歌姫は背明の海に

歌姫は背明の海に

01-2-1:葬儀にて響く銃声

 二〇九一年一月三十一日――。  エディット・ルフェーブルの葬儀は、実に小規模に行われた。一応は軍による公式の葬儀であったから、参列者自体は数百名を数えた。だが彼らのほとんどは、一通りの儀式が終わると同時に潮が引くようにいなくなって...
歌姫は背明の海に

01-1-2:推測と直感

 リビュエ艦内に響き続ける分厚い重低音。それは当たり前のように常に存在し続けていて、だから普段は全く意識すらしない。だが、今はそれが酷く耳につく。ノイズだった。この|艦《ふね》にいる間は、決して逃れられない、悪意のないノイズだ。  ...
歌姫は背明の海に

01-1-1:報せ

 着艦直後に入ってきた情報に、カティは我が耳を疑った。真紅の愛機から飛び降りて、走りながら艦内通信用のヘッドセットを装着する。 「姉さ……じゃない、ルフェーブル大佐が暗殺だって? それは本当なのか。確度は」『間違いありません。参謀本...
歌姫は背明の海に

00-0-1:新雪を染める

 エディット! エディットはどうしちゃったの!?  わたしは叫んだ。ベッキーがわたしをきつく抱きしめる。階段の下に横たわるエディット。新雪が赤く染まっている。迎えの車に乗っていたジョンソンさんが飛び出してきて、エディットを物陰に引き...
タイトルとURLをコピーしました