本文-ヴェーラ編2

歌姫は壮烈に舞う

06-2-1:二人の距離感

   《《異次元の手》》こと、エイドゥル・イスランシオ大佐が戦死したちょうどその頃、ヴェーラとレベッカはシミュレータにてセイレネス・システムの調整訓練を実施していた。暗い筐体の内にて、二人は細かな訓練プログラムを遂行している。 ...
歌姫は壮烈に舞う

06-1-2:虚数へと向かう

   参謀部より出撃命令が出た時、イスランシオ率いるボレアス飛行隊は、強襲航空母艦・ベロスにて、既に出撃準備を終えていた。イスランシオは参謀部がこの島嶼作戦に時間をかけるつもりがないことを知っていた。事前に警戒地域として割り当てられ...
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06-1-1:騒然

   二〇八四年十一月――カティがエウロスの入隊訓練を開始してから約二ヶ月。その日はあまりにも突然やってきた。  エウロス飛行隊基地作戦司令室の空気は、|凍《い》てついていたと言っても良いほどだ。通信音声、端末の駆動音、各種ア...
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05-2-2:智慧の実

   なるほどねぇ――ジョルジュ・ベルリオーズはバルムンクによって構成された暗黒の内側で微笑する。バルムンクとは即ち、ベルリオーズに|纏《まつ》わるもの以外、ありとあらゆるものの侵入を拒む闇である。 「だ、そうだけど? アトラ...
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05-2-1:背明の男

   ヤーグベルテ最強の艦隊といえば、最新鋭航空母艦ヘスティアを旗艦とした第七艦隊である。《《潜水艦キラー》》こと、リチャード・クロフォード准将を事実上の司令官とし、神出鬼没のアーシュオン潜水艦艦隊を撃滅して回っている。アーシュオン...
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05-1-4:二つの計画を巡る――

   執務室へと戻ってきたエディットは、部屋の明かりを|点《つ》けもせず、応接用のソファに座り込んでいた。ヴェーラを叩いてしまった右手が、いまさらながらに痺れてきている。ケロイドに覆われたざらついた皮膚の下が、じわじわと|疼《うず》...
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05-1-3:絶対に、イヤ!

   ハーディが円卓中央に浮かび上がらせたデータは、ヴェーラやレベッカにとっては決して喜ばしくはないものだった。半年前の士官学校襲撃事件の際に|発動《アトラクト》したセイレネス・システムの影響が各地にて観測され、その上、今なお漸次的...
歌姫は壮烈に舞う

05-1-2:宣伝材料

   シミュレータの筐体から出てきたヴェーラたちはクタクタだった。モニタしていたブルクハルトにもその疲労度合いは数値となって読み取れていた。 「お疲れのところ申し訳ないんだけど、ルフェーブル大佐が司令室に来るようにってさ」 ...
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05-1-1:相乗効果

   九月ともなると、ヤーグベルテ統合首都近郊からは夏の香りは消え失せてしまう。気の早い一部の樹木が緑から赤や黄色へと色を変える。時々交じる北風に、人々は秋用のコートを引っ張り出す。海も空も寒々しい色の日が増えてきて、人々は誰もが憂...
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04-2-1:可能性

   質量を伴う闇――この空間を表現するならば、そうなるだろう。|蠢動《しゅんどう》する空間が粘液的にまとわりついてくるかのようだ。その中に前触れもなく出現する銀の炎。その内に、ヒトエ・ミツザキの姿があった。闇は炎を食い尽くそうとす...
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