小説

歌姫は背明の海に

28-1-3:ファクト

 レオノールはエディタとの約束通り、|V級《ヴォーカリスト》および全ての|C級《クワイア》を統率していた。エディタたちは文句の一つも言わずに、ただ粛々とレオノールの指揮に従っている。  レオノールは見ていた。マリオンたちが小型艦艇に...
歌姫は背明の海に

28-1-2:麻薬でできた人形

 イザベラの号令一下、第一艦隊の火砲が|猛《たけ》る。轟音と共に放たれた弾丸は正確にアルマとマリオンの|制海掃討駆逐艦《バスターデストロイヤー》に向けて飛んでいく。  後方に控えていた戦艦空母アドラステイアから、エウロス飛行隊の戦闘...
歌姫は背明の海に

28-1-1:ディーヴァたちの激突

 二〇九八年十二月十五日――。  あと三十分というところか。  イザベラは督戦席から立ち上がり、艦長に右手を上げてみせるとそのままコア連結室へと移動した。暗黒の連結室に入るや否や、イザベラはセイレネスを|発動《アトラクト》させ...
歌姫は背明の海に

27-2-1:歌い手と指揮者

 レオノールが隣接の士官学校にあるシミュレータルームに着いた時、エディタを初めとする残存|V級歌姫《ヴォーカリスト》はすでに揃っていた。黒く巨大な筐体たちに思い思いに身体を預けている。  レオノールは頬を赤く腫らしたエディタを見て少...
歌姫は背明の海に

27-1-3:衝動

 その日の夜、レオノールはエディタたちを引き連れて、マリオンとアルマの部屋を訪ねた。二人と、そしてレニーは、士官学校時代からずっと同じ部屋で暮らしていた。それは軍によって割り当てられた住居であり、当のマリオンたちはさほど疑問にも思わずそれ...
歌姫は背明の海に

27-1-2:レオナの憤り

 エディタは小さく咳払いをする。純白の論理空間の中に、ロラ、ハンナ、パトリシア、そしてレオノールが、それぞれに出現させた白いブロックの上に座っている。ヤーグベルテに残留する全|V級歌姫《ヴォーカリスト》だった。  エディタは宣言した...
歌姫は背明の海に

27-1-1:ブルクハルトの言葉

 エディタの呼びかけにより、残った|V級歌姫《ヴォーカリスト》の全員がシミュレータルームに集っていた。エディタ、ハンナ、ロラ、パトリシア、そしてレオノールの五名である。 「すみませんが、ブルクハルト教官」「うん、使っていいよ。スタン...
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26-2-3:希望なるもの

 レベッカ姉様……!  マリアの声にならない叫びが、闇の中に消えていく。マリアは、セイレネス・シミュレータを経由して二人のやり取りを見つめていた。マリアの能力があれば、シミュレータを使わずとも鮮明に見ることができたに違いない。しかし...
歌姫は背明の海に

26-2-2:You’re not selfish…

 セイレーン|EM《イーエム》-|AZ《エイズィ》とウラニアが、持てる火砲のそのすべてを撃ち放つ。極至近距離であるにも関わらず、その|尽《ことごと》くが弾かれる。二度目の一斉射も、結果は同じだった。 『残念だけど、それではわたしは倒...
歌姫は背明の海に

26-2-1:セイレネスに、賭けましょう。

 セイレネス《《なんかに》》賭けなくちゃならない。  思えばその時点で私たちは間違えていたのかもしれない。  レベッカはそうとも考える。  セイレネスはもはや自分の身体の一部だった。セイレネスについて思うところはあれど、...
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