小説

歌姫は背明の海に

00-0-1:新雪を染める

エディット! エディットはどうしちゃったの!? わたしは叫んだ。ベッキーがわたしをきつく抱きしめる。階段の下に横たわるエディット。新雪が赤く染まっている。迎えの車に乗っていたジョンソンさんが飛び出してきて、エディットを物陰に引きずり込む。 ...
歌姫は壮烈に舞う

18-1-1:エピローグ~奪われるもの

二〇九一年一月――ナイアーラトテップ殲滅作戦から、一ヶ月が過ぎた頃。冬の寒さも極まってきている時節。 エディットはヴェーラとレベッカを伴って、公私に渡ってしばしば利用している高級レストランにて食事をしていた。三人とも軍務からの直行だったので...
歌姫は壮烈に舞う

17-2-1:レメゲトン

闇の中に佇むマリアは、深い溜息をついた。 マリアが|纏《まと》う暗黒のエンパイアドレスは、周囲を包む闇にすっかりと溶け込んでいた。そのマリアを頂点とする一辺三メートル程度の正三角形を作るように、《《銀》》と《《金》》の揺らぎが存在していた。...
歌姫は壮烈に舞う

17-1-3:漸近スル者

背筋が粟立つ――ヴェーラは震えていた。コア連結室の暗闇の中、名状し|難《がた》い不安のようなものに包まれて。心音はもはやノイズだ。一定のリズムで刻まれる不愉快な振動は、ヴェーラの精神を一層に不安定にさせる。苛立ち、焦燥、不安――|綯《な》い...
歌姫は壮烈に舞う

17-1-2:超越の瞳

始まったね――。 |闇《バルムンク》の中で、青年は静かに呟いた。青年の左目は赤く輝き、その瞳を通じてその海域で起きているすべての事象を認識していた。「悪い人ね、本当に」 青年の背後に、《《銀》》の女性が現れる。銀髪の美女ではあったが、それ以...
歌姫は壮烈に舞う

17-1-1:三体のナイアーラトテップを前にして

ヴァルターの処刑から二ヶ月が過ぎ、二〇九〇年十二月後半に差し掛かる頃――。 第七艦隊総司令官、リチャード・クロフォード准将は、旗艦ヘスティアの|CIC《戦闘司令室》の司令席にて、ナイアーラトテップとの戦闘に備えていた。 これから行われるのは...
歌姫は壮烈に舞う

16-3-2:扉

それから約一ヶ月後のことである。 ヴェーラは夢を見ていた。 目の前には二人の憲兵に連れられたヴァルターが立っていた。ヴェーラはヴァルターを見つめ、ヴァルターもまた、ヴェーラを見つめていた。 ヴェーラは震える声をおさえつけて、言った。「わたし...
歌姫は壮烈に舞う

16-3-1:ロジカル・コンバット

ヴェーラの奥歯が音を立てる。顎が痺れるほどに、ヴェーラは歯を噛み締めた。 この決断をしたのは、わたしだ。 なのに――。 ヴァルターにも、カティにも、撃たせない。たったそれだけの決断だった。 絶対にカティを撃墜させない。それが大前提だった。 ...
歌姫は壮烈に舞う

16-2-3:ラストフライト

潜水空母ダニエル・マクエイドの格納庫にアラートが鳴り響く。続く放送によれば、エウロス飛行隊が戦場に現れたということらしかった。 ブリーフィングルームでそれを聞いた途端、ヴァルターはマーナガルムの面々と顔を見合わせてから、一も二もなく格納庫へ...
歌姫は壮烈に舞う

16-2-2:自由なる翼

来たな――! |F108+IS《インターセプタ・シュライバー》が出現したという報告を受けたその時には、ジギタリス隊とナルキッソス隊はすでに空に上がっていた。ちょうど艦隊の支援に送ろうとしていたところだったからだ。「エンプレス1、カティ・メラ...