本文-ヴェーラ編3

歌姫は背明の海に

08-1-1:静かな夜を迎えて

 エイブラハム市の壊滅から三ヶ月後、二〇九五年四月。ヤーグベルテ統合首都に於いては、未だ初春の頃である。エイブラハム市の復興は近隣諸都市の協力で急速に進んでいた。  そんな折、ヴェーラとレベッカは中将への昇進を果たしていた。これにて...
歌姫は背明の海に

07-2-2:論理の地平にて

 よろめきながら歩き去るヴェーラを見送ってから、マリアは再び壁に背を預け、拒絶するかのように腕を組んだ。 「いつから見ていたの」  その問いかけを受けて、マリアの目の前に二つの人影が現れた。《《銀》》の女と、《《金》》の女のよ...
歌姫は背明の海に

07-2-1:あなたの救いは。

 少女が絶命したまさにその瞬間に、エイブラハム市は文字通り吹き飛ばされた。ヴェーラが動いた時にはすでに、阻止限界点をとうに過ぎていた。いや、レベッカが語りかけたその瞬間には、少女の《《勝利》》は決まっていたのだ。  黄昏の頃のエイブ...
歌姫は背明の海に

07-1-2:覚悟の差

 ヴェーラはその巨大な|PBV《飛翔体》を追いかける。取り付けるか否かといったタイミングで、|PBV《飛翔体》の装甲全体に分離線が入り始めた。 「再突入体!」  しまった。ヴェーラは唇を噛んだ。|PBV《飛翔体》が分解されると...
歌姫は背明の海に

07-1-1:ICBM

 戦艦、セイレーン|EM《イーエム》-|AZ《エイズィ》が就役してから一ヶ月後、二〇九五年一月。アーシュオンは再び核弾頭を搭載した|ICBM《長距離大陸間弾道ミサイル》を打ち上げた。四十もの弾道ミサイルが、ヤーグベルテ本土に対して一挙飛来...
歌姫は背明の海に

06-3-2:わたしの道

 ハーディが出ていき、ドアが閉まるのを見届けてから、ヴェーラはマリアにその空色の瞳を向けた。 「で、だ、マリア。きみは何者なの? わたしの能力が全く通用しないなんて、普通じゃない」「そうですね」  マリアは頷いた。そして艶のあ...
歌姫は背明の海に

06-3-1:戦艦セイレーンEM-AZと闇色のマリア

 エディタとレネが出会ってから約二ヶ月後、ヤーグベルテ統合首都全体が雪に包まれ始めた頃、二〇九四年十二月――。  ヤーグベルテ新型《《戦艦》》の進水式は、秘密ドックにて極秘裏に行われていた。 「こいつは、なかなか……」 ...
歌姫は背明の海に

06-2-2:レネという少女

 圧倒的過ぎだろ――シミュレータから出たエディタはトリーネの筐体の前をウロウロと歩き回る。遅れて出てきたトリーネは、そんな様子のエディタに小さく吹き出し、エディタは|憮然《ぶぜん》とした表情を見せた。クララやテレサは、無言でレネの筐体を眺...
歌姫は背明の海に

06-2-1:ペルソナ・ドメイン・アーキテクト

 それから数日後、|V級《ヴォーカリスト》および|S級《ソリスト》の合計八名が初めて一同に会した。こと三期生とエディタたち一期生は初対面である。この頃までにエディタたちはメディアによって「九十二年カルテット」などとメディアでは囃し立てられ...
歌姫は背明の海に

06-1-2:素質と制御

 私はね、と、マリアは囁く。 「第一及び第二艦隊と、その指揮管轄権を持つ参謀部第六課。私はその間に挟まる、いわば調整役よ」  マリアは迷わずモニタルームの扉を開き、エディタを招き入れる。モニタルーム内にはいつものようにブルクハ...
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