小説

歌姫は壮烈に舞う

07-2-2:諦観の艦隊戦

 ヴェーラとレベッカが参謀部第六課作戦司令室に到着したのは、それから約三時間後のことである。午前八時を回っていたが、今なお司令室は喧騒に包まれていた。半ば呆然と立ち尽くす二人の少女に気がついたエディットは、すぐに立ち上がって迎えに来る。 ...
歌姫は壮烈に舞う

07-2-1:ポリティカル・パフォーマンス

 ヤーグベルテ南東諸島全域を守護する第八特務海兵旅団司令部より交戦報告が上がったのが、午前四時五十三分である。その情報は遅滞なく参謀部全体に行き渡り、エディットもそのフローに準じて招集された。 「おはようございます、大佐」  ...
歌姫は壮烈に舞う

07-1-4:premonition

   あっ……と?  ヴェーラはそっと目を開けて思わず小さく声を上げた。すぐ目の前にレベッカの美しく整った唇があった。身体を確かめれば、レベッカの両腕がヴェーラをしっかりと抱きしめていた。  ヴェーラは「ふむ」と息を吐き...
歌姫は壮烈に舞う

07-1-3:存在起源

   通話を終えると、ヴェーラは大きく息を吐いた。リビングのソファに座るエディットの背中が見えている。ヴェーラは今キッチンにいて、通話中に飲んでいた紅茶のカップを洗おうとしていた。エディットが今飲んでいるのはウィスキーだ。テレビの方...
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07-1-2:カティはわたしのために――

   ヴェーラの名前を見た途端、カティの中に溜まっていた倦怠感が消し飛んだ。少しドキドキしながら画面をなぞり、通話を開始する。 『カティ! 生きてるよね!』「多分、まだ手足はちゃんとある」『今すぐ抱きしめて確かめたい!』 ...
歌姫は壮烈に舞う

07-1-1:センセーション

   二〇八五年十一月――。  四風飛行隊ボレアス飛行隊隊長、エイドゥル・イスランシオが戦死してから、早くも一年が経っていた。しかしその間もアーシュオンからの攻撃は継続的に続き、ヤーグベルテはもはや防戦すらままならなくなってい...
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06-2-3:闇の中のマリア

   《《闇》》の中で途方に暮れているレベッカは、何かに呼ばれたような気がして周囲を見回す。しかし自分以外には何も見えない。 「お姉さま」  脱出方法を思案し始めたレベッカの背後から、はっきりとそう呼びかける声があった。...
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06-2-2:彷徨う二人

   謎の戦闘機を撃墜した――そう思った瞬間、レベッカは強烈な浮遊感を覚えた。世界が急速に暗くなり、さらなる暗黒の中に落ちていく。悲鳴をあげることすらままならない恐怖と不安、そして何よりも不快感が胸を満たす。  それまで自分が...
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06-2-1:二人の距離感

   《《異次元の手》》こと、エイドゥル・イスランシオ大佐が戦死したちょうどその頃、ヴェーラとレベッカはシミュレータにてセイレネス・システムの調整訓練を実施していた。暗い筐体の内にて、二人は細かな訓練プログラムを遂行している。 ...
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06-1-2:虚数へと向かう

   参謀部より出撃命令が出た時、イスランシオ率いるボレアス飛行隊は、強襲航空母艦・ベロスにて、既に出撃準備を終えていた。イスランシオは参謀部がこの島嶼作戦に時間をかけるつもりがないことを知っていた。事前に警戒地域として割り当てられ...
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