歌姫は背明の海に

歌姫は背明の海に

13-2-1:グラッジ・マッチ

 次で仕留める――!  カティは紺色の目を細め、HUDの向こうに見える白い機体を追った。背面飛行に移り、コックピット合わせの位置関係にまで持っていく。そうしたところで相手の顔が見えるわけではない。だが、それでも衝動的にそうしたいと考...
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13-1-3:イントルーダー

 被弾!  いや、しかしまだだ。まだだ、が――。  シルビアは真後ろにつけている真紅の大型戦闘機をカメラで確認して青くなる。逃げるなら右か、左か、上か、下か――。シルビアは落下の加速度に身を任せつつ、海面ギリギリで機体を捻り上...
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13-1-2:カティ vs シルビア

 カティの眼下に第二艦隊旗艦、レベッカの座乗艦・エリニュスが見え始める。その両サイドを固めるように、エディタ・レスコの重巡洋艦アルデバラン、新人ハンナ・ヨーツセンの重巡洋艦アルネプの姿が見える。そしてその周囲を幾重にも取り囲む|C級《クワ...
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13-1-1:カティの出撃

 二〇九六年十一月――。  アーシュオンが着々と|M《量産》型ナイアーラトテップの頭数を揃え、また、|I《改良》型ナイアーラトテップの量産体制に入りつつあるこの時期において、ヤーグベルテもただ黙って指を咥えて見ていたわけではない。 ...
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12-3-1:インサイド・ザ・プリズン

 シルビアの執務室から出た直後に、ミツザキはふわりと姿を消した。もっとも、誰かがその瞬間を見ていたとしても、その現象を知覚することはできなかっただろう。  その一瞬後には、ミツザキは《《闇》》の中にいた。何処を見ても自分自身以外、何...
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12-2-2:再戦の機会を

 ミツザキは無遠慮に室内に入ってくると、そのままフォアサイトの隣に腰をおろした。その表情には僅かな陰りが見える。フォアサイトは露骨に迷惑そうな表情を見せたが、さすがに何も言わなかった。 「それで大佐、ご用件は」「まぁ、そう|急《せ》...
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12-2-1:狙い撃つは――

 ヤーグベルテの|V級歌姫《ヴォーカリスト》を仕留めてから半年後、二〇九六年十月――。  シルビアは硬いデスクチェアに深々と身体を沈め、指を組み替えてはため息を繰り返していた。つけっぱなしになっている空中投影ディスプレイには、新型の...
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12-1-1:ARMIAとベルリオーズ

 あなたは……なぜ私にこんな|役割《ロール》を与えたのですか。  バルムンクが生成した闇の中で、マリアはベルリオーズに詰め寄った。ベルリオーズは背中でゆるく手を組みながら、「なぜだって?」ととぼけるように応じた。 「簡単だよ、...
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11-2-3:ヴォーカリスト、三人

 ちょうどその頃、エディタ、クララ、テレサの|V級歌姫《ヴォーカリスト》三名は、士官学校のセイレネス・シミュレータルームに集まっていた。隣接するモニタルームではブルクハルト中佐が何やら忙しそうに作業をしていたが、それはいつもの事、もはや風...
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11-2-2:諦観

 イザベラ・ネーミアの初陣、大勝利――。  ほとんどあらゆる|情報媒体《メディア》が、その戦闘をそのように総括した。もっとも、貴重な|V級《ヴォーカリスト》および重巡レグルスを喪失したことについては、轟々たる非難が出たことも事実であ...
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