歌姫は背明の海に

歌姫は背明の海に

26-2-3:希望なるもの

 レベッカ姉様……!  マリアの声にならない叫びが、闇の中に消えていく。マリアは、セイレネス・シミュレータを経由して二人のやり取りを見つめていた。マリアの能力があれば、シミュレータを使わずとも鮮明に見ることができたに違いない。しかし...
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26-2-2:You’re not selfish…

 セイレーン|EM《イーエム》-|AZ《エイズィ》とウラニアが、持てる火砲のそのすべてを撃ち放つ。極至近距離であるにも関わらず、その|尽《ことごと》くが弾かれる。二度目の一斉射も、結果は同じだった。 『残念だけど、それではわたしは倒...
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26-2-1:セイレネスに、賭けましょう。

 セイレネス《《なんかに》》賭けなくちゃならない。  思えばその時点で私たちは間違えていたのかもしれない。  レベッカはそうとも考える。  セイレネスはもはや自分の身体の一部だった。セイレネスについて思うところはあれど、...
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26-1-2:而して、斯様になりぬ

 あらあら――。  アトラク=ナクアはレベッカとイザベラのためだけに存在しているはずの論理空間を、|闇《バルムンク》の中から観測していた。アトラク=ナクアのすぐそばにはツァトゥグァとベルリオーズが|泰然《たいぜん》として立っていた。...
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26-1-1:芥子の仮面

 海は|静寂《しじま》に沈む。  暗い海、星の消えた空、焼けた空気。  しかしそこには風の音も水の音もない。  漂うのは《《音》》というにはあまりにも微細な、セイレネスの《《歌》》だ。  マリオンたちはセイレーン|...
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25-1-4:私のために

 修羅――。  その決意の表れに、レベッカもマリオンもすっかり圧倒されてしまう。アーシュオンのやりかたは、イザベラやレベッカの想像を超えていた。しかし、だからといって、ヤーグベルテのありようを「正しい」とは思わない。ゆえに、イザベラ...
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25-1-3:兵器たることの証左

 海域は夜の静寂に沈んでいた。続いていた暴風雪も嘘のように|鎮《しず》まり、月のない空は|燦然《さんぜん》たる様相を呈していた。その星たちの輝きが水鏡のごとき海面に落ち、|幽《かす》かに揺らぎながら瞬いていた。  その美麗な風景の中...
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25-1-2:迷える者、迷わざる者

 もはや思い悩む|段階《フェイズ》ではない。|理解《わか》っている。だけど。  マリアのいない|艦橋《ブリッジ》で、レベッカは思考に沈む。  本当にこれで良かったのだろうか。これが|採《と》り得る最良の選択肢だったのだろうか。...
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25-1-1:宣告

 マリアの指示により、シミュレータルームからは|C級歌姫《クワイア》たちの姿が消えた。事情の説明は後回しにして、とにかく自艦に向かわせたのだ。|C級歌姫《クワイア》たちもイザベラのニュースにすぐに気付いたため、大いに動揺を見せはしたものの...
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24-2-3:こんな道を、こんな運命を

 レベッカは統合首都にて、静かに《《その時》》を待っていた。ガラスの向こうのシミュレータルームには黒い棺のようなシミュレータの筐体がいくつも鎮座している。その中ではマリオンやレオノールたち、新人|歌姫《セイレーン》たちが模擬戦での訓練を行...
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