小説

歌姫は背明の海に

17-2-1:ひずむ音

二〇九八年五月――。 ヤーグベルテ三隻目の戦艦となるヒュペルノルが進水した。ヒュペルノルは唯一の|S《ソリスト》級歌姫、レネ・グリーグの専用戦闘艦である。 このハードウェアの追加により、イザベラ・ネーミア率いる第一艦隊は戦艦を二隻保有するこ...
歌姫は背明の海に

17-1-1:ブラインドネス

年が明け、カレンダーが二〇九八年に切り替わった頃――。 アーマイア・ローゼンストックは、バルムンクの作り出した闇の中に|在《あ》った。じっと佇んでいるアーマイアの視線の先にいるのは、ジョルジュ・ベルリオーズだった。ベルリオーズは後ろで手を組...
歌姫は背明の海に

16-2-2:an end

そこは頭が痛くなるほどに、真っ白な空間だった。イスランシオは目眩を覚えて額に手をやった。何度訪れても慣れることのできなかったその空間で、イスランシオは《《それ》》を待っていた。 あらあら――。 《《銀》》の炎のようなものがそこに現れる。それ...
歌姫は背明の海に

16-2-1:世界を終わらせる手段

カティの真紅の機体――スキュラが、薄緑色に輝く|F108+IS《インターセプタ》と正対する。双方の多弾頭ミサイルが彼我の中央で|相殺《そうさい》される。二機は生じた爆炎を貫き、なおも追いすがってくる小型ミサイルから逃げる。双方ともにミサイル...
歌姫は背明の海に

16-1-2:レネの剣舞

その翌日には、|S《ソリスト》級|歌姫《セイレーン》、レネ・グリーグが第一艦隊に配属された。|V級《ヴォーカリスト》の二人、パトリシア・ルクレルクはレネとの艦船共用の都合で第一艦隊、ロラ・ロレンソは第二艦隊へと配備されることとなった。 秋の...
歌姫は背明の海に

16-1-1:二度目がないと思っている?

あの戦いで受けた被害は甚大――その一言に尽きた。クロフォードが育て上げた虎の子の第七艦隊は事実上潰滅させられ、バーザック提督以下第八艦隊は文字通り全滅した。その結果、ヤーグベルテ海軍は第一、第二艦隊を除いては完全に機能不全に陥ってしまった。...
歌姫は背明の海に

15-2-5:コーラスワーク

レベッカ率いる第二艦隊が、セイレネスの射程内に暗礁海域を捉えた時にはすでに、友軍艦隊は壊滅状態に陥っていた。駆逐艦の幾らかは未だ健在ではあったが、海域には軽巡以上の艦艇の姿はない。旗艦ウラニアの|舳先《へさき》に意識を泳がせながら、レベッカ...
歌姫は背明の海に

15-2-4:殲滅の歌

アーシュオンの狙いは、第七艦隊《《そのもの》》だった。 クロフォードはようやくそのことに気が付いた。つまりバーザック提督が率いている艦隊を包囲している二個艦隊こそが敵の本隊であって、ヘスティアを追っていた二個艦隊は単なる囮――つまるところ時...
歌姫は背明の海に

15-2-3:碧く光る海

バーザック提督率いる第八・第七連合艦隊は大いに奮戦していた。暗礁地帯で巧みな艦隊運動を見せつつ、着実に時間を稼いでいる。その堅実にして堅牢な戦いぶりには、さすがのクロフォードも舌を巻いた。だが、それでも空襲や艦対艦ミサイルの前に、その戦力を...
歌姫は背明の海に

15-2-2:軋轢という名のもの。

それから約五十時間が経過した。クロフォードの搭乗する第七艦隊旗艦ヘスティアは、ノトス飛行隊の支援を受けつつ対空戦闘に突入していた。航空機で足止めしておいて、真打ちの|M《量産》型ナイアーラトテップで仕留めにかかるつもりであることは明白だった...