#02-01-02:マリーは柴犬らしいよ。

静心 :chapter 02 コメンタリー-静心
第二章ヘッダー

これは「02-01: 五年後――私たちは士官学校にて再会する」に対応したコメンタリーです。

さて、前回は「ナイト・フライト・イクシオン」から色々アレしましたが、今回はマリーが柴犬かもしれないというお話です。嘘です。

D級ディーヴァS級ソリストはもちろんだけど、V級ヴォーカリストのもしっかりおさえておかなきゃならないぞ、マリー」
「わかってるよぅ」
 私はアルマをじっと見上げる。私の視線に気付いたアルマはニッと笑う。あっ、これ、ヤバイやつだ――私はとっさに唇をガードする。アルマは小さく舌打ちする。……まったく、やれやれだ。

ここで、歌姫セイレーンの「階級」について言及されますね。順番を明言しているのは、ここが一番最初。D>S>V>Cですね。覚えてますよね? 覚えたよね? ね?
で、マリーさん「わかってるよぅ」。こういう少し甘ったれな感じの受け答えが多いのもマリーの特徴。ブライトさんに殴られるぞ。いや、女子だからセイラさんのほうがひっぱたきそうだ。

で、アルマさん、勢いでマリオンの唇を奪いに来るわけですが、マリーの防御行動であえなく失敗に終わります。とは言うものの、トロいマリーの反射神経でアルマの行動を防げるはずがないので、アルマもそうと分かっていての行動だったということでしょう。予定調和というか「おやくそく」なわけですね。一種のコミュニケーション。で、マリオンは(施設でも人との距離を取って過ごしていたので)そういうのにあんまり慣れてなかったはずなんですが、士官学校入学以来、毎日のように強烈なスキンシップを求められた成果(?)で、ある程度のスキンシップを通じたコミュニケーション手段を覚えた、ということがさりげに含められていますよ。これはアルマによるマリオン大改造とも言えるでしょう。さすがだな、アルマさん!

とはいえ、アルマさん、本気でマリオンのことが好きなので、チャンスがあればキスしたいと考えているのも事実なんですが、(性根は真面目すぎるほど真面目なアルマさんですから)マリオンの嫌がるようなことは絶対にしないのです。いいヤツですね。だから後に出てくるレオンにマリオンを取られちゃう(゜¬゜)ザンネン

「で、我が国唯一のS級ソリストは……まだお仕事中か」
「みたい、だね。って、私たちだってS級ソリストじゃない、アルマ」

ここの部分で、この部屋に住んでいる三名(マリオン、アルマ、レニー)がヤーグベルテでたった三人しかいないS級歌姫ソリストだということが判明します。「私マリー。ソリストなんだ」みたいな自己紹介をしないために入れた部分ですね。文脈の中で状況やステータスを説明したいというこだわり!

で、レニーさん。レネ・グリーグって名前ですが、彼女は2年生。なんですが、すでに最前線の支援部隊としてこき使われています。ぶっちゃけ過労死ラインで支援行動やっているんですよね、レニーは。学業もあるんですが。レニーは実は朝に弱いっていう弱点も後に露呈しますが、それでも「いつ寝てんのこの人」ってくらいに大活躍してるんです。セイレネスを使った遠隔支援を行っていて、索敵や防御システム支援など、超重要な役割を担当しています。S級ソリストってのはそのくらい圧倒的な能力を有しているんですよ。もちろん、D級歌姫ディーヴァにはかなうべくもないんですが、そもそもヴェーラやレベッカは完全に規格外なので。一般人が歩行者として、歌姫は下から順に「乗用車」「装甲車(エディタとかかがここ)」「戦車(レニーとか)」「ビグ・ザム」くらいの実力差があります。もっとも、マリオンとかアルマはビグ・ザムを超えるのですが。つまり二人はスレッガー中尉(違うと思う) まぁでも、ヴェーラたちがビグザムなら、マリオンたちはノイエジールとかデンドロビウムなんですけどね。

で、この後、マリーの「歌がうまい」事がわかったりします。マリーさん、絶対音感持ってるんですね、これが。圧倒的絶対音感。特別な訓練を受けたわけでもなんでも無いんですが、とにかく「耳が良い」。相手の体調も声のトーンでわかるし、心理状態ですら把握できちゃう。1音2音とかじゃなくて、Hz(ヘルツ)単位で聞き分けます。あと、施設でも大きな声は出さなかったものの、歌姫スキーなマリオンですから、常に歌っていたということもあります。それだけだとただの音階マシーンになるんですが、アルマが「歌がうまい」と評することで、ガチ歌ウマな少女だということが伝わるはず。
ちなみにアルマさんは絶対音感があるかどうかは明言されてません。が、限りなく正確な音感を有しているのは事実です。そして何よりリズム感が完璧です(リズムゲームで難易度『神』ですから) 隠し難易度で初見パーフェクトを取るレベルです。動体視力とか身体能力も高いのがアルマさん。ていうかこの人、「苦手」がない。マリオンがボケッとしてる間にも修練鍛錬を怠らないのです。すごいよ、アルマさん!(マサルさん?)

「次世代の歌姫!」などと大袈裟に喧伝けんでんされているけれど、私はそれがイヤだった。まるで「ヴェーラがいなくても大丈夫ですよ!」と言っているように聞こえてならなかったからだ。

でもって、また「92年四天王」の話が出てきますが。
「次世代の歌姫!」という宣伝文句はまさにマリオンの危惧している通りの意味で、「ヴェーラなしでも今後はやっていける」という国内向け喧伝工作の一環です。軍、あるいは政府はヴェーラの生存を諦めているというわけです。「そのとき」が来た時のインパクトを少しでも減らすために「次世代の歌姫」たちに目を向けたと。そしてこの「次世代の歌姫」という意味は、イザベラ登壇の頃から少しずつ変わってきます。そしてマリオンたちが卒業して配備されたときには完全に変わります――マリオン&アルマが「次世代最強」と呼ばれるようになるわけです。

そしてアルマさん。コーヒーを入れてくれるんですね。が、これが超濃い。スプーン1杯でいいところ、3杯入れているはずです。インスタントコーヒー。そう、インスタントコーヒーです。まるきり現代社会で使われてるネス●フェとかのインスタントコーヒー。もっと未来的なものを出そうかなと思ったんですが、そんなところで変な読書リソース使われたくないなというので誰もが知ってるインスタントコーヒーに落ち着いたと。今後もバシバシ出てきます、インスタントコーヒー。マリーもアルマも15~16歳にしてコーヒー党。多分レニーが眠気覚まし用に使っているコーヒーを拝借しているんだと思います。

あと、マリオンは黒いマグカップで、アルマは青。コレは後に二人に与えられる専用艦船・制海掃討駆逐艦バスター・デストロイヤーの色に反映されています。マリオンさんは本名マリオン・シン・ブラックなので黒。コレは多分すごーく安直にそう決めたんだろうと思います。マリオンさんが。作者じゃないよ。多分。アルマは青スキーなので。ピンクの髪に、青と黒のメッシュ入れてますが、コレ本当は「青」だけの予定だったんですよ、アルマ的に。が、マリオンと再会できたのが嬉しくて、半分を黒髪のマリオンと同じにしたというのが事の始まりです。コレは完全に裏設定ですが。そのくらいマリオンスキーなアルマさんなのです。

で、苦ぇよ、このコーヒーっていう具合にマリオンが抗議すると、アルマさんは

 「え? お、お仕置きする? する? ねぇ、する?」

なんてことを言ったりしますね。お仕置きされたいんですね、アルマさん。
というかマリオンと少しでも接していたいアルマさんなので、手段は問わないわけです。変態なわけじゃないと思うけど。

あ、そうだ。ここでアルマの弱点が一個出てくる。猫舌なことと、味覚が(良くない意味で)過敏なこと。猫舌&お子様舌なんてマリーには言われていますが、多分おそらくアルマの唯一の弱点がそこ。

 本当にこの、朝と夜に毎日キスをせがんでくるのだけは、どうにかして欲しい。日々貞操の危機を覚えている私だ。あ、でも、レニーにやってるのは見たことがない気がする――ってことは、アルマが甘えてくるのは私だけなのかもしれない。
 そう思ったら、なんていうかな、なんかちょっと胸がキュンとした。

アルマさんがガチでキス求めてくるってのは、ここで明かされますね。ベッドに潜り込んでくるのも一緒に寝ようとするのも(そして結局朝まで一緒にいる)日常茶飯事なんですね、これが。レニーに対してはしないので、誰彼構わずというわけじゃないという。アルマさん一途なんです。で、マリーは胸キュンしてたりするんですが、ここでマリオンには「ほんのり百合許容力がある」ことを見せています。

 アルマは一人掛けのソファ――彼女の指定席だ――に腰をおろして足を組む。ハーフパンツタイプのパジャマだから、白い膝下が眩しい。支給品なので、私も同じスタイルだ。

マリオンさんてば、アルマさんの美脚に視線を奪われています。実はアルマさんはナイスバディです。マリオンは自分でいわく「ちんちくりん」なので多分平均的なスタイルと思いますが。ふたりとも意外と身長は高く設定されていたはず。165くらい? そんなに重要な情報じゃないのでオミットしちゃいましたが。

私が明確に身長を設定しているのは、「空の女帝」カティ・メラルティン大佐の185cmくらいです。ヴェーラとレベッカは175cmくらい。(日本人的感覚では)おっきいんですね、コレが。イザベラ様はヒールブーツ脱がないのでわかりませんが(ということにする)、ブーツ込みで190cm超えます。パイロットスーツ来てるカティと同じか、それより大きいんですな!
あとバストサイズはまず設定しない主義。あれ、リアルで考えても全然意味ないんですよ。BカップよりはFカップは大きい、とかそのくらいの指針にしかならない。まず私自身がバストサイズを示されても「はぁ?」としかならないので。もっと表現を考えるか、そもそもバストは視線から外して描写しようぜっていう。私にしてみたら「ステータスオープン!」と変わんないんですよ、バストサイズが分かるのって。ぶっちゃけ醒めるというか引く(笑) ましてマリオン、女の子ですから、「胸のサイズ」は「(自分より)おっきい」「(自分より)ちいさい」くらいしかないと思うんですね。形とかは気にするかもしれないけど(何

さてさて、胸の話は置いといて。

「これさ、カフェインだと思って飲むしかないね」
「さすがあたしだね!」
「いや、褒めてないし?」

このインスタントコーヒーは先述の通り「レニーの眠気覚まし」に使われている(多分)ので、カフェインバリバリ入っているタイプ。健康志向なんざクソ食らえな商品です。それが通常の3倍の濃さなので、そりゃこのマリーの発言に繋がりますよね。
「さすがあたしだね!」とかいうアルマがいきなり数年退行していますが、アルマはこういう関係を求めていたというのもあります。ヘタな気遣いせずにくっだらないやり取りのできる相手。バカにされない、恨まれもしない、そんな誰かとの年相応なコミュニケーションというやつを。アルマにとって「最高に心地よい相手」というのがマリオンなんですね、この時点では。

「初めて会った時は捨てられたチワワみたいな顔してたのに、五年ぶりに会ってみたら、そうだなぁ、あれ、ほら、あれ」
 言葉に詰まったアルマは、携帯端末モバイルに向かって「マリオンっぽい犬!」と言った。思わず吹き出す私。
「いやいや、それは無理でしょ」
『マリオンに似たタイプの犬種を収集しました』
「マジでっ!?」
 アルマの携帯端末モバイルの発した言葉に驚く私。そんな私を差し置いて、アルマが何やら興奮している。
「柴犬かよ! かわいいかよ!」
「柴犬ぅ!?」

捨てられたチワワ。某消費者金融のCMを思い出しますが、気のせいです。
で、アルマが話しかけているのは、端末の向こう側、つまりオンラインに存在しているAIです。余談ですが、この検索AIには実態がありません。どこかのサーバで動いているようなものじゃないんですね、これが。オンライン全体(これを論理世界という)にあまねく存在しているノードの集合体が……っていうのを説明し始めると何万文字かになってしまうので端折ります(めんどうくさくなった←)

現代のAIなんかよりは圧倒的はるかに進歩しているので、「マリオンっぽい犬!」と言われた瞬間にアルマが「何を」求めているのかを理解し、「マリオン」が「どのマリオン(性別や背景、趣味やらなにやら)」かを同定し、あらゆるアクセス可能な情報から「マリオン」の外見及び性格を掌握・分析し、「犬」のデータベースと照合して『柴犬です!(ドヤ』って出力しているわけですね。

ちなみに「この世界に柴犬がいるのか」っていうアレもありますが、ばっちりいるのです!
あんなに可愛い犬が継承されていないはずがない!

とかいうところで、二人の携帯端末モバイルに、緊急通知が入ってきます!

そして始まるのは――!
――待て、次号!

→次号

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