本文-ヴェーラ編3

歌姫は背明の海に

24-2-1:ゲテモノ

 レネ・グリーグが操る戦艦ヒュペルノルと合流した第一艦隊は、アーシュオンの三個艦隊と正対していた。イザベラはセイレネスで索敵を行って、眉根を寄せた。 「空母がいない?」  いつもなら輪形陣の中央に旗艦である航空母艦がいる。 ...
歌姫は背明の海に

24-1-2:クロフォードの自嘲

 第七艦隊旗艦、航空母艦ヘスティアの提督席にて、クロフォードは小さく唸る。ヘスティアの展開する隠蔽システムの傘の下に入るため、艦隊はぎっしりとひしめきあっている。ヘスティアの隣には、青い最新鋭艦、|制海掃討駆逐艦《バスターデストロイヤー》...
歌姫は背明の海に

24-1-1:運命の出撃

 二〇九八年十一月末――。  アーシュオンは驚くべき作戦を展開した。アーシュオン本土を縦断するように、巨大なトンネルを造ったのだ。そのトンネル「ムリアスの道」は、艦隊が悠々通過出来るほどの巨大なものだった。北部への陽動攻撃に目を|眩...
歌姫は背明の海に

23-2-3:二人と、四人

 それから三日後。  エディタは暗いセイレネスシミュレータの筐体に乗り込むと、大きく息を吐いた。エディタが部屋に着いた時には既に五基のシミュレータが使用中となっていた。招集した全員が既にログインしているのだとわかった。 「ログ...
歌姫は背明の海に

23-2-2:私たちはもう、とっくにどっちも正気じゃないわ。

 そこまでして、命を捨ててまでして、いったい何が得られるというのですか――エディタが掠れた低い声で尋ねる。イザベラは髪を後ろに払った。 「何も」「それではっ!」  エディタは腰を浮かせる。 「ディーヴァを失えば、ヤーグベ...
歌姫は背明の海に

23-2-1:わたしは反乱する

 二〇九八年、十一月も間もなく終わる頃――。ヤーグベルテ統合首都の秋は足早に過ぎ去り、間もなく初雪が観測されるだろうとの予報が出ていた。例年通りだった。すでにコートなしでの外出は厳しい。  その日、オリオン座が雲一つ無い南天に輝いて...
歌姫は背明の海に

23-1-1:ARMIAの振り子

 床も、壁も、天井も、ない。色もない――黒や白の感覚もない。上下左右の概念すら消失してしまっているこの場所は、果たして「空間」と呼べるものなのだろうか。それすら判然としない。ただ《《音》》だけがある。意識を水のように満たしていく、そんな《...
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22-2-1:カオス⇔システム

 バルムンクの創り出した闇の中から、アトラク=ナクアは「あらあら」と戸惑うカティを眺めていた。アトラク=ナクアの傍らにはツァトゥグァが、そしてそこから少し離れたところにジョルジュ・ベルリオーズが立っていた。 「思い通りに事態は動いて...
歌姫は背明の海に

22-1-4:アタシが……!?

 無事に着艦を済ませ、艦上に降り立った時の疲労感は、今まで感じたことのないほどのものだった。水の中にでもいるのではないかというくらいに身体が重く、風音も人の声も、全てが|歪《ひず》んで聞こえた。今すぐベッドに倒れ込みたいくらいに、脳が疲弊...
歌姫は背明の海に

22-1-3:救い無き、狂哭

 この、一方的な力が、セイレネス!?  カティの一撃で空域が焼け焦げた。それを目にした瞬間に、カティは寒気を覚えた。その空域には|薄緑色《オーロラグリーン》のセイレネスの|残滓《ざんし》があった。  粉砕された戦闘機の残骸が、...
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