03-03-01:わたしのために、死ぬのだ!

静心 :chapter 03 コメンタリー-静心
第三章ヘッダー

これは「03-03: イザベラ・ネーミアの宣言」に対応したコメンタリーです。

さて、序破急でいうところの「序」の最大の山場というか、こっからどんどん上がっていくぜ的な感じのアレでアレです。

イザベラ様登場のところまでも色々語りたいところはあるんですが(アルマレニーとか)、しかしながらこの03-03、イザベラ様のためにあるパートとも言えるので、もうあの演説にのみフォーカスを当てたいと思います。

さてさて、あれやこれやで学生全員招集されて大講堂へ。そこで紹介されるのが、新・第一艦隊司令官、イザベラ・ネーミア少将。少将で艦隊司令官――というのは、銀河英雄伝説のオマージュです。ヤン・ウェンリーが少将で艦隊司令官に任ぜられて、艦隊司令官は普通中将がなるもので、おまいさんは少将だからということで半個艦隊で出撃せよ……というショウゲームに強制参加させられるアレですね。ヒデェ話だ。

さて、イザベラ様、登壇。

「長身」という表現が見られますが、ヒールブーツ履いてる(ことになっている)ので、見た感じ190cm近いはずです。でけぇ。

彼女はマントをひるがえして演壇ロストラムに立つ。

演壇と書いて「ロストラム」と読ませる人はあまりいないと思いますが、これはrostrumで、語源はガレー船の船嘴ロストラ。敵から奪ったもので飾り立てた講壇という意味もこっそり込めて「演壇ロストラム」と書いています。

あと、「声が低い」とマリオンは言ってますね。めちゃめちゃ声が低いんですよ、イザベラ様。レオンとは違って腹から声を出す人なので、迫力がやばい――という脳内設定です。

『わたしはイザベラ』
『わたしはイザベラ・ネーミアである』

二度自分の名前を呼ぶところもイザベラ様の原稿通り。「イザベラだからな、わかってんだろうな」というくらいの勢いがあるところです。

覚悟せよ。わたしは甘くない。

いきなりのイザベラ様のビンタです。

 それは鋼鉄はがねつるぎのような言葉だった。その音素たちが、私たちを容赦なく丁寧に突き刺していく。

ここの「鋼鉄の剣のような」という表現が第七章あたりで刺さってきます。また「その音素たちが」という「音素」ですが、文字通り音の構成要素。一字一句が、というのよりもっと細かい、吐息も子音も何もかもが、という意味合いで書いていますね。「容赦なく丁寧に突き刺していく」という表現もわりかしお気に入りです。「冷静かつ徹底的に」と書いても意味は同じですが、「容赦なく丁寧に」の方が狂気じみてていいな! とか思っています。

『わたしには諸君の考えがすべて見える。例外なく、そのすべてをわたしは見ている。不信感、疑念、嫌悪――ありとあらゆる否定的なものも感じている』

コレはまんま事実で、イザベラ様は自分に向けられる感情や意志がわかるんです。特に負の感情は強烈に感じられる――むべなるかなですね。

『良い、それは良い。わたしは諸君らにと命ずる立場。諸君らのその目で、その耳で、その心で、心置きなく見極めるがいい』

わたしは逃げも隠れもしないから、好きなだけ品定めろしろということですね。次のセリフに続きます。

わたしは、味方の犠牲を躊躇ちゅうちょしない。これよりながきに渡りこの国を守るために、私は諸君に、躊躇ためらいなく死ねと命ずるだろう

だからお前らはしっかり見極めろよと。嫌なら辞めろよ、と。決して止めはせんぞという宣言でもあります。「生殺与奪を他人に握らせるな」とは鬼滅のあの人のアレで有名ですが、イザベラ様は「逃げてもいいぞ(=お前の生死の最初の分かれ道はお前が決めろ)」という事を示していたりするわけです。

そしてテンションがドカンと上がります。

『国のために命を捧げろなどとは言わない。そのようなれ言には吐き気がする。わたしはディーヴァ登場以前の、無策ゆえの無残な敗戦の歴史を繰り返すつもりはない。わたしは過去に学ばぬ世界などをして、到底良しとはできない! たとえ軍が、あるいは政治が! がわたしに何と言おうと! わたしは愚かしい過去を繰り返すことはしない。されど!』

『諸君の命はわたしが握る。死にたくないのであれば、今すぐにここを去れ。レベッカ・アーメリング提督が先の戦いで示した、戦争の真の姿を受けれられぬと言うのならば、今すぐ! 今すぐに! ここを去れ!』

厳しいきっつい言葉の乱舞ですが、そこにあるのは憤怒と憐憫なんですよ。怒りを歌う女神ですから。

そしてここまでぐいっとテンションを上げて、山場が来ます。

『我々歌姫セイレーンは、国防のかなめである。D級歌姫ディーヴァは単独で戦場を支配することができる。周知の通りにな。そして、諸君の子どもの頃から、たった二人のD級歌姫ディーヴァによってこの国は守られてきた!
 しかし、わたしは! それを! よしとしない! これより先は、S級ソリストV級ヴォーカリストC級クワイア。それぞれに役割を全うしてもらわなければならない。安全な傘の下にはもはやいられぬ。何故なら、諸君は歌姫セイレーンだからである!
 これからの戦いでは、諸君の中に少なくない損害が出るだろう。
 もはや時代は変わったのだ! 否、本来あるべき形に戻ったのだ! 繰り返すが、死ぬ者も多く出るだろう。諸君や、諸君の後に続く者たちの幾十幾百が海に没することになろう!
 だがわたしはそれをして、国家国民のいしずえだ――などと、欺瞞ぎまんめいた事を言うつもりはない! わたしは諸君に、のために死ねなどとは言わない! 諸君は、、死ぬのだ!』

ここはもう何回書き直したかわからないくらい書き直しました。喋ってる文字数、約400文字、原稿用紙一枚分くらいあるんですが、それを「」カギカッコ一つの中に入れようと決意した瞬間に、この「静心」の「舞台演劇」的な方向性が決まりましたね。というか、ここから遡って直したりしましたし。でも、演説はイザベラ様のこの場面、と決めていたので、そのへんも注意しながら。この後、多くの人が演説をぶち上げますね。

で、このカッコの中のセリフはどれもヘヴィ級だと思うんですよ。「がわたしはそれをして、国家国民のいしずえだ――などと、欺瞞ぎまんめいた事を言うつもりはない! わたしは諸君に、のために死ねなどとは言わない!」――これは「国がどうの、そんな大義名分の下でお前らは死なせない。お前らの死が国を守るだの守っただの、わたしはそんなふうに利用させたりはしない」という意味があるんです。国だの何だの、そんなもののために命を捧げるとかふざけんじゃねぇよというイザベラの叫びでもあるんですね。わかりにくいですけど。イザベラ様は基本的に表現が回りくどくてわかりにくい。

で、そしてそこからの! 「わたしのために、死ぬのだ!」です。

これはイザベラ様の最も有名なセリフとなったと思います。ものすごくわかりやすいしキャッチーだし強力だし。我ながらよく考えたな!

『自らの死を覚悟せよ! 友との死別を覚悟せよ! 死を前提に生きろ! 誰にも彼にも例外はない。我々は、誰よりものだ! その自覚を持て! 死にたくなければ戦え! 死物しにもの狂いで戦え! 敵を見極め、迷いなく殺せ!』

このセリフは7章・8章にモロにかかっているセリフですね。

「友との死別を覚悟せよ」「死を前提に」「『敵』を見極め、迷いなく殺せ」というのも、最後まで読んだ方なら「そういうことか!」って分かるところだと思います。

で、イザベラ様はニヤリと思わせぶりな笑みを浮かべて立ち去るのです。

マリオンたち完全に圧殺。イザベラ様の強烈さを最前面に押し出したパートでありました!

→次号

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