本文-静心 #01-01: セイレネス・ロンド 二〇八八年六月十二日、現地時間・午前五時――。 四隻の駆逐艦を随伴しているのは、二隻の超巨大戦艦——その全長は航空母艦の二倍にも達する。白銀に輝く流線型の艦体は、未だこの世に現れたことのないフォルムだった。補給と戦艦のシステムチ... 2021.06.30 本文-静心静心にて、花の散るらむ
本文-静心 #01-02: 二年後――二〇九〇年八月 ええと……これは、つまり? 完全に、迷子になっちゃったってこと……なのかな? ゲートの開場を待ちわびる人々の|喧騒《ノイズ》の中で、私は一人途方に暮れている。 未だ蒸し暑いコンサート会場前広場。見たことがないくらいに広... 2021.06.30 本文-静心静心にて、花の散るらむ
本文-静心 #01-03: 私たちは、再会の約束をしたんだ ヴェーラ・グリエール。そして、レベッカ・アーメリング。どちらも一個艦隊の司令官。そして同時に、国家的アイドル。二人が同じライヴに顔を出すことはまず滅多にない。なぜなら今のヤーグベルテの安全は、この二人によって守られているから。二人のどち... 2021.06.30 本文-静心静心にて、花の散るらむ
本文-静心 #02-01: 五年後――私たちは士官学校にて再会する わあああああああああああああああっ! ――と、実際に叫んだかどうかはともかく、私は力の限りを尽くして起き上がった。あやうく上のベッドに頭をぶつける勢いだ。 「あっぶな……」 胸を撫で下ろして、胸の中から空気を追い出... 2021.07.01 本文-静心静心にて、花の散るらむ
本文-静心 #02-02: 第二艦隊による蹂躙 思わず息が止まる私たち。アルマは|携帯端末《モバイル》を開いていたので、すぐにその内容が空中に表示された。どうやら《《あのニュース》》ではなさそうだとわかり、少しだけ安心して自分の|携帯端末《モバイル》を確認した。 「また戦闘……... 2021.07.01 本文-静心静心にて、花の散るらむ
本文-静心 #02-03: 初雪の溶けゆく空に、暗澹たる気持ちを雪ぐ 士官学校入学から二ヶ月と少し。暦は十二月に入っている。この士官学校のある統合首都は冬が早い。湿気で曇ったガラス張りの天井に、ぽつぽつと落ちては消えていくのは、もしかしたら初雪かもしれない。 私は士官学校の寮の最上階に備え付けられ... 2021.07.02 本文-静心静心にて、花の散るらむ
本文-静心 #02-04: 世界平和のために。 解錠と同時に、ドアがスライドする。僅かな機械駆動音、具体的には|A《ラ》の音と共に開く。故意にそうしたわけではないのだろうけれど、440|Hz《ヘルツ》から442Hzに上がりきった所で完全にドアが開くというのは、毎度のことながら少し面白... 2021.07.02 本文-静心静心にて、花の散るらむ
本文-静心 #03-01: ディーヴァの夢は醒めゆく レベッカの鉄壁の防御、エディタたちの熾烈な攻撃。それがいつもの戦い方のはずだ。だけど、今は艦隊の防御は丸裸も同然だ。 現地時刻は午前八時。夜もすっかり明けきった大海原で、レベッカの第二艦隊約五十隻が、太陽目掛けて突っ込んでいく。... 2021.07.02 本文-静心静心にて、花の散るらむ
本文-静心 #03-02: 私たちは十字架を引き継ぐことを決めた あの衝撃的な戦闘は、当然のように猛烈な批判に晒されたのだが、第二艦隊の上部組織である参謀部第六課は沈黙を守り続けた。大炎上するかと思いきや、一週間、二週間と|経《た》つに連れ、ネットもまた沈黙し、マスメディアも何も語らなくなってしまう。... 2021.07.02 本文-静心静心にて、花の散るらむ
本文-静心 #03-03: イザベラ・ネーミアの宣言 それからというもの、レオンと私は、空いている時間はいつも一緒に過ごすようになっていた。私はどこにいても常にレオンを探していたし、レオンはいつでもすぐ|傍《そば》にいてくれた。アルマには悪いと思う。けど、アルマはアルマで、やっぱり朝になる... 2021.07.02 本文-静心静心にて、花の散るらむ