小説

本文-ヴェーラ編2

02-1-1:アーシュオンのアビエイターたち

   遡ること二ヶ月半。ヤーグベルテ士官学校襲撃事件から二週間後、二〇八四年二月二十日のことである。  アーシュオン共和国連合の最前線基地、軍装港湾都市ジェスターは相変わらずの慌ただしさの中にあった。ヤーグベルテに最も近い基地...
歌姫は壮烈に舞う

01-1-4:あなたの心の声は――。

   デリバリーされた寿司の半分はヴェーラの胃の中に収まった。エディットはもともと酒さえあれば良い性分だったし、レベッカも少食に属する。カティは精神的にそれほど食べられる状態でもなく――というわけで、ヴェーラは二人前以上を平らげるこ...
歌姫は壮烈に舞う

01-1-3:過去の人はもうあなたの中でしか生きられないの。

   《《あれだけやられて》》――ヴェーラのその言葉を受けて、カティは息を飲む。アーシュオンの繰り出してきた超兵器たちによって、ヤーグベルテは何十万もの生命を喪失した。負傷者はその数倍になる。核兵器さえ炸裂させられたヤーグベルテの国...
歌姫は壮烈に舞う

01-1-2:こたえ探し

   ピザレストランにて、ヴェーラは九十分食べ放題コースを迷わず選択した。そして呆れる二人をよそにヴェーラは時間いっぱいピザを摂取し続けた。カティもレベッカも途中からヴェーラが注文するたびに、思わず笑うようになっていた。ピザに関して...
歌姫は壮烈に舞う

01-1-1:眩暈

   西暦二〇八四年五月――桜がそろそろ咲き揃う季節だ。高緯度帯にあるヤーグベルテの統合首都の春は遅い。  あの士官学校襲撃事件から三ヶ月。その凄惨さ、悲惨さは、たしかにメディアを賑わせた。しかし、それはほんの一時だった。それ...
歌姫は壮烈に舞う

00-0-1:晩夏のオリオン、その下で――。

 鮮烈に青い空は、たちまちのうちに熱量を上げる。無数の戦闘機が飛び回り、多弾頭ミサイルを撃ち放ち、爆炎に飲まれていく。何千何万という|HVAP《高速徹甲弾》がお互いの命を削り合っていく。  その|数多《あまた》の死神たちの手をかいく...
本文-ヴェーラ編1

09-0-0:三人目のディーヴァ

↑previous  恐ろしく広大な執務室の中で独り、ジョルジュ・ベルリオーズはつまらなそうにジークフリートの生成した情報群を眺めている。ジークフリートを生み出した張本人である彼の|下《もと》には、ありとあらゆる情報が集まってくる。...
本文-ヴェーラ編1

08-1-3:星を、見に行こう

↑previous  それからさらに一ヶ月が過ぎようという頃、二〇八四年四月二十日、夕刻。  カティは統合首都にある|瀟洒《しょうしゃ》なレストランにて、ルフェーブルと再会していた。ヴェーラ、レベッカも一緒である。規則正しく並...
本文-ヴェーラ編1

08-1-2:記憶の欠落

↑previous  シベリウスはソファに沈み込みながら、備え付けのテレビで垂れ流されているニュース番組を眺めている。実にどうでも良いニュースが《《いい感じ》》に脚色され、さも重大なそれであるかのように報道されている。かと思えば、「...
本文-ヴェーラ編1

08-1-1:目覚め

↑previous  ぼんやりと明るい。夜にかかる霧のようにぼんやりと。  アタシ、寝ているのか?  カティは懸命に目を開けようとする。少しだけ視界が晴れた気がするが、それだけだった。今自分が目を開けているのか否か。それ...
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