戦艦の打撃力と空母の性能を併せ持つチート艦。建造中から「こんなもの役に立つか」「セイレネス搭載艦に予算を割くべき」など散々な言われようだった巨大艦である。全長は450m以上と、空母以上のサイズがある。どころか、歌姫の重巡洋艦を超える大きさである。セイレーンEM-AZにも搭載されている大口径口径可変砲を主砲としている。他、舷側カタパルト「バリスタ」を搭載し、一度のシーケンスで6~10機もの航空機を発艦させることができる。この空母にあるまじき高速部隊展開能力も、本艦の特徴である。ただし運用コスト(メンテナンス込)がアホみたいに高い。
この「運用コストばかりかかって使い所の見つからない艦」に目をつけたのが、エウロス飛行隊隊長「空の女帝」カティ・メラルティンである。第七艦隊司令官・クロフォード少将に交渉役を任せ、本艦を海軍から奪い取った。当時、エウロス飛行隊は空母リビュエを中心とした小規模艦艇群での運用を余儀なくされていたが、昨今の出撃頻度を鑑みて複数の母艦での運用が不可欠だと主張していた。そこでカティは偶然本艦の建造計画を目にして、ある意味一目惚れした。
海軍としても作ったはいいが運用コストが割に合わない、投入局面がわからないなどの問題を抱えていたため、ある意味喜んで手放した。割りを食ったのは空軍司令部であったが、当時既に国内でトップクラスの支持を誇っていたエウロス飛行隊、そしてその「空の女帝」の要求とあれば飲まないわけには行かなかった。そしてまた、この「戦艦空母」のビジュアル的インパクトは凄まじく、ある意味では「広報に超絶向いてるのでは?」という意見も空軍内で多かったため、最終的には移管の承認がおりた。政治のプロセスは面倒である。
実際に、「カティおよびエウロス飛行隊&戦艦空母アドラステイア」のコラボレーション効果は凄まじく、ヤーグベルテの人々はそのビジュアルに熱狂した。カティ単体でも恐ろしく映えるのだが、そこに無骨なアドラステイアが重なったことで国家の士気は著しく向上した。またエウロスの現着時の映像素材としても、とにかく映えた。
実際にカティたちが運用し始めると、やはり運用コストが非常に嵩んだ。が、エウロスの構成員たちのストレスは大幅に減り、結果として機体や人員の損耗率は大きく低下した。なにしろ、コストに目をつぶれば運用しやすい艦だったのだ。おまけに、空母リビュエとは違い、搭載火器による自衛行動もでき、オマケに非常に足が速く、物資搭載量も空母の二倍以上と、良いことづくめだった。運用コスト以外は。が、カティはコストに関しては誰にも文句は言わせなかった……と言うより、その実績を前にしては、言える者が誰もいなかったと言うのが正しい。
四風飛行隊それぞれに配備してはどうかという提案もあったものの、その甚大な運用コストを理由に却下されていたりもする。
ちなみに「戦艦の火力」の部分の利点が生かされたことは、少なくとも2098年までは一度もない。エウロス飛行隊の索敵能力を考えれば、戦艦の射程距離内に敵を入れることはありえないからである。