歌姫は背明の海に 04-2-3:進級と試練 二〇九三年十月――エディタたちは揃って歌姫養成科のニ年へと進級した。それはつまり、エディタたちに後輩ができたということでもある。そのことは彼女たちを少なからず浮足立たせた。 しかし、大方の予測に反し、第二期生の中には|V級《ヴォ... 2023.07.08 歌姫は背明の海に本文-ヴェーラ編3
歌姫は背明の海に 04-2-2:ペンデュラム 硬直してしまったエディタを見て、ヴェーラは温度の低い微笑を顔に貼り付ける。 「ま、冗談はおいておくとして」「趣味悪いわよ」 レベッカはブランデーのボトルを死守しながら抗議する。ヴェーラは面倒くさそうに右手をひらひらと振って... 2023.07.02 歌姫は背明の海に本文-ヴェーラ編3
歌姫は背明の海に 04-2-1:病めるものたち それから一週間後、十月になろうかという頃――。 エディタはヴェーラの自宅――つまりエディット・ルフェーブルの邸宅であった場所だが――へと招待された。訓練を終えて寮に帰って一息ついた頃、突然電話で呼び出されたのである。 「す... 2023.07.01 歌姫は背明の海に本文-ヴェーラ編3
歌姫は背明の海に 04-1-3:ブルクハルトの危惧 ふと、エディタは視線に気が付く。モニタルーム内にいるブルクハルトがエディタを見ていた。ブルクハルトは小さく右手をあげて、「こっちにおいで」とジェスチャーでエディタを呼ぶ。 「失礼します」 エディタはおずおずとモニタルームの... 2023.06.25 歌姫は背明の海に本文-ヴェーラ編3
歌姫は背明の海に 04-1-2:ハーディとの対話 はたと気付けば、エディタの意識は暗いシミュレータの筐体の中に戻ってきていた。擦過音と共に天蓋が開くと、そこにトリーネの心配そうな顔が覗いた。 「だいじょうぶ?」「ああ、多分……。私、どのくらいこうしてた?」「一分くらい? たいした... 2023.06.24 歌姫は背明の海に本文-ヴェーラ編3
歌姫は背明の海に 04-1-1:深淵を覗く時…… 巡洋戦艦デメテルの進水から四ヶ月後、二〇九三年九月――。 エディタたち四名の|V級《ヴォーカリスト》歌姫たちは、それぞれシミュレータを経由して最前線の戦いの様子を見つめていた。 四人が見ているのは通常の艦対艦の戦闘ではな... 2023.06.18 歌姫は背明の海に本文-ヴェーラ編3
歌姫は背明の海に 03-1-3:ロジカル・レイヤー ヴェーラはほとんど真っ暗なコア連結室の中で、シートに背中を預けたまま、腕を組んだ。 「イスランシオ大佐とのコミュニケーションが成立した……!」 その事実は、戦闘をモニタリングしているブルクハルト中佐やハーディ中佐も認識した... 2023.06.17 歌姫は背明の海に本文-ヴェーラ編3
歌姫は背明の海に 03-1-2:イスランシオとの対峙 二〇九三年五月、巡洋戦艦デメテルが進水して一週間後、薄暮の頃――。 「まったく! 次から次からぁっ!」 ヴェーラは数隻の防空駆逐艦、およびボレアス飛行隊を率いて、対空戦闘を繰り広げていた。数十機ものナイトゴーントが近海域に... 2023.06.11 歌姫は背明の海に本文-ヴェーラ編3
歌姫は背明の海に 03-1-1:巡洋戦艦デメテル 二〇九三年四月末――ヤーグベルテ統合首都では、気の早い桜が開花し始める頃である。 ヴェーラは仏頂面で、眼下に佇む新型巡洋戦艦デメテルを睨んでいた。ヴェーラのいる司令室からは、広大な秘匿ドックが一望できる。このドックは貫通爆弾です... 2023.06.10 歌姫は背明の海に本文-ヴェーラ編3
歌姫は背明の海に 02-3-2:提督と女帝 参謀部の車から、転げるようにして飛び出してきたのはヴェーラだった。|門扉《もんぴ》のセキュリティが解除されるなり、ヴェーラはカティに飛びついた。レベッカは運転手のプルースト中尉に礼を言ってから、落ち着いた様子で降りて……滑って転びそうに... 2023.06.04 歌姫は背明の海に本文-ヴェーラ編3