小説

歌姫は背明の海に

14-2-2:逡巡と介入

 クララとテレサは未だにマイノグーラを沈められていない。 「いつまでかかっている。|M《量産》型も減っていないぞ」  このままだといずれ|C級《クワイア》たちに損害が出始める。敵艦隊からは嫌がらせのように魚雷が放たれてくる。本...
歌姫は背明の海に

14-2-1:圧倒するモノ

 イザベラは督戦席で頬杖をついて、遠く東の空を見つめている。太陽はとっくに背中側に落ち、現在目の前に広がっているのは|暗澹《あんたん》たる海と、遠近感の無い紺色の空だった。  アーシュオンが二正面作戦を展開してくることは、参謀部第六...
歌姫は背明の海に

14-1-3:アフター&インター

 戦闘の被害は想定よりも小さかった。しかし、ゼロではない。死者も少ない。少ないがゼロではない。確かに、悪くはない。悪くはないが、それはつまり最良ではないということだ。  参謀部は評価するだろう。ある程度のマイナス査定を入れても、大勝...
歌姫は背明の海に

14-1-2:指揮官エディタ・レスコ

 第一の目的、それは|M《量産》型ナイアーラトテップを殲滅することだ。第二の目的は新人|V級歌姫《ヴォーカリスト》、ハンナ・ヨーツセンの初陣をサポートすること。第三の……いや、副次的目的としては、|C級歌姫《クワイア》たちの被害を少しでも...
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14-1-1:マイノグーラ

 制空権の心配など、最初からしていない。カティたちが|制《と》れないというのなら、いったい誰にそれが可能だろう。  問題は六隻の|M《量産》型ナイアーラトテップ。そして、|M《量産》型でも|I《改良》型でもない巨大な潜水艦だ。通常艦...
歌姫は背明の海に

13-2-1:グラッジ・マッチ

 次で仕留める――!  カティは紺色の目を細め、HUDの向こうに見える白い機体を追った。背面飛行に移り、コックピット合わせの位置関係にまで持っていく。そうしたところで相手の顔が見えるわけではない。だが、それでも衝動的にそうしたいと考...
歌姫は背明の海に

13-1-3:イントルーダー

 被弾!  いや、しかしまだだ。まだだ、が――。  シルビアは真後ろにつけている真紅の大型戦闘機をカメラで確認して青くなる。逃げるなら右か、左か、上か、下か――。シルビアは落下の加速度に身を任せつつ、海面ギリギリで機体を捻り上...
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13-1-2:カティ vs シルビア

 カティの眼下に第二艦隊旗艦、レベッカの座乗艦・エリニュスが見え始める。その両サイドを固めるように、エディタ・レスコの重巡洋艦アルデバラン、新人ハンナ・ヨーツセンの重巡洋艦アルネプの姿が見える。そしてその周囲を幾重にも取り囲む|C級《クワ...
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13-1-1:カティの出撃

 二〇九六年十一月――。  アーシュオンが着々と|M《量産》型ナイアーラトテップの頭数を揃え、また、|I《改良》型ナイアーラトテップの量産体制に入りつつあるこの時期において、ヤーグベルテもただ黙って指を咥えて見ていたわけではない。 ...
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12-3-1:インサイド・ザ・プリズン

 シルビアの執務室から出た直後に、ミツザキはふわりと姿を消した。もっとも、誰かがその瞬間を見ていたとしても、その現象を知覚することはできなかっただろう。  その一瞬後には、ミツザキは《《闇》》の中にいた。何処を見ても自分自身以外、何...
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