小説

歌姫は壮烈に舞う

14-2-1:罪咎の意識

 しかし落涙はヴェーラを癒やすことはなかった。家に帰ってからもヴェーラはソファの上で膝を抱え、じっとテレビを見つめていた。あれから一言も発することなく、レベッカが入れてくれた紅茶にも手をつけず。時刻は午後五時。まもなく日が暮れる。 ...
歌姫は壮烈に舞う

14-1-4:歌姫との面談

 その後、カティは空軍司令部からの呼び出しを受けて、立ち去ってしまった。残されたエディットたちは施設内の小さな会議室に場を移した。  体裁として、これがヴェーラたち|歌姫《セイレーン》とヴァルターの始めての対話の機会ということになる...
歌姫は壮烈に舞う

14-1-3:空 vs 海

 アタシと《《白皙の猟犬》》で戦艦二隻を相手にしろってか。  カティは不思議な高揚感に包まれながら、シミュレータの感触を確かめる。この筐体に乗るのも久しぶりだ。筐体はコックピットの座席がほとんどそっくりそのまま収められていて、コンソ...
歌姫は壮烈に舞う

14-1-2:幸せが逃げるよ

 その日の夜、ヴェーラとレベッカは帰宅するなり早々に寝てしまった。帰りの車の中で二人とも半分寝てしまっているほど、疲労が溜まっていたようだ。 「ただいま」  二十二時を過ぎた頃、帰宅したカティがリビングに入ってきた。 「...
歌姫は壮烈に舞う

14-1-1:繰り返される実験の中で

 がんばれ、わたし!  ヴェーラはシミュレータの暗い筐体の中で気合いを入れ直す。  ヴェーラとレベッカの訓練を兼ねた実験は、かれこれノンストップでニ週間続いている。この二週間で実戦への支援要請はニ回あった。それも休日が割り当て...
歌姫は壮烈に舞う

13-1-5:二人の、出会い

 この子たちが……!?  ヴェーラ、レベッカと対面したヴァルターの心の中の第一声はそれだった。 「その顔も無理はない」  例の面会室に椅子をニ脚追加しつつ、エディットは言う。 「この子たちこそセイレネスである、とも...
歌姫は壮烈に舞う

13-1-4:現実的な平和

 エディットとヴァルターが面談してから一週間が経過した。  エディットの根城である参謀部第六課の作戦司令室に、ヴェーラとレベッカが揃って呼びされていた。エディットのデスクの隣に用意された椅子に、二人は並んで座っている。  エデ...
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13-1-3:世界平和への協力要請

 ヴァルターは露骨に身構えた。エディットはその顔から笑みを消し、機械の瞳でヴァルターを捕捉する。ヴァルターは視線を|逸《そ》らすことができなくなる。 「何かの協力というのは……?」「なに、拷問や人体実験とは違う。これは保証するが、貴...
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13-1-2:ネゴシエーション

 待遇は悪くはない。いや、むしろ良すぎる。  ヴァルターはソファに座って、ヤーグベルテの国兵放送を眺めている。テレビから矢継ぎ早に流れてくるヤーグベルテ公用語にはやや戸惑ったものの、ニ時間もする頃には完全に思い出すことが出来ていた。...
歌姫は壮烈に舞う

13-1-1:残された猟犬たち

 最強の飛行隊として呼び声も高かったマーナガルムは、いまやたったの三名だ。隊長であるヴァルターが撃墜され、ヤーグベルテの虜囚となってしまったからだ。そして生き残った三名は――シルビア、フォアサイト、クリスティアン――は、アーシュオン政府に...
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