19. エディット・ルフェーブル

キャラクター紹介(絵なし) 人物-セイレネス・ロンド
キャラクター紹介

「セイレネス・ロンド」に於ける最重要人物の一人。2084年の士官学校襲撃事件以後の、ヴェーラレベッカ、そしてカティの法的な保護者である。三人の精神的成長に一役も二役も買っている。また「歌姫計画セイレネス・シーケンス」の責任者でもある。

かつて陸軍に所属していた際に、焼夷弾(というが、おそらくナパーム弾の一種)にやられ、全身、特に顔面に大火傷を負った(おそらく2073~74年)。両目もその時に喪失してしまっており、それ以来高性能義眼になっている。顔面以外は再建したが(この時代、再生医療は極めて一般的である)、顔だけはエディット自身の希望もあってほぼそのままとなっており、見る人全てに強烈なインパクトを与えている。なお、顔面喪失以前のエディットは自他共に認める美女であった。

エディット・ルフェーブル
エディット・ルフェーブル

退院後、一度は軍を辞めたものの、どういう縁があったかは不明だが参謀部にスカウトされ、瞬く間に作戦参謀としての頭角を表した。彼女は実務はもちろん、政治力にも優れていた。

アーシュオンとの戦闘では常に劣勢に立たされるヤーグベルテの部隊を「いかに効率よく撤退させるか」のみに注力して作戦指揮を行うエディットは、当初こそ「異端」「意気地がない」「利敵行為」などというネガティヴな評価をされたものの、効率的かつ無駄のない撤退戦指揮は最前線の兵士達に大いに支持されることとなった。

そしてついた渾名が「逃がし屋」「アンドレアルフスの指先」といったもので、この呼称はあっという間に国民の間でも広まった。エディットの指揮の優れたところは、無駄・犠牲の少ない撤退だけではなく、撤退の後の強烈苛烈な逆襲にあった。「撤退したと見せかけて一撃浴びせて更に逃げる」などというような戦い方を得意とするのである。撤退を強いられる前線兵士たちにとっても面目躍如の機会を得られることとなり、否応無しに戦意高揚の効果があったと言われている。

圧倒的不利な戦況、敵に包囲網を敷かれた状態――そういった絶望的な状況でも、エディットが「現時刻をもって作戦指揮を第六課が引き継いだ!」と通達すれば前線部隊の士気も大いに上がった。絶望的戦況に於ける救世主として、エディットは愛されていた。そしてその際には彼女の痛々しいまでの顔の火傷痕が役に立った。

エディットは無類の酒好きであり、成人したカティとはよくワインやビール、あるいはブランデーやウィスキー(などつまりアルコールであればなんでも)を飲んでいた。その際にはカティがおつまみ(アヒージョとか)を作るというのが定番だった。カティは実は料理が上手いのだ。

また、先述の通り彼女の目は高性能義眼であり、暗視装置や望遠機能もついたものとなっており、生身のそれよりも圧倒的に優れている。だが、まばたきを忘れてしまうと義眼の表面が乾き、エディットいわく「不気味」に見えるようになってしまう。まばたきは生身とは違い、意識しなければ行えなくなっているため、エディットは度々「怖い目」をする。

ヴェーラたちとの同居生活において、ヴェーラとは度々真正面から激突しているが、それもこれもエディットの愛情、想いゆえである――ということは、聡明なヴェーラもよく理解してはいた。が、二人の思いはとても強く、そして微妙に方向性が異なっていたために、避けられない衝突だったと言える。ヴェーラとエディットは絶交状態になったこともあるが、それでも常にお互いにお互いを気にしていた。またそうなった場合にも、大抵がエディット側が歩み寄っていた――「セイレネス・ロンド」において、彼女は理想の大人像なのである。しかし、それでもエディットなりに深く苦悩し、あるいは意気消沈することも多かったようだ。そういう時にエディットが本音を吐露してもよいと思える相手となっていった、急速に成長していったのが、一番先にエディットの庇護下を離れることとなったカティであった。

エディットの事実上の夫(かつては恋人で、その後別れたものの、親友としての親交が続いていた)として、アンドレアス・フェーンなる人物がいたのだが、2084年の士官学校襲撃事件にて壮絶な戦死を遂げており、そのことは彼女にとって大きなショックだったようだ。その心に空いた巨大な穴をヴェーラたちが埋めていたとも言える。エディットもヴェーラも、いわば共依存の状態にあったと言っても良いのかもしれない。

一方でカティはエウロス飛行隊に入隊した後も度々エディット邸に帰ってきては、エディットと話し込んでいたりする。カティの人間性を飛躍的に成長させたのは、誰あろう、このエディットである。エディットはカティに自分のことを「姉さん」と呼ぶように命じ、カティもいつの間にか自然と「姉さん」と呼ぶようになっていた。「空の女帝」と呼ばれるようになってからも、カティはエディットを「姉さん」と呼んで慕っている。そういう意味ではエディットは最強なのかもしれない。

なお、カティとは2071年の時点で一度遭遇している。カティが住んでいた村・アイギスがヴァシリー・ジュバイル率いるアーシュオンの特殊部隊によって(カティを除いて)全員が虐殺された事件の際に村に駆けつけたのが、エディットたちの所属する部隊だった。エディットは当時8歳だったカティを抱きしめて涙を流していたと、カティはおぼろげに記憶している。なお、アイギス村の虐殺事件については、マリオンも知っていた。

エディットはオンタイムとオフタイムもきっちりと使い分ける。たとえば職務中にあっては、ヴェーラのことを「グリエール」と呼び、口調も「だ・である」が基本。しかし、オフタイムではヴェーラのことは「ヴェーラ」と呼ぶし、口調も柔らかいものに変わる。考え方も本音と建前をはっきり区別しており、時としてカティには本音を吐露することもあった。

部下たちからも強く信頼されており、こと、腹心であるアレキサンドラ・ハーディとは恐ろしく息のあった仕事をしていた。また、職務中に本音を吐き出す唯一の相手が、このハーディだった。狙撃手だったハーディの有能さをいち早く見抜いて、自分の副官として採用したのもエディットの慧眼だったと言える。出会いに関しては不明だが、ハーディもエディットのことを誰よりも信頼していたのは間違いがない。

だがしかし、2091年1月。エディットが(政治の都合で)軍を辞めるとヴェーラたちに伝えたその直後に、彼女は凶弾にたおれることとなる。これが7年間のヴェーラたちとの共同生活の終焉であった。そして、このことがヴェーラたちの心の引き金を引いてしまったのは間違いがない。この「静心にて、花の散るらむ」に至る最後の引き金を引いてしまったのは、この事件なのである。

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