本文-ヴェーラ編3

歌姫は背明の海に

06-1-1:マリアとの出会い

 初戦は散々な結果に終わりはしたが、|M《量産》型ナイアーラトテップはそれでもヤーグベルテにとっては脅威だった。大きな損害こそ出ないが、迎撃兵器の運用コストがかかりすぎるという問題もある。艦隊規模で最大五隻を迎撃できるところまでは来たが、...
歌姫は背明の海に

05-1-3:赤と白のデュエル

 マーナガルム飛行隊の駆る三機の白皙の戦闘機、|PXF001《レージング》は、ヤーグベルテ第八艦隊の支配する海域に向けて一直線に移動していた。時刻は正午、太陽が嫌味なほどの熱エネルギーを送り届けてくる時分である。 『シルビア、フォア...
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05-1-2:量産型ナイアーラトテップ

 またしても《《戦艦》》による圧倒的な戦力差を見せつけられたアーシュオンは、戦力および戦略の立て直しに四ヶ月以上沈黙しなければならなかった。カレンダー的にはもはや初夏だ。マーナガルム飛行隊の本拠地のある要塞都市ジェスターは年中夏の陽気なの...
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05-1-1:生贄と罠

 第八艦隊が殲滅されてから約四ヶ月後、二〇九四年二月――。  水平線近傍では数十機もの戦闘機が|近接格闘戦《ドッグファイト》を始めていたが、マーナガルム飛行隊の三機はその戦いを完全に無視してひたすら西へと向かっていく。ヤーグベルテが...
歌姫は背明の海に

04-2-4:綯い交ぜの呪詛

 気が付けば、エディタの意識は巡洋戦艦デメテルの上空数十メートルの所を漂っていた。それだけであれば今までの《《見学》》とさして変わらない。しかし、今回は明らかにいつもと違う。エディタの頭の中に無数の《《声》》が聞こえるのだ。ヤーグベルテ語...
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04-2-3:進級と試練

 二〇九三年十月――エディタたちは揃って歌姫養成科のニ年へと進級した。それはつまり、エディタたちに後輩ができたということでもある。そのことは彼女たちを少なからず浮足立たせた。  しかし、大方の予測に反し、第二期生の中には|V級《ヴォ...
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04-2-2:ペンデュラム

 硬直してしまったエディタを見て、ヴェーラは温度の低い微笑を顔に貼り付ける。 「ま、冗談はおいておくとして」「趣味悪いわよ」  レベッカはブランデーのボトルを死守しながら抗議する。ヴェーラは面倒くさそうに右手をひらひらと振って...
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04-2-1:病めるものたち

 それから一週間後、十月になろうかという頃――。  エディタはヴェーラの自宅――つまりエディット・ルフェーブルの邸宅であった場所だが――へと招待された。訓練を終えて寮に帰って一息ついた頃、突然電話で呼び出されたのである。 「す...
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04-1-3:ブルクハルトの危惧

 ふと、エディタは視線に気が付く。モニタルーム内にいるブルクハルトがエディタを見ていた。ブルクハルトは小さく右手をあげて、「こっちにおいで」とジェスチャーでエディタを呼ぶ。 「失礼します」  エディタはおずおずとモニタルームの...
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04-1-2:ハーディとの対話

 はたと気付けば、エディタの意識は暗いシミュレータの筐体の中に戻ってきていた。擦過音と共に天蓋が開くと、そこにトリーネの心配そうな顔が覗いた。 「だいじょうぶ?」「ああ、多分……。私、どのくらいこうしてた?」「一分くらい? たいした...
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