これは「03-04: 西風に。」に対応したコメンタリーです。
前回はイザベラ様の演説でどかーんと来た回でしたね。今回はそれを受けてのマリオン、レオン、アルマの三人娘の会話からスタート。レニーさんはどこかへ行っちゃいます。忙しいんですね。
で、いちゃいちゃしたりしますが、まぁそれはそれで。
マリオンさんは
「かわいいって、そんなことないし……」
とか、お約束なことを言ったりして、それをレオンに拾われて弄ばれたりしています。で、アルマはSNSとかマスコミとかで「イザベラの情報がない」事を不審に思うわけです。ネットに歌姫しかもD級の事前情報がないなんて、そんな馬鹿なというわけです。でもアルマさんは聡明です。
「全部、参謀部のAIによって対処されているんだ。コンマ一秒も残ってないだろうし、あらゆるキャッシュからも消されているだろうね」
でましたAI。このAIというやつは第四章でも出てきます。この世界の社会の根底を支配しているのがこのAIです。正確にはAIを生み、育て、束ねる、超AIなんですね、これが。そしてそれは一人の人間に結びついていて――というのはセイレネス・ロンドのヴェーラ編でわかるんですが、静心では出てきません。「なんかいるぞ」くらいのアレで。
そんな「寒い時代と思わんか」な感じのやり取りを経て、アルマはまた博識っぷりを披露します。
「冬が来たというのならば――」
あ、どこかで聞いたな、それ。ヴェーラとかレベッカがよく言っていたフレーズだっけ。と、思っているうちに、レオンが後を続けていた。
「春がそう遠くにいるだなんてことが、あるだろうか」
「え、えっと、シェリーだっけ?」
レオンもマリオンも知っていたわけですが。というか、マリオンが言うように、この「西風に寄せる歌」というのはヴェーラやレベッカが度々引用しているのでこの世界では超有名です。ちなみに作者はP.B.シェリーで、私たちの世界のリアルな文学です。ちなみに原文は
If Winter comes, can Spring be far behind?
で、日本語の翻訳としてはマリオンの記憶の通り、「冬来たりなば、春遠からじ」が有名ですね。
そして、マリオンさんがイザベラの印象を問うと、アルマはこう応えます。
「内面が見えない人」
「全ての感情をあの仮面の内側に隠している。そんな感じ。黄昏時みたいな人、かな」
イザベラという人格自体が極めて不安定なところにあるので、「内面が見えない」というのは割と正解なところがあります。実際には「見えた気がするけど確信が持てない」が正しい所。黄昏時、という言葉を受けて、マリオンがこんな答えを返します。
「誰そ彼の時って、ずいぶん詩的な表現するね」
はい、豆知識。「たそがれ」は「黄昏」と書くのが一般的ですが、元をたどると「誰そ彼」なんですね。暗くて相手の顔がよく見えないからという。で、ちなみに「朝方の暗い時間」のことは「彼は誰」と書いて「かは(わ)たれ」と読みます。なお、「たそかれ」よりも「かはたれ」の方が先にあって、もともと「かはたれ」が朝夜の暗い時間を示していました。それが「たそかれ」が出てきてからは、「かはたれ」が朝、「たそかれ」が夜となったわけです。
そして会話から、レベッカがどんどん尖っていっていることが示されます。
年が明けてからは、極限まで研ぎ澄まされた刀のような鋭利な横顔に変わってしまった。
マリオンさんの洞察力、正解! なわけで。イザベラが登壇してくるということは、もう既にレベッカはイザベラが何をしようとしているのかを知っているということになり、「その時」を(望まぬにせよ)待っているという状態なわけです。そりゃやつれますよと。
その後アルマさんはマリオンさんに抱きついたり匂いを嗅いだり胸を揉もうとしたりもしますが、そのへんは読んどいてください(゜¬゜)
アルマは多分人肌が好きなんです。他人の体温というか。環境はどうあれ、心はずっと孤独の中で生きてきたアルマにとって、気心知れた親友というのは夢のような存在だったと思うんですよ。で、人肌というのを(多分、はじめて)マリオンを通じて知ってしまったことで、ある意味依存症になっていると。我々がコーヒーを摂取するのと同じくらいのカジュアルさでマリオンにくっついてくるわけですが、それでもレオンに対して悪いなって思いもあったりなんだり。
ま、やりすぎてマリオンにこんな表現されてますが。
「こ、この、なんていうの、この、あれ! アルマのあれ!」
語彙力喪失の私だ。アルマはますます強く私の胸で深呼吸するし、レオンはなんか笑っているし。私はアルマを何度も引き剥がそうとしたが、まるで岩に貼り付いたフジツボのように取れる気配がない。
フジツボは未来でも元気です。
そんな感じで三人はいい感じにいちゃついてるんですが、ふとアルマは言うわけです。
「ヴェーラとレベッカもこんなだったのかなぁ」
で、そこに「空の女帝」――カティ・メラルティンの話題も出ると。三人が同居してたんだってこともわかりますね。ここでカティの話題がぐぐっと出てきたのはもちろん理由があって。次の03-05でカティさんがやばい(文字通りやばい)活躍をするからなのです(ドォン
なので、エウロス、赤い機体、超エース、空の女帝、というキーワードをバラバラッと投下した次第です。
で、航空戦力に懐疑的なマリオンさんに「んなこたぁない」とレオンはバッサリ否定。そう、確かに歌姫たちは強いんですが、航空戦力は怖い相手なのです。まして、超兵器のロイガーやナイトゴーントがいるとなると、攻略難易度がぐわっと上がってしまう。そこに出てくるのが、味方の強力な航空戦力というわけです。その中でも「エウロス飛行隊」は最強だし、「空の女帝」は人類史上最強、だし。
ま、そしてその三人をして、レオンがきれいにまとめるわけです。
「ま、あのお三方がどういう関係であったにしても、人として愛し合ってたのは事実だろうね」
レオノール、正解!