本文-ヴェーラ編3

歌姫は背明の海に

31-1-2:絆

 くそッ!   カティは思わず計器類を拳で叩いた。頑丈なハードウェアたちは鈍い音で抗議し、カティの拳に鈍い痛みを与えた。  イザベラの、否、ヴェーラの覚悟の重さは、カティの想像を遥かに超えていた。悲痛で悲愴な決意の塊だった。 ...
歌姫は背明の海に

31-1-1:飛び立つ女帝

 敵艦隊を殲滅し、母艦リビュエに着艦するや否や、カティは|艦橋《ブリッジ》へと急いだ。 「状況は! 状況はどうなってる!」  その怒声に、通信班長が即応する。 「第一艦隊と第二艦隊は、すでに交戦中です。ネーミア提督率いる...
歌姫は背明の海に

30-1-2:光

 エディタたち五名の|V級歌姫《ヴォーカリスト》と|C級歌姫《クワイア》たちは、クララとテレサを先頭に押し立てた第一艦隊と対峙していた。 「クララ、テレサ、降伏するんだ。これ以上は、無意味だ」『無意味?』  エディタの祈るよう...
歌姫は背明の海に

30-1-1:無力な善意

 薄紙を破るかのように、|C級歌姫《クワイア》たちの小型艦艇が粉砕されていく。マリオンとアルマの|PTC《完全同調コーラス》を前にしては、|C級《クワイア》では文字通り歯が立たなかった。一切の反撃の余地もない。|制海掃討駆逐艦《バスターデ...
歌姫は背明の海に

29-2-1:断罪

 二〇九九年一月一日未明――。  イザベラ率いる反乱軍と、マリオンとアルマに率いられた討伐艦隊は、ほんの三十五キロの距離で向かい合っていた。討伐艦隊の索敵ドローンが反乱軍をようやく検知できたのが、この極至近距離だった。一方、イザベラ...
歌姫は背明の海に

29-1-2:マリアによる種明かし

 混乱している、と言っても良いだろう。イザベラは半ば呆然と、モニタの中のマサリク大統領を見つめていた。  マサリク大統領は続ける。 『異論があるなら申し出たまえ。その勇気に応え、イザベラ・ネーミア討伐の最先鋒に任じようではない...
歌姫は背明の海に

29-1-1:新たなる真実

 二〇九八年十二月二十二日――第二艦隊撤退より一週間後。  マリオンとアルマは航空機によって統合首都へと帰還させられ、査問会を受けていた。本来、非公開であるはずの査問会の様子が、なぜかいろいろなネットのチャネルを経由してヤーグベルテ...
歌姫は背明の海に

28-2-1:フィンブルの冬は終わりぬ

 |闇《バルムンク》の中にて、その戦いの一部始終を見下ろしている姿がある。銀髪に赤く輝く左目の持ち主、ジョルジュ・ベルリオーズである。 「レメゲトンは?」「順調よ」  |傍《かたわ》らに現れる《《銀》》の揺らぎ。ベルリオーズは...
歌姫は背明の海に

28-1-3:ファクト

 レオノールはエディタとの約束通り、|V級《ヴォーカリスト》および全ての|C級《クワイア》を統率していた。エディタたちは文句の一つも言わずに、ただ粛々とレオノールの指揮に従っている。  レオノールは見ていた。マリオンたちが小型艦艇に...
歌姫は背明の海に

28-1-2:麻薬でできた人形

 イザベラの号令一下、第一艦隊の火砲が|猛《たけ》る。轟音と共に放たれた弾丸は正確にアルマとマリオンの|制海掃討駆逐艦《バスターデストロイヤー》に向けて飛んでいく。  後方に控えていた戦艦空母アドラステイアから、エウロス飛行隊の戦闘...
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