アーシュオンの誇る自律機動自爆兵器。歴史上初めて登場したのは、2084年の「八都市空襲」。この時の被害によって、マリオンやアルマ、レニーたちが戦災孤児となった。若い歌姫や兵士たちの戦意は、この「八都市空襲」のトラウマの裏返しとも言える。
ISMTは「インスマウス」と呼ばれる。「インスマス」と呼ぶ人もいるが、「セイレネス・ロンド」世界では「インスマウス」という記述に統一してある。
外観的には「超大型爆撃機」であるが、ガンシップのような運用をされている。また、シベリウスは、機体のあらゆるところから放たれる火線をして「光るウニ」という表現をしている。ただ上空を通過するだけであらゆる障害が粉砕されるという恐るべき火力を有する無人爆撃機――というだけならまだ対処のしようもあったが、このISMTには攻撃が通用しない。四風飛行隊のノトス飛行隊60機の全力攻撃を受けてですら、びくともしなかったという恐るべき防御性能を有している。
それもそのはずで、このISMTは他の超兵器と同様にセイレネス搭載機である。セイレネス搭載機であるなら「自律」とか「無人」とかいう表現はおかしいのだが、ともかくアーシュオンは「無人」と主張している。
この機動兵器の恐ろしさは、その通常火力と防御力……ではなく(いやそれも恐ろしいが)、その「自爆攻撃」にある。ISMTはいわば「超高速超高精度の爆弾」である。音速の10倍以上(秒速4000m程度)というありえないスピードで空を割り、真空衝撃波を撒き散らしながら目標地点までまっすぐに突っ込む、回避不能の大規模破壊兵器である。一撃で都市一つが灰燼と帰す、数十万数百万の人命が失われる悪魔の兵器である。
当然、ヤーグベルテはこのISMT攻略に血道をあげるわけだが、有効な防御手段が編み出される前にヴェーラ、レベッカがセイレネスの力を以て対抗することとなった。ヴェーラたちはISMTの出現を「音」で予知することができ、そしてセイレネス・システムを操ってその威力を大幅に減衰、あるいは撃墜することができるようになる。それ以来、アーシュオンはこのISMTの投入を躊躇うようになる。彼らも台所事情は厳しいようだ。なので、ヴェーラたちが登場してからは、ISMTは暫し鳴りをひそめることとなった。
そして2096年、イザベラが登壇したその時、ISMTは「ナイアーラトテップI型」に姿を変えて再登場することとなる。