03-07-01:秘密の暴露!

静心 :chapter 03 コメンタリー-静心
第三章ヘッダー

これは「#03-07: 深い淵に隠した歌」に対応したコメンタリーです。

さて、そんな感じの超絶難度「神」クリア特典映像なわけですが、コレは多分マリアあたりの遊び心の発露というやつじゃないかなと思います――いずれどこかでこの映像を見せるつもりではあったにしても、もしかしたら、という。

ちなみにこれ、アルマ以外のアカウントで「神」フルコンプしても、別の映像が流れます。とはいえ、カウンターは共通というバックエンド構成なので、やっぱり今の所、「神」フルコンプクリアしたのはアルマ一人というわけです。すごいなアルマ。超絶リズム感。

そしてここで流れてる「セルフィッシュ・スタンド」は、ヴェーラ・グリエールなわけです。

 静かで優しいバラード。しかしそこにある歌詞ことばはあまりにも深くて痛い。ヴェーラが初めて恋をしたのは、敵国アーシュオンのエース戦闘機乗りアビエイター。最終的にはその人は……。

はい、出てきました、ヴェーラの初恋の人。この人はヴァルター・フォイエルバッハという人です。これ自体が「セイレネス・ロンド」第二部のメインテーマになる物語で、まぁ、うん、悲恋ですね。悲劇ですね。

そんな歌を歌った後の、ディーヴァたちの柔らかい表情を見て、マリオンさん号泣。ヴェーラがという事実(と、思っている)、こんな表情をする人たちに殺し合いをさせているという事実、そんなことに思い至ってしまうわけです。

しかし、この中では唯一、レニーは事情を知っています。でも彼女不器用なんですよね。ていうか、この世界の連中は総じて不器用。そんな器用な人間なんていやしませんよということですな。完璧に見える人ほど不器用に見える。そんなもんですね。

そして色々深めのやり取りがあって。

で、第二艦隊旗艦・ウラニアに乗艦しているマリア・カワセ大佐がCallしてきます。携帯端末モバイルの画面の上に立体的に像が結ばれる仕組みですね。このくらいは未来っぽくしたかったという話で。もっとエキセントリックな感じの設定も考えていたんだけども。でも2090年~で立体映像てのはどうなんだろう。もうちょっと何かないものか、とは思っていますな。

カワセ大佐の容姿というのはこんな感じ。

 外見的にはレベッカと同様、二十代半ば。艶のある黒い髪をゆるいセミロングにして流している。妖しい美貌と、謎の威圧感。私たちは揃って緊張した。

見た目は二十代半ば。実際は30歳くらいなんですな、これが。いや、実際、という点でいえば20歳くらいなんですが。うん、このへんは(ちょびっと)後述するとおり事情がとても複雑。

で、マリア自ら、マリオンとレオンの付き合いについては軍としても公認だと認めています。女性同士の恋愛がどうの、という古い価値観は持ってないんです、この世界の有力な「大人」たちは。

マリアはそんなジャブをかました後で、「インスマウス」の名を口にします。

アーシュオンの技術は、未だにはなりきれていない

という具合に、アーシュオンもまた、ヤーグベルテの切り札である「セイレネス(あるいはそれに準じたシステム)」を開発していることを示唆します。なお、アーシュオンの歌姫は「素質者ショゴス」といいます。

で、先日トリーネの命を奪った「ナイアーラトテップI型」は、特攻兵器なのだと。つまり、「素質者」を使い捨てにする兵器だと開示します。この時点ではまだマリオンたちは懐疑的。マリアは言います。

『アーシュオンの戦略のもとでは、倫理よりも勝利が優先されるのです』

倫理よりも勝利が優先――なんかどこぞで聞いた感じの話ですが。

で、そこからの、

『――人体改造』

というわけで、アーシュオンは「素質者」の量産体制を作りつつあるということがマリアの口から明かされるわけです。アーシュオンは歌姫以下の能力しか持たない人を強引に歌姫に仕立て上げる方法を編み出してしまった、というわけなのです、これが。

しかし、

『現在のは九割』

ほぼ失敗前提、成功すればめっけもの、そういう地獄の手術です。もちろんコストの削減のために、あらゆるケアは最小限。死んだら多分そのまま最小限の手数での廃棄処分と。成功しても結局はその殆どは捨て駒になるわけなので、ろくな待遇があるとは思えない。

実はここ、「セイレネス・ロンド」第二部で登場する「アーマイア・ローゼンストック」というアーシュオン側の軍事企業アイスキュロス重工の技術部長が絡んでいたりします。そして、このアーマイアというのは、ヴェーラ、レベッカと同時期に作られたARMIAのもう一つのペルソナだったりします。ちなみにARMIAの主ペルソナはマリア・カワセ大佐です。カワセ大佐もまた、超常の存在なんですね、実は。とはいえ「静心」ではここは重要じゃなかったりします。第四章あたりでチラチラっと表されていますが。

で、その非人道的に過ぎる兵器の話を聞いたレニーが憤るんですが、カワセ大佐はこんな事を言っています。

『確かな情報です。彼らアーシュオンは、自国民の人権を蹂躙してでも、我々の歌姫計画セイレネス・シーケンスを止めさせようというのです。しかしながら私たち参謀部、情報部、および保安部は、アーシュオンをことさら非人道的国家であると訴えるつもりはありません。我が国ヤーグベルテの国民に、これ以上の燃料投下は必要ありません』
「しかし、公表することで私たちの戦いの大義名分も――」
『レニー。アーシュオンに、再び核を落とそうとでも?』
「……いいえ」
 レニーは息を吐いてソファに戻る。アルマが硬い口調で呟く。
「確かに今、そんな口実を与えたら、そんな非人道的なことをするとはけしからん。そんな国なんて滅ぼしてしまえって論調になるか……この国は」
『その公算は極めて大。ですから、我々はこの事実を隠匿します。意味はわかりますね?』

ヤーグベルテがアジテーションに弱い国民であるということをアルマは知っています。同時に、全員が「そういうは政治の都合で適宜投下されている」ことも知っています(納得している、いないに関わらず)。そしてマリアは「そういうもんだからわかれ」という態度。そこには「戦争は相手を滅ぼすためのものじゃない」という大義名分と、「相手を滅ぼしたら戦争が続けられない」という本音があります。

しかし、こういうショッキングな内容は、次に明かされる「暴露」に比べれば些細なことなのでした。事前に知っていたレニーにしてみれば、気が気ではない状況だったと思いますな。

『ヴェーラとイザベラは、です』

確定!

実はここで「確定」させるかどうかはちょっと悩んだんですが「わかりやすさ」と「読んでる上での確信って大事だよな」っていうところから、ストーリーの都合というよりは、そういうリーダビリティの都合で「確定」させました。状況証拠的に99.5%は確信があったと思うんですが、それを100%にするというのは大きな意味があるかなと。

そんなわけで、待て次号!

→次号

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