小説

本文-ヴェーラ編1

02-1-3:わたしを呪って死んで欲しい

↑previous ヤーグベルテ統合首都における十月といえば、もはや「寒い」と言っても差し支えのない季節だ。晩秋というよりも初冬である。そんな中、上級高等部に進んだ士官候補生たちはジャージ姿でグラウンドを走らされる……のだが、ヴェーラとレベ...
本文-ヴェーラ編1

02-1-2:わたしの物語の主人公

↑previous 二〇八二年十月に、ヴェーラたちは揃って士官学校上級高等部へと進むこととなった。上級高等部は大学に相当しており、順当にいけば四年で卒業し、少尉として軍に配属されることとなっている。士官学校高等部から上級高等部へ進むには選抜...
本文-ヴェーラ編1

02-1-1:ランチタイムトーク~確定的な未来について。

↑previous あれからもう四ヶ月、か。 カティは無表情のまま、日替わり定食を口に運ぶ。美味しいとか美味しくないとかいう感想は特にない。素材が変わっただけでいつもの味付け、代わり映えのない食事――それこそカティのニーズだった。朝食は豆パ...
本文-ヴェーラ編1

01-2-7:観測者

↑previous なるほどね――。 《《女》》と思しきものの声が、カティたちの背中を見送っている。誰にも観測されることのない、《《銀》》の揺らぎがそこにあった。「|歌姫計画《セイレネス・シーケンス》とは、全く大袈裟な命名だこと。終わらない...
本文-ヴェーラ編1

01-2-6:それは悪い涙じゃないから

↑previous カティが覚えていたことはほんのわずかで、言葉にすることができたのは更にその何分の一かだった。しかし、ヴェーラもレベッカも鋭く影のある表情でカティを見つめていた。「ヴァシリー……」 ヴェーラは唇を噛み締めている。ヴェーラは...
本文-ヴェーラ編1

01-2-5:殺戮の儀式

↑previous その夜、カティはあまり眠れなかった。ようやく睡魔がやってきたのはほとんど日の出の頃――漁師たちが家を出る時分だった。「あれ?」 なんか階下が騒がしい。カティは思わず肩を抱く。大きな震えが身体を貫いていく。「なんだろう」 ...
本文-ヴェーラ編1

01-2-4:敵国人との交流

↑previous カティたちの警戒心が氷解するのには、三日とかからなかった。カティに至っては、兄をさしおいて一人で様子を見に行くことさえあった。その頃には、ヴァシリーはカティにとっては「いい人」であり、敵国人であるということすら忘れていた...
本文-ヴェーラ編1

01-2-3:十年前の記憶

↑previous 約十年前、二〇七一年の晴れた夏の日のことだ。 ヤーグベルテ南部にある小さな漁村、アイギス村の周囲には文字通り何もなかった。大きな道路もなく、公共交通機関も名目上存在するだけだった。村で購入した輸送ヘリが、生活必需品の類の...
本文-ヴェーラ編1

01-2-2:見えてしまった過去

↑previous 行こうか――と、三人は連れ立って歩く。カティはヴェーラたちがどこに住んでいるのかを知らない。少なくともカティの住む寮ではないこと以外は。 カティの右手をそっと握りながら、ヴェーラがポツリと言った。「カティは……血を流して...
本文-ヴェーラ編1

01-2-1:焦げ付いた記憶

↑previous カティは講義室の前の方で講義のサマライズをしているヴェーラとレベッカに視線を送りつつ、|携帯端末《モバイル》で空軍配信の動画を眺めていた。今日更新されたばかりのものだったが、実際のところは五年前に作られた動画の焼き直しだ...