歌姫は背明の海に

歌姫は背明の海に

15-2-5:コーラスワーク

 レベッカ率いる第二艦隊が、セイレネスの射程内に暗礁海域を捉えた時にはすでに、友軍艦隊は壊滅状態に陥っていた。駆逐艦の幾らかは未だ健在ではあったが、海域には軽巡以上の艦艇の姿はない。旗艦ウラニアの|舳先《へさき》に意識を泳がせながら、レベ...
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15-2-4:殲滅の歌

 アーシュオンの狙いは、第七艦隊《《そのもの》》だった。  クロフォードはようやくそのことに気が付いた。つまりバーザック提督が率いている艦隊を包囲している二個艦隊こそが敵の本隊であって、ヘスティアを追っていた二個艦隊は単なる囮――つ...
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15-2-3:碧く光る海

 バーザック提督率いる第八・第七連合艦隊は大いに奮戦していた。暗礁地帯で巧みな艦隊運動を見せつつ、着実に時間を稼いでいる。その堅実にして堅牢な戦いぶりには、さすがのクロフォードも舌を巻いた。だが、それでも空襲や艦対艦ミサイルの前に、その戦...
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15-2-2:軋轢という名のもの。

 それから約五十時間が経過した。クロフォードの搭乗する第七艦隊旗艦ヘスティアは、ノトス飛行隊の支援を受けつつ対空戦闘に突入していた。航空機で足止めしておいて、真打ちの|M《量産》型ナイアーラトテップで仕留めにかかるつもりであることは明白だ...
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15-2-1:第七艦隊、戦闘準備

 第七艦隊司令官、リチャード・クロフォード准将は苛々とした表情で髪の毛を掻き回した。|艦橋《ブリッジ》中央にある巨大なモニタには、第七艦隊及び第八艦隊の位置関係が詳細に映し出されていた。艦隊から四百キロほど南の方向に、アーシュオンおよびベ...
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15-1-1:ウラニア、進水

 その海戦より約一ヶ月後、二〇九六年十二月二十四日は、第二艦隊の新旗艦、戦艦ウラニアの進水日だった。それまでのレベッカの乗艦エリニュスは、解体の後に重巡洋艦二隻に生まれ変わることになっている。ウラニアはセイレーン|EM《イーエム》》-|A...
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14-2-2:逡巡と介入

 クララとテレサは未だにマイノグーラを沈められていない。 「いつまでかかっている。|M《量産》型も減っていないぞ」  このままだといずれ|C級《クワイア》たちに損害が出始める。敵艦隊からは嫌がらせのように魚雷が放たれてくる。本...
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14-2-1:圧倒するモノ

 イザベラは督戦席で頬杖をついて、遠く東の空を見つめている。太陽はとっくに背中側に落ち、現在目の前に広がっているのは|暗澹《あんたん》たる海と、遠近感の無い紺色の空だった。  アーシュオンが二正面作戦を展開してくることは、参謀部第六...
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14-1-3:アフター&インター

 戦闘の被害は想定よりも小さかった。しかし、ゼロではない。死者も少ない。少ないがゼロではない。確かに、悪くはない。悪くはないが、それはつまり最良ではないということだ。  参謀部は評価するだろう。ある程度のマイナス査定を入れても、大勝...
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14-1-2:指揮官エディタ・レスコ

 第一の目的、それは|M《量産》型ナイアーラトテップを殲滅することだ。第二の目的は新人|V級歌姫《ヴォーカリスト》、ハンナ・ヨーツセンの初陣をサポートすること。第三の……いや、副次的目的としては、|C級歌姫《クワイア》たちの被害を少しでも...
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