本文-ヴェーラ編3

歌姫は背明の海に

20-1-1:平衡天秤

 システム・バルムンクの創り出した闇の中に、ジョルジュ・ベルリオーズと黒髪の少女――|ARMIA《アーミア》が浮かんでいる。ARMIAはつらそうに顔を歪め、しかしその目はベルリオーズから|逸《そ》らされない。 「良い見世物になりそう...
歌姫は背明の海に

19-2-5:遠くない未来に――

 マリオンによるその圧倒的の一言に尽きる一撃、タワー・オブ・バベルは、アーシュオンの艦隊を文字通りに潰滅せしめた。セイレネスの能力を持たない人間には、何が起きたのか理解することはできなかった。  海が割れ、空が壊れ――その天変地異の...
歌姫は背明の海に

19-2-4:マリオンの初陣

 正規空母を二隻!?  指定攻撃目標を確認して、マリオンは絶句する。シミュレータでも単艦撃沈はしたことがある。だが、二隻を同一の戦場で仕留めたことはなかった。正規空母は艦隊旗艦級であり、それゆえに恐ろしく堅牢だ。|対セイレネス・シス...
歌姫は背明の海に

19-2-3:責任の所在

 正規空母が四、駆逐艦が十八、フリゲートが四十……それが敵の総戦力か。  レベッカはセイレネスを通じて、敵艦隊を完全に掌握する。艦隊は広く散開している。しかしどういうわけか、ナイアーラトテップの気配はどこにもない。ナイトゴーントが出...
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19-2-2:オーダード・インターセプション

 その一時間後には、レベッカの姿は|制海掃討駆逐艦《バスターデストロイヤー》の|艦橋《ブリッジ》にあった。戦艦や空母のそれとは違い、|艦橋《ブリッジ》の造りは驚くほどコンパクトだった。レベッカの戦艦・ウラニアは|艦橋《ブリッジ》|要員《ク...
歌姫は背明の海に

19-2-1:言葉にしないと、伝わらないよ

 卒業式から二週間が経過した頃、二〇九八年十月の半ば――。  ヤーグベルテ第二艦隊グルヴェイグは、訓練航海の帰路にあった。訓練とは言うものの、ベテランの|歌姫《セイレーン》たちをして「実戦のほうがまだ幾らかは楽」と言わせしむるほどに...
歌姫は背明の海に

19-1-1:卒業パーティにて

 二〇九八年九月末日、士官学校の卒業式が執り行われた。|D級歌姫《ディーヴァ》――表向きは|S級《ソリスト》――が二名、|V級《ヴォーカリスト》が一名、|C級《クワイア》が七十八名という構成だった。  |D級歌姫《ディーヴァ》である...
歌姫は背明の海に

18-1-2:平和な夜

 しばらくの沈黙の末、レベッカは絞り出すような口調で言った。 「イズー。私にはあなたの決意をどうしたら覆すことができるのか、全然わからない。けれどね、もう、あなただけに背負わせるのは嫌なのよ」「きみは今までのことを思い悩む必要はない...
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18-1-1:捨て去る勇気

 イザベラの宣言が、レベッカとマリアの頭の中を跳ね回る。  遠くない未来に、わたしは反乱する――。 「な、何を言ってるの」「酔っているのですか、姉様」  レベッカとマリアはほとんど同じ反応を見せた。イザベラは「ふふ……」...
歌姫は背明の海に

17-3-2:わたしはここに宣言する

 それからしばらく、ただ沈黙の時間が過ぎた。イザベラが最後に言葉を発してから、三十分近くが経過した頃になってようやく、イザベラが腕組みを解いた。 「ところでさ、新人|D級《ディーヴァ》の二人は元気にやってるのかな?」「え、ええ。そう...
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