31. ヴァルター・フォイエルバッハ

キャラクター紹介(絵なし) 人物-セイレネス・ロンド
キャラクター紹介

アーシュオンの誇る最精鋭飛行隊の一つ、「マーナガルム」の隊長。通称ヴァリー。「静心」には直接は登場しないが、「ヴェーラの初恋の人」という表現で実は存在していたりする。また、「セイレネス・ロンド(ヴェーラ編)」第二部における主人公の一人でもある。

最新鋭戦闘機PXF-001・レージングを駆る「マーナガルム1」=「白皙はくせきの猟犬」は、あの暗黒空域シベリウスや、異次元の手イスランシオとも対等に渡り合える実力を持つ数少ない飛行士アビエイターである。文字通りの超エースであり、事実上のアーシュオン最強の飛行士。ヴァルターと互角の実力を持っているのは、近衛部隊ともいわれる「アウズ」「ナグルファリ」の二飛行隊の隊長くらいだと言われているが、彼らが本当にどの程度の実力を持っているかは不明。

ヴァルターにはエルザという妻がいたが、身重の彼女はヤーグベルテの逆襲作戦の際に核ミサイルの直撃(実際にはヴェーラの能力によって非核化されてはいたが威力はそのまま)を受けて街もろとも蒸発した。その際にその弾道ミサイル群をセイレネスの力でもって守護・誘導したのがヴェーラ・グリエールだった。そのICBMの雨を降らせた作戦が、ヴェーラの大き過ぎるトラウマの始まりとなった。特に、ヴァルターの妻子を、自らが「より大きな被害を回避するために人の少ない場所に落とした結果」として殺してしまったことは、それ以後ずっとヴェーラを苛む事となる。わたしが殺したんだ、とヴェーラは己を責め続けることになる。ヴェーラはヴァルターを愛してしまったのだ。

なお、ヴェーラとヴァルターとの出会いは、「静心」の第一話の戦闘である。が、「静心」では敵は文字通り全滅してしまっているし、ヴェーラたちは一発の被弾もしていない。ので、ここは「セイレネス・ロンド」とは明確に違っている点と言える。「セイレネス・ロンド」に於いては、ヴァルターだけがヴェーラの戦艦(巡洋戦艦デメテル)に一撃を浴びせることができていて、この「セイレネス突破能力」が第二部のキーとなる。「静心」では歌姫セイレーンの能力は完全に無敵なのだが、「セイレネス・ロンド」に於いてはそうでもないのだ。実はカティたちがアーシュオンのセイレネスシステム搭載機「ロイガー」「ナイトゴーント」らを撃墜できる(こともある)のも同じ原理。

そしてこの2088年のヴェーラたちの戦艦での初出撃の際に、戦艦たちに襲いかかったヴァルターは撃墜されて捕虜になる。そこで前述の「セイレネス突破能力」というものを解き明かす研究に協力することになり、二年近くヴェーラたちと実験を共にした。なお、この実験の責任者部署は参謀部第六課であり、責任者は統括のエディット・ルフェーブル大佐だった。そしてその中でヴェーラはヴァルターに対する恋心を募らせていくのである。結果生み出されたシステムが、対セイレネスシステム、正式名称「オルペウス」である。

ヴァルターは言わば対セイレネス能力を持っていた一種の能力者である。それは歌姫セイレーン同様に、ヤーグベルテ系の遺伝子を持つ者に発現する(ことのある)能力である。なおヴァルターはヤーグベルテの家系であり、そのため容姿も極めてヤーグベルテ系であるとされている。ヤーグベルテ系が多くかつエースパイロット揃いのエウロス飛行隊らはたまにはロイガーやナイトゴーントを撃墜できていた。それもこれもこの対セイレネスシステム、オルペウスの能力を潜在的に有しているものが複数いたためである。なお、この能力は男女問わず発現し、セイレネスシステムを用いる全ての兵器にとって脅威となることになる。

なお、基本的に歌姫セイレーンの能力と、このオルペウスの能力は同時に発現することはない。……のだが、「空の女帝」カティ・メラルティンがただ一人の例外として存在している。

閑話休題してヴェーラとの関係性であるが、ヴァルターはエルザ一筋であり(アーシュオンでは同僚のシルビア・ハーゼスから誘惑されていたりもするが)、最後までヴェーラに流されることはなかった。だが、ヴェーラのことはかなり特別な存在になっていたのは間違いがない。エルザを殺害されたことに関しても「俺はもう何も言わない」と言い切り、それ以後触れることもなく。また、ヴェーラをいつでも殺せるポジションにいながらそれをしようとすらしなかった。そして自らの死すらも足掻くことなく受け入れた――もっともそこには亡くなった妻・エルザへの想いがあっただろう。

その後、研究も一段落して用済みとなったヴァルターは、捕虜交換の材料として使われる。この時、ヤーグベルテは「ヴァルターは本国で処刑されるだろう」という事を確信している。そのまま利敵行為・反逆行為の下に処刑されることがヴァルターに伝えられるのだが、そこでヴァルターは中央参謀司令部のヒトエ・ミツザキにリベンジマッチの機会を求め、承認される。そこでヴァルターが処刑を逃れるために突きつけられた条件が「空の女帝の殺害」であり、それが叶わぬならば戦場で死ぬか、処刑場で死ぬかの二択しかない状況だった。

このリベンジマッチのスタートシーンから、ヴェーラ編の第二部は始まるのだが、結論からすると「空の女帝」には勝てないのである。そしてこの対戦、正確には、ヴェーラが引導を渡しているのだ。カティには愛するヴァルターを殺してほしくない。ヴァルターには愛するカティを殺してほしくない――と。そしてヴァルターがこのまま帰ったところで生きては再会できないことも、ヴェーラは知っていた。しかし、彼女はそうと分かっていながら、セイレネスによる介入で戦いを終わらせたのである。

そして2090年末に、ヴァルターは――。

ヴェーラが自らの命を経とうとしたのも、その後イザベラとして復活し剣を掲げたのも、その起源原点オリジンというのはこのヴァルターとの悲しい別離にあったと言っても良いだろう。

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