小説

本文-静心

#04-03: 夏の休暇の頃

 あと一ヶ月で二年生になる。学業と訓練以外に、戦闘補助のタスクも増えた。補助といっても、事後処理の方だ。レニーのように戦場に遠隔で帯同するようなタスクは未だ与えられていない。レニーが支援している現場や、作戦指揮中の参謀部第六課を見学したり...
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#04-02: 女帝の右腕・エリオット中佐とのダイアログ

 十九時ちょうどに始まった特別講座には、案の定メラルティン大佐は現れなかった。会場のセイレネス・シミュレータルームに姿を見せたのは、エウロス一の|優男《やさおとこ》と呼ばれる――と、アルマが教えてくれた――エリオット中佐だった。ナルキッソ...
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#04-01: セルフィッシュ・スタンド回収事件

 五月の上旬――桜は咲くや否や散った。  窓から外を見ていたレオン――寝る時以外は、当然のように部屋に居座っている――は、柔らかな春の青空を見上げ、次に視線を地面の方へと向けた。そうしてから、レオンは窓に背を向けて、私からコーヒー入...
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#03-07: 深い淵に隠した歌

 もう一回お願い――私はそう言っていた。アルマは何も言わずにまたその幸せそうな映像を再生してくれる。やっぱり、それはヴェーラによるプライベートライヴだ。そして私たちは例外なくこの歌を知っているし、当たり前のように歌うことができる。 ...
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#03-06: 参謀部第六課の会見

 イザベラ・ネーミア提督の処女戦では、|超兵器《オーパーツ》・ナイアーラトテップ|M《量産》型十五隻および新型ナイアーラトテップ、そして三個艦隊を殲滅したという「超」がつくほどの大戦果を上げた。もっとも、新型ナイアーラトテップは自爆兵器で...
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#03-05: イザベラの処女戦

 四月にはなったけど、桜はまだ咲く気配もない。私の施設があったところでは、とっくに散ってしまっている頃合いだというのに。ヤーグベルテの国土はなるほど広大だなと思わされる。そして今、正午をまわった頃。イザベラ・ネーミア提督による処女戦が始ま...
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#03-04: 西風に。

 大講堂からの帰り道、レニーは用事があるということで、そのままどこかへ行ってしまった。アルマとレオン、そして私は何となく部屋に戻る。440Hzで開く扉は、やっぱり442Hzで開ききる。閉じる時も同じだ。 「もー、さすがに嫉妬する!」...
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#03-03: イザベラ・ネーミアの宣言

 それからというもの、レオンと私は、空いている時間はいつも一緒に過ごすようになっていた。私はどこにいても常にレオンを探していたし、レオンはいつでもすぐ|傍《そば》にいてくれた。アルマには悪いと思う。けど、アルマはアルマで、やっぱり朝になる...
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#03-02: 私たちは十字架を引き継ぐことを決めた

 あの衝撃的な戦闘は、当然のように猛烈な批判に晒されたのだが、第二艦隊の上部組織である参謀部第六課は沈黙を守り続けた。大炎上するかと思いきや、一週間、二週間と|経《た》つに連れ、ネットもまた沈黙し、マスメディアも何も語らなくなってしまう。...
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#03-01: ディーヴァの夢は醒めゆく

 レベッカの鉄壁の防御、エディタたちの熾烈な攻撃。それがいつもの戦い方のはずだ。だけど、今は艦隊の防御は丸裸も同然だ。  現地時刻は午前八時。夜もすっかり明けきった大海原で、レベッカの第二艦隊約五十隻が、太陽目掛けて突っ込んでいく。...
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