の端末であり、それほど変わらない。が「空中投影ディスプレイ」によって3次元的に映像や画像を表示させることができるようになっており、音声通話ボイス映像通話ビジョンを選択して相手と会話することができる。

映像通話ビジョンの際には3次元カメラによって撮られた映像がリアルタイムに相手側に送信されることにより、生身での対話とほとんど同じユーザー体験UXをすることができる。現実、この世界の人たちはほとんど映像通話ビジョンでコミュニケーションをとっている。

現在の「画面フィルタ」と同じように、第三者からは映像を見えにくくするための機構も標準搭載しているため、みんな気軽に映像通話を行う。音声はどうかというと、これも強指向性スピーカーが搭載されているため、話者以外には聞こえないようにすることもできるのである。

携帯端末モバイルの成人普及率はヤーグベルテ内で96%を超えており、もはや生活上必須のツールとなっている。ちなみにお値段的にも現今の感覚とほとんど変わらない。ピンキリであるところも同じ。また、その端末の全てが政府のAI・ユーノーによって管理されている。軍で使用する携帯端末モバイルについては、AIでらうアレスやアテナ、ウ―レアらによって別途セキュリティを施されている。

なお、ヤーグベルテのみならず、この世界の国々のほとんどは超監視社会である。そうであるがゆえに、歌姫セイレーンの発見や確保が容易で、かつ、「アルス・パウリナ」への参加を事実上強制することができるのである。

ヘスティア(航空母艦/第七艦隊旗艦)

ヤーグベルテ最新鋭航空母艦「ヘスティア」は、クロフォード少将率いる第七艦隊の旗艦である。ヘスティアの最大の特徴は、その「超広範囲隠蔽能力」にある。艦隊全体をすっぽり覆い隠してしまうステルス性能と光学迷彩を展開できる。衛星からの写真撮影ですらほぼリアルタイムに書き換えてしまう。それにより第七艦隊を発見するのは難しく、また、クロフォードの能力により、進路予測もさせないため、予測的に観測して発見することも困難である。

航空戦力搭載能力という意味では通常航空母艦と同様で、戦闘機・攻撃機を百機程度であり、打撃力に特筆するべきところはない。が、運用方法の巧みさによって、本来の性能以上の戦力となっている。敵艦隊にしてみれば極至近まで気付くことができず、かつ、気付いた時には第七艦隊の空母たちによって先制攻撃を受けているため、まともな戦闘をさせてもらえない。数々のアーシュオン艦隊がこの手段で封殺されてきた。

アーシュオンとしては「動きのわかる歌姫セイレーンは避けられるが、第七艦隊との遭遇戦は逃げることもかなわない」として、時としてヴェーラたちの戦艦よりもその「見えない」存在を恐れている。ヘスティアのその能力を踏まえ「幽霊艦隊ゴーストフリート」などと呼称されることもある。

なお、このヘスティアの隠蔽能力は、イザベラの探知能力さえあざむくことができる。文字通り「見えない」のだ。

反逆のオラトリオ~絶命の歌声が響く戦場で、私は蘇りし灼熱の歌姫との決戦に挑む~(一式鍵) - カクヨム
「わたしのために死ね」――あの人はそう言った。