小説

本文-ヴェーラ編1

06-2-2:不器用なキス

↑previous  カティとヨーンは並んで食堂を出る。その間、言葉はなく、ただ少し固い呼吸音が流れていた。 「とっ、ところでヨーン」  薄暗い廊下を歩きつつ、カティはどこか素っ頓狂な声を出した。ヨーンは少し肩をビクつか...
本文-ヴェーラ編1

06-2-1:感情に理屈はいらない

↑previous  後に「八都市空襲」と呼ばれることになるこの未曾有の被害を受けたのは、セプテントリオ、アザームヴァレー、レクタル、イェーセン、バルホルンベルテ、エルステート、アレミア、レピアのいずれも小さくはない都市たちである。...
本文-ヴェーラ編1

06-1-3:十二時間前の真相

↑previous  セプテントリオの中心部が|爆《は》ぜた。  放出された甚大な量の中性子が、半径十数キロの範囲にいた生物たちにほとんど平等に致命的なダメージを与えた。その数秒後には、高熱の津波が空間を|薙《な》いだ。瞬く間...
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06-1-2:二柱の対談

↑previous  まるで|幽霊《ゴースト》ね――。  イスランシオが目の前を通り過ぎていくのを眺めて、《《金》》の揺らぎが呟いた。それはすぐに一人の黒尽くめの金髪碧眼の男の姿に変わる。ハルベルト・クライバーである。腕を組ん...
本文-ヴェーラ編1

06-1-1:記憶の空隙

↑previous  ひどい夢だ。悪夢だ。  ――イスランシオはそう考える。圧倒的な絶望感、例えようのない無力感。|苛《さいな》まれる。夢だというのに、どうしてこうまで胸が苦しい。なぜここまで震えている。  そこでイスラ...
本文-ヴェーラ編1

05-2-3:セプテントリオ

↑previous  ヤーグベルテ西方に広がる海域に佇む、ボレアス飛行隊所属の強襲航空母艦ベロスの|CIC《戦闘指揮所》にて、イスランシオもまたシベリウスと同じ映像を見ていた。ユーレット市上空に出現した圧倒的戦力の姿を、である。イス...
本文-ヴェーラ編1

05-2-2:さらなる新兵器の出現

↑previous  人口二十三万五千の観光都市・ラインヴェルシが蒸発した。打ち上げられた弾道ミサイルは一発を除き迎撃に成功した。その一発も、分裂した弾頭十二機のうち十一機までは撃破に成功した。破片が地上にダメージを与えはしたが、そ...
本文-ヴェーラ編1

05-2-1:航空母艦ヘスティアの艦上にて

↑previous  クロフォードはようやく第七艦隊の現状を把握し終えた。ルフェーブルとの会話から三日ばかりが経過した頃だ。クロフォードが左遷されている間にも幾度も戦闘を経験した第七艦隊は、その顔ぶれの半分が入れ替わっていた。クロフ...
本文-ヴェーラ編1

05-1-3:十二年前の記憶

↑previous  ルフェーブルは士官学校高等部をわずか一年で卒業した。上級高等部には行かなかった。卒業とともに陸軍に配属されて四年、海兵隊に転籍して四年、一年間の療養期間を経て参謀部に移って早八年である。陸軍で陸戦を実地で学び、...
本文-ヴェーラ編1

05-1-2:逃がし屋と潜水艦キラー

↑previous  西暦二〇八四年一月末――。  参謀部第六課の手配により、海軍陸戦隊及び海兵隊、計二千名余りの兵士が、カティたちの所属する士官学校統合首都校に配置された。昨今のアーシュオンの猛攻に呼応した警戒態勢であると説...
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