小説

本文-静心

#03-02: 私たちは十字架を引き継ぐことを決めた

 あの衝撃的な戦闘は、当然のように猛烈な批判に晒されたのだが、第二艦隊の上部組織である参謀部第六課は沈黙を守り続けた。大炎上するかと思いきや、一週間、二週間と|経《た》つに連れ、ネットもまた沈黙し、マスメディアも何も語らなくなってしまう。...
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#03-01: ディーヴァの夢は醒めゆく

 レベッカの鉄壁の防御、エディタたちの熾烈な攻撃。それがいつもの戦い方のはずだ。だけど、今は艦隊の防御は丸裸も同然だ。  現地時刻は午前八時。夜もすっかり明けきった大海原で、レベッカの第二艦隊約五十隻が、太陽目掛けて突っ込んでいく。...
本文-静心

#02-04: 世界平和のために。

 解錠と同時に、ドアがスライドする。僅かな機械駆動音、具体的には|A《ラ》の音と共に開く。故意にそうしたわけではないのだろうけれど、440|Hz《ヘルツ》から442Hzに上がりきった所で完全にドアが開くというのは、毎度のことながら少し面白...
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#02-03: 初雪の溶けゆく空に、暗澹たる気持ちを雪ぐ

 士官学校入学から二ヶ月と少し。暦は十二月に入っている。この士官学校のある統合首都は冬が早い。湿気で曇ったガラス張りの天井に、ぽつぽつと落ちては消えていくのは、もしかしたら初雪かもしれない。  私は士官学校の寮の最上階に備え付けられ...
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#02-02: 第二艦隊による蹂躙

 思わず息が止まる私たち。アルマは|携帯端末《モバイル》を開いていたので、すぐにその内容が空中に表示された。どうやら《《あのニュース》》ではなさそうだとわかり、少しだけ安心して自分の|携帯端末《モバイル》を確認した。 「また戦闘……...
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#02-01: 五年後――私たちは士官学校にて再会する

 わあああああああああああああああっ!  ――と、実際に叫んだかどうかはともかく、私は力の限りを尽くして起き上がった。あやうく上のベッドに頭をぶつける勢いだ。 「あっぶな……」  胸を撫で下ろして、胸の中から空気を追い出...
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#01-03: 私たちは、再会の約束をしたんだ

 ヴェーラ・グリエール。そして、レベッカ・アーメリング。どちらも一個艦隊の司令官。そして同時に、国家的アイドル。二人が同じライヴに顔を出すことはまず滅多にない。なぜなら今のヤーグベルテの安全は、この二人によって守られているから。二人のどち...
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#01-02: 二年後――二〇九〇年八月

 ええと……これは、つまり?  完全に、迷子になっちゃったってこと……なのかな?  ゲートの開場を待ちわびる人々の|喧騒《ノイズ》の中で、私は一人途方に暮れている。  未だ蒸し暑いコンサート会場前広場。見たことがないくらいに広...
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#01-01: セイレネス・ロンド

 二〇八八年六月十二日、現地時間・午前五時――。  四隻の駆逐艦を随伴しているのは、二隻の超巨大戦艦——その全長は航空母艦の二倍にも達する。白銀に輝く流線型の艦体は、未だこの世に現れたことのないフォルムだった。補給と戦艦のシステムチ...
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