歌姫は背明の海に

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06-3-2:わたしの道

 ハーディが出ていき、ドアが閉まるのを見届けてから、ヴェーラはマリアにその空色の瞳を向けた。 「で、だ、マリア。きみは何者なの? わたしの能力が全く通用しないなんて、普通じゃない」「そうですね」  マリアは頷いた。そして艶のあ...
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06-3-1:戦艦セイレーンEM-AZと闇色のマリア

 エディタとレネが出会ってから約二ヶ月後、ヤーグベルテ統合首都全体が雪に包まれ始めた頃、二〇九四年十二月――。  ヤーグベルテ新型《《戦艦》》の進水式は、秘密ドックにて極秘裏に行われていた。 「こいつは、なかなか……」 ...
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06-2-2:レネという少女

 圧倒的過ぎだろ――シミュレータから出たエディタはトリーネの筐体の前をウロウロと歩き回る。遅れて出てきたトリーネは、そんな様子のエディタに小さく吹き出し、エディタは|憮然《ぶぜん》とした表情を見せた。クララやテレサは、無言でレネの筐体を眺...
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06-2-1:ペルソナ・ドメイン・アーキテクト

 それから数日後、|V級《ヴォーカリスト》および|S級《ソリスト》の合計八名が初めて一同に会した。こと三期生とエディタたち一期生は初対面である。この頃までにエディタたちはメディアによって「九十二年カルテット」などとメディアでは囃し立てられ...
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06-1-2:素質と制御

 私はね、と、マリアは囁く。 「第一及び第二艦隊と、その指揮管轄権を持つ参謀部第六課。私はその間に挟まる、いわば調整役よ」  マリアは迷わずモニタルームの扉を開き、エディタを招き入れる。モニタルーム内にはいつものようにブルクハ...
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06-1-1:マリアとの出会い

 初戦は散々な結果に終わりはしたが、|M《量産》型ナイアーラトテップはそれでもヤーグベルテにとっては脅威だった。大きな損害こそ出ないが、迎撃兵器の運用コストがかかりすぎるという問題もある。艦隊規模で最大五隻を迎撃できるところまでは来たが、...
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05-1-3:赤と白のデュエル

 マーナガルム飛行隊の駆る三機の白皙の戦闘機、|PXF001《レージング》は、ヤーグベルテ第八艦隊の支配する海域に向けて一直線に移動していた。時刻は正午、太陽が嫌味なほどの熱エネルギーを送り届けてくる時分である。 『シルビア、フォア...
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05-1-2:量産型ナイアーラトテップ

 またしても《《戦艦》》による圧倒的な戦力差を見せつけられたアーシュオンは、戦力および戦略の立て直しに四ヶ月以上沈黙しなければならなかった。カレンダー的にはもはや初夏だ。マーナガルム飛行隊の本拠地のある要塞都市ジェスターは年中夏の陽気なの...
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05-1-1:生贄と罠

 第八艦隊が殲滅されてから約四ヶ月後、二〇九四年二月――。  水平線近傍では数十機もの戦闘機が|近接格闘戦《ドッグファイト》を始めていたが、マーナガルム飛行隊の三機はその戦いを完全に無視してひたすら西へと向かっていく。ヤーグベルテが...
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04-2-4:綯い交ぜの呪詛

 気が付けば、エディタの意識は巡洋戦艦デメテルの上空数十メートルの所を漂っていた。それだけであれば今までの《《見学》》とさして変わらない。しかし、今回は明らかにいつもと違う。エディタの頭の中に無数の《《声》》が聞こえるのだ。ヤーグベルテ語...
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