小説

歌姫は背明の海に

03-1-2:イスランシオとの対峙

 二〇九三年五月、巡洋戦艦デメテルが進水して一週間後、薄暮の頃――。 「まったく! 次から次からぁっ!」  ヴェーラは数隻の防空駆逐艦、およびボレアス飛行隊を率いて、対空戦闘を繰り広げていた。数十機ものナイトゴーントが近海域に...
歌姫は背明の海に

03-1-1:巡洋戦艦デメテル

 二〇九三年四月末――ヤーグベルテ統合首都では、気の早い桜が開花し始める頃である。  ヴェーラは仏頂面で、眼下に佇む新型巡洋戦艦デメテルを睨んでいた。ヴェーラのいる司令室からは、広大な秘匿ドックが一望できる。このドックは貫通爆弾です...
歌姫は背明の海に

02-3-2:提督と女帝

 参謀部の車から、転げるようにして飛び出してきたのはヴェーラだった。|門扉《もんぴ》のセキュリティが解除されるなり、ヴェーラはカティに飛びついた。レベッカは運転手のプルースト中尉に礼を言ってから、落ち着いた様子で降りて……滑って転びそうに...
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02-3-1:地平線上の134340

 カティは紺色のジーンズに黒いタンクトップという軽装で、ソファに深々と沈んでいた。溜まりに溜まった疲労により、ついウトウトしてしまう。うたた寝と覚醒を小刻みに繰り返してしまうが、まだ午後八時にもなっていない。本気で寝るにはあまりにも早すぎ...
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02-2-3:ディーヴァとの対面

 トリーネの提案に従い、四人はやや暫くの間、自制心というフィルタを除去された空間で意見を交わしあった。その話題の中心にあったのは常にヴェーラやレベッカであり、そしていつ始まったとも知れず、いつ終わるのかもわからない、この戦争のことだった。...
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02-2-2:嘘のつけない空間、セイレネス・シミュレータ

 その翌日の夕方、エディタたち|V級歌姫《ヴォーカリスト》たちは、技術士官ブルクハルト中佐によって、シミュレータルームへと緊急招集された。四人はその日の講義を全て終えて、すでにクタクタになっていたが、緊急と言われて行かないわけにもいかない...
歌姫は背明の海に

02-2-1:エディタとトリーネ

 それから三ヶ月後、二〇九三年一月初頭――。  エディタは寮の自室に戻るなり、ベッドに倒れ込んだ。 「きっつい。年明け早々もきっつい……」  年末年始にはかろうじて休みはあった。だが、その間もエディタはジムに通い続けてい...
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02-1-2:四人のペルソナ

 講義室に取り残されてしまった四人の新人|歌姫《セイレーン》たちは、互いにおずおずと顔を見合わせた。昨日の入学式で一応挨拶程度のことはしたが、それきりだった。入学初日からスケジュールが過密で、いまさっきになってようやく一息つけたという状態...
歌姫は背明の海に

02-1-1:四人のヴォーカリスト

 ハーディとヴェーラたちの溝は埋まらない。それどころか急速に拡大しているようにさえ見えた。セイレネスが正常に運用管理されているという現状が奇跡とさえ言える――ハーディ自身はそう認識していた。  もっとも、軍上層部としては本人たちの間...
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01-3-2:拒否権なんてないから。

 それから一週間後、短い夏の終わりごろ――。  いつもの実験が終了するや否や、ヴェーラとレベッカはハーディの執務室へと召喚された。二人の|歌姫《セイレーン》は硬い表情のまま、プルーストに促されて室内へと入ってくる。プルーストはハーデ...
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